特集 2019年3月18日

うどんの多様性を食べ歩く~東急沿線さんぽ

具の違いではなく、麺の表現方法にこそ店主のこだわりが感じられました。

うどんの材料は小麦粉と塩と水。この決まりきった3つの組み合わせにも関わらず、日本各地に様々なうどん文化が存在している。

極端な例を挙げれば、モニュモニュの伊勢うどんも、シコシコの讃岐うどんも、ゴリゴリの武蔵野うどんも、材料は基本的に同じである。これって実はすごいことなのではないだろうか。

同じ材料にも関わらず、なぜうどんは個性を持つことができたのか。うどんの多様性を体感すべく、うどんマニアの案内で東急沿線の3軒を食べ歩いてみた。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

前の記事:刀削麺を作りたい(デジタルリマスター版)

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祐天寺の「かわいい」が似合ううどん屋さん

今回の案内をしてくれたのは、年間500杯のうどんを食べるというライターの井上こんさん。

昨年末に「うどん手帖 (死ぬまでに一度は食べたい!!全国の名店50+α)」という、思い入れの深い50軒を紹介するエッセイを出された、気鋭のうどんマニアだ。

うどんを語るときは、そこの地粉を使うからこそ生まれたうどん文化を説明するようにしているそうだが、ここは全国各地のうどんが集まる東京なので、今回は職人さんの個性や目指す方向性の違いを中心に、その多様さを説明いただいた。

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井上こんさん。うどんを食べ歩く日は、ゆったりとした服を着るのがコツだそうです。

あいにくの雨が降る中、一軒目にやってきたのは祐天寺駅から徒歩12分という住宅街にある、「ニューさがみや」という旅館みたいな名前のうどん屋さんだ。

先に着いていた編集部の古賀さんから、「めっちゃかわいいうどん屋さんです!」とハイテンションの連絡がきて、かわいいうどん屋って何だと思ったのだが、確かにこれはかわいい店だ。

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まさに町のうどん屋さんという、地域に根付いたかわいらしさ。
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ほら、かわいい。

こちらのご主人は脱サラ組。十条の「いわい」という讃岐うどんの店で、サラリーマンをやりながら週末に修行をして、意を決して「ニューさがみや」をオープンしたのが5年ほど前。

ただこの店は昭和22年創業の「さがみや」という蕎麦屋の居抜き物件で、その屋号や茹で窯ごと引き継いでおり、だからこその落ち着いた雰囲気ということか。

店が混み合う週末になると、家主であるさがみやの元女将さんが、昔のお客さんに会えてうれしいからと、店のお手伝いに入るそうだ。店主としても、こんなに心強い助っ人はいないだろう。

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ご主人の三木さん。

この店のうどんの特徴を伺ったところ、ちょっと意外な答えが返ってきた。

店主:「そんなにないも考えていないんですけど、喉越しですか。ある讃岐うどんの有名店の社長からは、うどんは噛むなっていわれました。おまえは噛んでいるから量も食えなんだ。とにかく噛むなと」

ビールは喉越しとか、カレーは飲み物だという話はよく聞くか、この店ではうどんも喉越しを楽しむ飲み物なのだろうか。

この店を愛してやまないという井上さんが、その喉越しの秘密を教えてくれた。

井上:「粉のベースとなるのは外麦(外国産)と内麦(国内産)のブレンドです。さぬきうどんでよく使われるオーストラリア産のASWと、北海道産のきたほなみですね。そこに去年の夏頃から、モチコムギっていうアミロースがめちゃめちゃ低い粉をブレンドしています」

低アミロースということは、ごはんでいえば餅米を混ぜて炊いたものを想像すればいいのかな。

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「餅、めっちゃ好きです!」と、古賀さんが反応した。

店主:「蕎麦屋とかうどん屋って、家系図みたいなのがあるんですよ。私は宮武一郎さんという讃岐うどんの名人から直接教わった方が師匠なので、孫弟子っていう形にはなるんですけど、 あまりにも作っているうどんが違うので、言わないようにしてます。宮武のうどんを期待してくると、皆さんがっかりされるので」

井上:「伝統を受け継ぐ正統派もいいんだけど、ここは三木さんのうどんだから。家系図にしばられず、作っている人はどんな粉を使って、どういう麺を作りたいのかを、食べながら考えるのがおもしろいんです!」

