世界は広い、地下も広い
遊園地とは地上にあるものだと思っていた。しかし、地下にもあるのだ。世界は広い。そして、学びがある。寒いということだ。全く頭になかった。鍾乳洞なども一年中同じ温度だったりするので、そこから学んでおくべきだった。今度行くことがあれば、長袖を持って行こうと思う。
遊園地というものがある。観覧車やジャットコースターなどがあり、休日には多くの人でにぎわう。青空の下で「次はあれに乗ろう」とか、「怖かったね」とかと盛り上がるのだ。雨の日は人が少ないので、狙い目だったりもする。
ルーマニアに全天候型の遊園地がある。屋根があるのとは少し異なる。地下約120メートルに遊園地があるのだ。その昔、岩塩坑として栄え、今は遊園地となっている。ぜひ行ってみたいと思う。
宇宙にも夢を馳せるが、地底にも思いを馳せる。全長が何キロにもなる鍾乳洞などは、観光地になっていたりもする。地下には何があるのだろう、光が届かないその空間に何があるのだろう、と我々の好奇心を刺激するのだ。
遊園地もまた我々を楽しませてくれる。子供の頃、「日曜日は遊園地に行こう」と親からの提案があると嬉しかった。私は北九州に住んでいたので、遊園地は当然、今はなき「スペースワールド」ということになる。素晴らしく楽しかった。
そんな地底と遊園地という2つを両立した施設がある。遊園地のアトラクションの一つとして、「地底探検」的なものがあるわけではない。地底に遊園地があるのだ。「地下遊技場」と言ってもいいだろう。ワクワクが岐阜羽島駅の「のぞみ」以上に止まらない。
宇宙にも夢を馳せるが、地底にも思いを馳せる。全長が何キロにもなる鍾乳洞などは、観光地になっていたりもする。地下には何があるのだろう、光が届かないその空間に何があるのだろう、と我々の好奇心を刺激するのだ。
この地下遊園地の名前は「サリナ・トゥルダ」。もともとは岩塩坑で、11世紀にはすでに栄えていたそうだ。2008年にリハビリテーションの施設となり、2010年に遊園地としてオープンした。お金を払い扉を開けて驚いた。長い、長い、地下への道が始まるのだ。
おそらく私は裏口から入ったようだ。その道の長さに驚く。壁が白く、舐めてみると塩だった。元は岩塩坑だから当たり前だけれど、とっても塩。間違いなく塩なのだ。道中には岩塩坑時代の名残もある。基本的に木でできている。鉄だと腐食するからだろうか。
言葉を失った。外から見るとなんの変哲もない山だった。あまり派手な入り口でない裏口から入ったこともあり、地下に広がるこの空間を想像できなかった。そのために、衝撃がすごい。夢で見る謎の空間みたいではないか。いや、夢ではないのか。
遊園地のある120メートルまで階段で降りる。急な階段で、木でできている。木は人が歩きすぎて滑らかになっている。滑るのだ。恐怖だった。ただエレベーターは4人乗りくらいのようで、待てど暮らせど来ない。結果、階段で降りて、遊園地へと降り立った。
すごく感動している。地下にこんな世界が広がっていることに。知らない世界がいま目の前にある。暗いはずの地下が明るく、そこが楽しい空間になっている。世界は広いというけれど、まさにそれだ。だって、どこの壁を舐めてもしょっぱいんだぜ。
せっかく来たのだから、ボートに乗ろうと思い、さらに下に降りた。地底湖の水は塩水だ。見上げると一番最初にここを見下ろした場所が見える。随分と上だ。よくこんなところまで岩塩を掘ったものだ。馬を使い先の機械を動かしていたそうだ。
すごい行列だった。みなボートに乗りたいのだろう。もちろん私も乗りたいので並んだ。ただこの列が驚くほど進まない。満腹時に食べる食パン一斤ほどに進まない。ここに来てからは驚かされることばかりだ。
もちろん辛抱強く並んでもいいだろう。ただ問題があるのだ。寒いのだ。外は39度だった。ここに来る車の温度計がそう示していた。しかし、ここは12度くらいなのだ。周りを見ても長袖の人が多い。だって12度だもん。
そうなんです。動き回っている時はよかったのだけれど、行列に並ぶとジッとしているので寒いこと、寒いこと。だって半袖だもん。ルーマニア暑いんだもの。半袖しか持って来てないもの。結果、並ぶのをやめた。
観覧車はさほど並ばずに乗ることができた。なぜだろう、と考えるとわざわざ地下深くまで降りてきて、高いところに行く観覧車に乗る必要がないからかもしれない。ただ乗ると楽しい。壁が近づき、地上で乗る観覧車にはない体験だ。
ジェットコースターやコーヒカップがあるわけではない。ただ感動があった。私はそれに心を打たれたのだろう。興奮と共に帰りの道を歩いた。長い岩塩の道を歩いた。本当に素晴らしい体験だった。
気づいたら買っちゃってた。Tシャツは650円くらい。迷わず買った。トートバックも買った。岩塩も買って舐めた。感動して、私もサリナ・トゥルダになりたいと思ったのだ。ようこそ、地主のサリナ・トゥルダへ。
遊園地とは地上にあるものだと思っていた。しかし、地下にもあるのだ。世界は広い。そして、学びがある。寒いということだ。全く頭になかった。鍾乳洞なども一年中同じ温度だったりするので、そこから学んでおくべきだった。今度行くことがあれば、長袖を持って行こうと思う。
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