本多静六の天丼哲学
「二杯の天丼はうまく食えぬ」という言葉は、日本の公園の父とも呼ばれる本多静六が残したものである。
慶応から昭和までの時代を生きた本多は林学と造園に明るく、日比谷公園をはじめとした今なお数多く残る公園の設計を手がけている。
また、給料の4分の1を貯金する天引き貯蓄法や株式投資で財を成したことでも有名で、投資ブームの真っ只中の昨今ではその方面で話題に上がることも多い。
貼る画像がないので本のリンクでも。これがおかしくて好きです
※このリンクからお買い物していただくとアフィリエイト収益が運営費の支えになります!
本多先輩は貧乏だった頃、現金がなくなると毎日ごま塩をたべて飢えを凌いだという。可愛い我が子が泣き顔をしても、理性に基づいた行動だからと情に流されずごま塩だけで押し通したそうだ。
僕も少なからず影響を受けて節約生活にハマっていて、近頃は調味料をかけただけの飯で一日の食事を済ますこともある。
「お金を使って食べたいものを食べたりしたいことをするのは簡単だけど、巡り巡って資本家が儲かるだけじゃないか!それでいいのか!霞が食えりゃ一番いいけど、それができないから現実的にマヨネーズをすすって生きるしかないんだろ!蛇口からお湯が出るだけで江戸時代なら大富豪!」
僕がそう力説するときの周りの呆れ顔、絵画にしたら億の値がつきそうです。
そりゃ給料を4分の1も天引き貯金したらお金は貯まるし、そりゃ二杯の天丼はお腹いっぱいで食べきれないだろう。当たり前のことを実践するのが大切なのだ。
つべこべ言わずに天丼を二杯食べてみろということですよね。
天丼を注文する
ちょうど出先に天ぷら屋があったので入ることにした。先に書いたように質素な暮らしをしているので内心バクバクである。
節約生活をはじめてからアレが食べたいコレが食べたいという感情をあまり抱かなくなっているのだけど、私は正しい方向に進んでいますか。でも企画にかこつけて天丼が食べられるのはとても嬉しい。たぶん大丈夫そうです。
店の名前を冠したベーシックであろう天丼を注文しました。
ふたつ隣の席に野菜だかなんだかの天ぷらを食べている人がいて、サクッ…!!という音がその口元から聞こえてくる。ふたつ隣の席で?いまの外食シーンはそんなことになっているのか。
1杯目の天丼
1杯目の天丼がやってきた。
海老2尾・豚肉・野菜4種。それがどういう由縁でこんなにも光り輝いてるんだ?すてきすぎるだろうがよ。
それでは、いただきます。
天丼をどこから攻めるか真剣に考えて海老天をあっちやりこっちやり動かす時間があり、そういう類いの享楽が世の中に存在していることを思い出した。
天つゆがかかってる肉の天ぷらがうますぎる。薄めにまとっている衣はほどよい油っこさでしつこくなくて、でも肉をがっつり食べているという喜びは確かにある。二杯目の天丼は肉がいっぱい乗ってるやつにしようと心に決めた。欲望が芽吹いた。
ちなみに、貧乏苦学生だった頃の本多静六が叔父に天丼を奢ってもらって生まれて初めて食べたときは、以下のようなことを日記に書いている。
「ソノ美味筆舌ニ尽シ難ク、モー一杯食ベタカリシモ遠慮シテオイタ、ソノ価三銭五厘ナリ、願ハクバ時来ツテ天丼二杯ヅツ食ベラレルヤウニナレカシ」
大げさというなかれ、めちゃくちゃわかる。おれには泣きそうなほどわかる。本多は後年二杯の天丼を実現してそのなんでもなさにガッカリするわけだが、1杯目の感動は確かに共有できた。
1杯目を食べ終わる頃に次の天丼を追加注文した。もちろん肉天丼だ。豚肉2ケ・ささみ大葉巻き・野菜4種。