落語や歌舞伎といった伝統芸能でも、古典をしっかり引き継ぐ本格派もいれば、伝統を踏まえて新作に挑む人もいる。師匠と弟子という関係から生まれる個人経営のうどん屋も、そういうところがあるようだ。

店主:「これは私勝手な解釈ですけど、そば屋ってストイックなイメージですが、うどんはすごいゆるい人が多いんです。好きにしたらええやん。こうでなければいけないっていうのがない。うちの師匠も好きにしろ、好きにしろって」

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お酒も楽しめるうどん屋さんっていいな。

どこまでも優しいニューさがみやのうどん

小雨が降って肌寒いこの日は、井上さんによると「絶好の温かいうどん日和」ということで、3杯とも温かいうどんを注文した。

一杯目は井上さんの定番だという、シンプルなかけうどんに「ゆでドリ」のトッピング。ゆでドリ、初めて聞く具だ。

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ダシも師匠に教わった味をベースにしつつ、昆布を増やすなどご主人が目指す味に調整をしたオリジナル。

喉越し重視だという少し細めの麺は、トゥルントゥルンとうどんの方から喉に飛び込んでくる。どんなに体調が悪くても食べられるであろう、どこまでもやさしいうどんだ。そしてダシに浮かぶ鶏の味が実に濃い。

井上:「ダシなじみがいい、寄り添ってくるうどん。ASWでしっかり安定させて、きたほなみで凛とした麺にしつつ、滑らかさが欲しいのでモチコムギを入れているのかなーって推理するんです」

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もっちりした引きのあるうどんと鶏肉の組み合わせ、なんだかお雑煮を食べている気分になってきた。

井上:「これは優しい女麺系のうどんかな。女麺と男麺っていうのは、完全なる主観ですけどね。印象でしかないんですけど、寄り添う感じがあったり、あっちから来てくれる感じがあったら女麺。

よっしゃ、お前はこういう感じか!腕が鳴るぜ!ってこっちから行くようなら男麺。でも男麺の中にも、美少年アイドル系とかムキムキの竹内力系とかいろいろあるんですよ」

おお、うどんの擬人化だ。

井上:「よく使う、腰がある、ないっていう表現があまり好きじゃない。 柔らかいも、フワっとなのか、トロっとなのか。形容詞や擬音も使いますが、人に例えることでもっと伝わるかなって。

最近は人を見たら、この人っぽいうどんを作るんだったら、この小麦粉でこの加水率でって麺質設計をします。一人遊びとしてはめっちゃ面白いですよ」

バーテンダーに、「この人をイメージしたカクテルをください」ってお願いするのと同じことが、うどんの世界でも可能なのか。

井上:「玉置さんは農林61号ですから。シャカリキしていない、噛めば噛むほど味がある小麦で打ちましょう」

は、はい。

2杯目は蕪のすり流しうどん。ショウガがしっかりと効いた温まるスープで、こんな日にこそ食べたい味だ。

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いつもならエビは1尾だが、我々3人が喧嘩をしないようにと3尾いれてくれた。

3杯目はドカンとチゲうどん。単純に辛さだけで押してくるのではなく、果物の甘さやワタリガニのダシを効かせた奥深い味わいだ。

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口に入れた瞬間、果物の甘さが先に届いて驚いた。
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見た目よりもやさしいチゲうどん。この麺なら冷やしたうどんもうまいんだろうな。

店でうどんを食べる機会といえば、駅にある立ち食い蕎麦屋か、国道沿いの大手チェーン系に行くくらいだったが、近所にこんな店があったらうれしいだろうな。自分の視界に入っていないだけで、探せば実はあるような気もする。

身も心もすっかりと温かくなり、店主にお礼をいって店を出たときの、外の寒さが気持ちよかった。

手打ちうどん ニューさがみや
東京都世田谷区下馬 1-18-9
http://www.new-sagamiya.com/
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旗の台に現れた釜玉うどんの専門店、釜玉うどん 功刀屋

二軒目にやってきたのは、旗の台駅のすぐ近くにある「釜玉うどん 功刀屋」だ。ここはおそらく世界で唯一であろう、釜玉うどんの専門店である。

そういえば釜玉うどんを食べるのは、もしかしたら人生で初めてかもしれない。

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釜玉専門店の「釜玉うどん 功刀屋」。
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業務用の小麦粉袋ってかっこいいですよね。

