二杯の天丼はうまく食えぬ、のか
数分の休憩時間を挟んで二杯目の天丼がやってきた。スマホからの注文ということもあって店員さんからの反応はゼロ。「二杯の天丼、うまく食べられるといいですね」とか言ってほしかった。
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今度きた分には、あれだけ嬉しかった肉の天ぷらが2枚乗っている。ウキウキ。いまのところ単に幸福度は2倍、コストをかけた分だけ嬉しくなっている。よし。うまく食うか。うまく食うってなんなんだそもそも。
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2枚目だろうが3枚目だろうが肉はめちゃくちゃうまかった。野菜もうまいし米もうまい。
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おかしいな。ずーっとうまい。確かに満腹感も相まって飽きがまったくないかと言えば嘘になるが、ナメないでほしい。感性が研ぎ澄まされた今のおれを。
天丼で満たされた腹はパンパンに膨れて、ちょうど腹筋運動のような刺激を肉体に与える。それはもう筋トレのようなもので、なんだか気分がよくなってきたのである。自重トレーニングならぬ天重トレーニングだ。
舌だけで食事を味わおうなどというのは不埒千万、全身で天丼にぶつかっていく覚悟さえ持っていれば味覚で得られるのとは別の高揚感を得られるのだ。
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高いテンションのままで二杯の天丼を食べ終えた。
金銭的余裕と体力の両面から、やろうと思えば俺はこんなことができるんだぞというポジティブな気持ちになれた。あまりの高揚感から店を出るときに荷物を忘れてしまったほどである。
二杯の天丼は最高。むしろ一度はやっておいたほうがいい。でも三杯はたぶん無理です。
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参考文献
『私の財産告白』本多静六,近代経済人文庫編集部,2022