入店しようとしたとき、店の前に置かれたショップカードをみて驚いた。

「目指したのは、餅の食感。」

かまたま、いや、たまたまなのだが、モチコムギ入りのうどんの次は、ズバリ餅を目標とした釜玉うどんである。

うどん界では餅を目指すのがトレンドなのだろうか。

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同行の古賀さんが餅好きだからのセレクトではないですよ。

圧力釜で茹でるモチモチの麺

釜玉うどんとは、釜で茹でたうどんを水洗いせずに、生卵(黄身だけの場合も)を乗せて提供するうどんのこと。

この店のオープンは昨年の6月。釜玉の専門店が旗の台にできるという情報がうどん好き界隈に広まったとき、「ダシのない店は前代未聞だぞ」という衝撃が走ったと井上さんは熱く語る。

井上さんは二回目の来店だそうで、どうやら店主に話を聞くタイミングを狙っていたようだ。

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トッピングの違いでいろいろある。

井上:「シュボシュボシュボって、普通の厨房とは違う音がするの、わかりますか?これは圧力釜で麺を茹でている音なんです。麺が茹だるというのは、でんぷんの粒が水を吸ってゲル状になること。圧力をかけて茹でると麺の表面と内部の膨潤度に差が生まれるから、そこが餅っぽさの秘密かも」

圧力釜で玄米を炊くと柔らかく炊けるという話を聞いたことがあるけれど、うどんを茹でるっていうのは初めて聞いた。麺を茹でるにしても、いろいろな方法があるもんだ。

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いわれてみると、確かに厨房から蒸気機関車みたいな音が聞こえる。

まずは基本であるトッピングなしの釜玉うどんから。

おいしそうではあるけれど、素人目には普通の釜玉うどんとの違いはまだわからない。

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うどんの白さに色鮮やかな黄身が映える。

最初にこのうどんを食べた古賀さんが驚いた。

古賀:「すごい不思議なんですよ、見た以上に食べてみると太い。どういうことでしょう?」

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本気で驚いている古賀さん。

見た目と食べた時の太さが違うってどういうことだと不思議に思いながら、すぐに私もいただいてみると、確かに古賀さんの言葉通りの驚きがあった。

麺の表面はトロっとフワフワなのに、中にガッチリだからこそ、見た目以上に存在感が強いのだ。この食感の急激なグラデーションは、水で洗わない釜揚げだから、さらに圧力釜で茹でるからなのだろうか。

なるほど、これはすすれる餅だ。憧れの餅すすり(九州に伝わる伝統技)の疑似体験だ!

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牛肉や山芋で味の変化を楽しめる、くぬぎや特製釜玉うどん。ちょっと高級なすき焼きを食べたくらいの満足度が味わえる。
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想像してください、卵黄とバターと出汁醤油をまとった餅っぽいうどんの味を。

井上:「一噛み一噛みがもっちゅんもっちゅん、楽しいうどん。噛み始めてから噛み切るまでにドラマがあります。外側がフワフワで、中はガシっと骨格がしっかりしているから、お相撲さんみたいな感じですね。全身がぶよぶよかと思いきや、抱きついてみれば実は筋肉質。お相撲さんの二の腕を噛むと、きっとこんな食感なのかも!」

なるほど、お相撲さんで例えたか。確かにそうだ。お相撲さんといえば餅肌のイメージだが、この餅のようなうどん肌のほうが近いのかもしれない。

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粗びき胡椒の効いたカルボナーラ釜玉うどんもまたうまい。

モチモチじゃない麺を圧力釜で茹でるからこそできるモチモチのうどん

こうして食べ終えたところで、手の空いた店主からお話を聞くことができた。

店主:「釜玉が好きで昔からよく食べていたんですけど、どこかないがしろにされている。釜玉にフォーカスをして、丁寧に作ってあげてもいいんじゃないかと思ったんですよ。青山のうどん屋で働いていた時、女性客の二人に一人が釜玉を注文していて、釜玉ってこんなに人気なんだって実感してましたし。

僕は餅が好きなんで、餅を目指しているんです。どうしたらうどんが餅になるかをいろいろ試して、圧力釜にたどり着きました。もちろん麺自体も違います。餅米みたいな低アミロースの小麦粉を使うと、圧力釜で茹でるとグニャグニャになってしまうから、ある程度硬い小麦粉もブレンドして、ちょうどいいところにする。圧にも耐えられるしっかりした生地にしておいて、でんぷんの魅力を引き出します」

先ほどのニューさがみやとは、モチモチのうどんを実現させるための方法論が、全く違うのが面白い。そして食べた食感も、どちらも餅っぽいのだが、明らかに違う方向性のうどんなのだ。

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釜玉じゃないうどんもあり、実はこっちもおすすめだとか。

店主:「茹で時間は通常の半分程度。すぐ茹るから、一番ちょうどよい時間が短い。しかも圧力釜は途中で開けられない一発勝負。麺の状態を見極めて、10秒単位で調整します。昔は茹で時間を失敗して、お客さんを待たせてしまうこともありました。

この作り方は修行した店と全然違います。元々サラリーマンだったので、先入観がまったくなかった。圧力釜で茹でても、釜玉専門店でも全然いいじゃないかと。かけうどんとかを食べたくてうどん屋に入る人も多いので、一日一人はメニューを見て帰る人もいます。でも、それはしょうがないかなって。

ただ思わぬ誤算だったのが、釜玉うどん用の麺を水でしめた麺も、めちゃめちゃうまいことでした。常連さんになればなるほど、だんだんしめたものを注文するようになるし、賄いで自分が食べている率も高い。これはかなり自信があります。釜玉とは全然違うおいしさですよ」

水でしめた釜玉用のうどん、それは気になる。先にその話を聞いていたら、一杯はそっちにしただろうな。

次に来た時、何を注文するべきか迷う楽しみが増える情報を聞けて、ホクホクしつつ店を出た。

釜玉うどん 功刀屋(くぬぎや)
東京都品川区旗の台2-7-4
https://kunugiya.com/
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またもや脱サラ組、蒲田のうどん屋大作

旗の台の釜玉専門店から蒲田へと移動し、一旦解散して17時半に井上さんと合流したのは、「うどん屋大作」である。古賀さんは所用で涙の帰宅。

こちらも脱サラ組の店で、井上さんは店主が白楽の「じょんならん(2017年に惜しまれつつ閉店)」で修行していた頃からのお知り合い。修業時代から開店までを見届けたとこともあり、大変思い入れが深いようだ。

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暖簾が上がると同時に入店。
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長いカウンターの奥には落ち着いて食べられる個室がある。

「せっかくだからアリーナ席に座りましょう!」と井上さんに提案された場所は、入り口からすぐの席。ここは間近で麺を打つ様子が見られるのだ。

店主:「うちでは麺の切り置きをしません。打ち立てにこだわっているので、少々お待たせします。ゆっくりメニューを選んでいてください」

店のオープンと同時にお客が来るとも限らないので、お客さんの顔を見てから生地を伸ばすというこだわりのオペレーション。伸ばしている様子を至近距離から見せていただいたのだが、なんだか生地の弾力がすごい。延し餅みたいだ。

井上:「この店は加水を攻めた(水分の多い)、伸びがいいミョンミョン系のうどんです。伸ばした先から縮んでいく、延し泣かせの生地がそそりますね!」

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この距離で伸ばす様子が見られるのはうれしい。

店主:「家具屋の営業をやっていましたが、どうしてもうどん屋になりたくて。まずは会社員をしながら半年間、平日は仕事が終わったら、休日は丸一日、修業をさせてもらいました。それから会社を辞めて、二年間がっつり学んで、この店をオープンしました。

いろいろと修行先を探したんですが、やるなら大変な道をと選んだのが「じょんならん」。師匠は僕より年齢は下なんですが、とても厳しい人で、最初はまともにしゃべれなかったです」

これから脱サラをしてうどん屋をやろうという人を雇うのは、バイトを雇うのとは重さが違うので、師匠も厳しく当たったのだろう。

それにしても個人で飲食店をやるって本当に大変だ。

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焦らずゆっくりと作ってください。

俺は蒲田のバンクシー

生地が座布団くらいの広さに伸びると、すぐに麺を切るだけのシンプルな機械へと持って行った。

店主:「バンクシーうどんです!」

でた、「俺は田舎のプレスリー(映画のタイトル)」ならぬ、「俺は蒲田のバンクシー」である。

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極限まで加水の多いうどんなので、手切りだとくっついてしまうため機械で一気に切るようだ。

このバンクシーうどんをすぐにお湯の沸いた釜へと入れ、しっかりと茹ったら水で洗って、最後に氷水でしめる。

縦長の店舗なので、あっちにいったり、こっちにきたりと、店主の運動量がすごい。

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水分が多い麺は切り置きするとくっついてしまうので、切ったらすぐに茹でる。どう考えても大変そうだが、それが店主の出したいうどんだから仕方ない。

まずは豪快に天婦羅が載った蒲田スペシャルが登場。

そういえば3軒目にして本日初となる冷たいうどんだ。

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蒲田スペシャル山葵バージョンは1000円。同時進行で揚げられた天婦羅は熱々だ。

作っている様子をしっかりと見ていたので、きっと麺が長いんだろうなと思ったが、その長さは想像以上だった。

長ーい。

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麺同士がくっつきあい、腕を一杯に伸ばしてもまだ丼から離れてくれないぞ。

井上:「持ち上げた段階でウニョーンという弾力が伝わってきます。いつもながら瑞々しさがすごい。麺がきれいに茹で倒されてますね。柔らかさの中に低反発ベッドみたいに優しく押し返してくる歯ごたえ。衣がザクザクした揚げたての天婦羅も最高です!」

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エッヂが盛り上がった透き通る麺が美しい。

いただいてみると、井上さんがいうみょんみょん系のうどんっていうのは、こういうことかと納得の質感。お湯で温めた餅のようだ。

もう一杯は、具だくさんの温かい大作うどん。冷たい麺と温かい麺で、まったく表情が違っているのが実感できる。これもうまたどんの醍醐味。

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今日だけで3杯目だけど、これならするっと食べられそうだ。

店主:「師匠の修行先は、香川県の池上製麺所。私はそこの孫弟子になるんですが、 師匠から習ったことをベースにして、お水を選ぶでも、昆布を切るのでも、もう一度自分で考えてやっています。

一般的なさぬきうどんの加水率(小麦粉に加える塩水の割合)は48%くらいですが、今日は58.5%。これは粉の配合や気温で変えています。

打ち立てにこだわっているのは、やっぱりそれを食べてもらいたいから。待たせたくて待たせているわけではないんです。良い悪いじゃなくて、このスタイルがおいしいと自分では思っている」

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茹ですぎなのではなく、きっちりと茹でられた瑞々しい麺。

店主:「人生は長くないから、やりたいことはできるときにやった方がいい。それは早くに亡くなったお父さんから学びました。

もうちょっと動けなくなったら、作り置きできる麺にします。できるうちはこれで!」

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モチモチしているなと思ったら、本物のモチだった。

井上:「うどん屋は小麦粉で自分を表現します。意外と自由度が高くて、粉と塩と水と材料は有限なのに、粉の配合や水分量、寝かせ方や茹で方で、その可能性は無限。いかようにでもなるんです。

自分自身は好みの麺っていうのはそこまでなくて、なんでも基本的には受け入れる。なにじゃなきゃいけないっていう先入観は持ちたくない。

うどんとの付き合い方も自分の中でも変わってきて、昔は発信する以上は情報をしっかり入れようと、狂ったように食べ歩いていた時期もありましたが、今はちょっとペースを落としながら、感じれるものを感じようという余裕が少しだけでてきました。あんまり駆け足で回って詰め込みすぎて、うどんを嫌いになりたくないし。いい距離感を保ちながらやっていこうと」

今回食べ歩いた3軒は、ものすごくざっくりいうとモチモチ系のうどんだったが、そのモチモチという擬音の意味が店ごとに違っていて、実際に食べないとわからないニュアンスやこだわりがたくさん詰まっていた。

なにかしら共通点のあるうどん屋を3軒回ったことで、よりその多様性を感じられたように思う。

うどん屋 大作
大田区蒲田1丁目 東邦医大通り
https://twitter.com/njrMf9ZXNR162yE
 

専門店で食べるうどんはどれもうまかった。ラーメン以上に麺が主役であり、それでいて店によってしっかりとした個性が感じられる。これまで外食の選択肢にうどん屋があまり上がらなかったが、楽しみ方をちょっと知ることができたので、積極的に行ってみようかなという気になった。胃にも優しいし。

そういえば近所に個人経営のうどん屋があったのを思い出したので、近々行ってみようかな。

 

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