みんな見てた「ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」
今じゃできないだろうなぁ、という平成のテレビ番組の代表格といえば、『進め!電波少年』(日本テレビ系列)だろう。
松本明子&松村邦洋がアポ無しで著名人に突撃したり、無茶な海外ロケで数々の芸人が死にかけたり、年またぎ特番で新年カウントダウンをわざと2分フライングして視聴者の抗議が殺到したり、「コンプライアンス」のコの字も存在しない大暴れぶりだった。
その『電波少年』の人気を一気に押し上げたのが、当時無名だったお笑いコンビ猿岩石(有吉弘行、森脇和成)による「ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」だ。
香港を出発し、ヒッチハイクでロンドンを目指すという、無茶すぎる大型企画。その道中を二人が記したのが『猿岩石日記』(日本テレビ放送網)である。
「極限のアジア編」「怒濤のヨーロッパ編」がシリーズ累計250万部の大ヒット。平成8年(1996年)の年間ベストセラー6位になっている。ちなみにこの年の1位は『脳内革命』だ(以降、ベストセラーランキングはトーハン「年間ベストセラーアーカイブ」を参照しています)
所持金10万円は早々に底をつき、ハノイではビザが出るまで3日間絶食&野宿、タイではわけも分からず留置所に入れられ、インドでは成り行きで出家までしてしまう。
そうそう、そうだった! 着てる服を売ったり、ストリートで空手ショーをしたりして日銭を稼いでいたっけ。
そういえば、「ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」はゴール直後に「実は飛行機を3回使っていた」ことが判明して、ちょっとした問題になったんですよ。
ルート上には内戦などで治安の悪い地域があり、安全を考慮すると飛行機を使わざるを得なかった。でも番組は「全行程をヒッチハイクでゴールした」ように見せていたのだ。今だったらヤラセ批判で炎上案件かもしれない。
その飛行機ルートのひとつが、バンコク(タイ)~ヤンゴン(ミャンマー)間。その部分、『猿岩石日記』ではどうなってるんだろう、と見てみると……。
「ヒッチハイクをした」とも「飛行機を使った」とも書いていない。急にワープしたみたいになっていた。大人の事情である。
土曜の22時にタレントの性を暴く「ココロジー」
『猿岩石日記』よりもっと売れた本が日テレにある。『それいけ×ココロジー』だ。売上部数はシリーズ累計400万部。平成4年(1992年)の年間ベストセラー1位である。
「それいけ!!ココロジー」(日本テレビ)は、当時テレビではまだ珍しかった「心理テスト」を扱った番組だった。
なんでもない質問から出演者の深層心理が暴かれるのがうけ、心理テストブームの先駆けとなった「ココロジー」。司会は所さんで、心理テストは美輪明宏さんが白バックのセットでオーラたっぷりに出題していた。
例えば最初に乗っている「ドライブは誰と」はこんな感じ。
- あなたは車で道を走っています。誰とどんな道を走っていますか。
- しばらく走っていると、あなたの車の横に一台の車が来ました。どんな車ですか。あなたはどう対処しますか。
- さらに走ると、“目的地まであと半分”の標識がありました。感想を一言。
- さあ、もうすぐ目的地です。途中で出会ったヒッチハイカーはどんな人でしたか。
- ついにあなたは目的地に到着しました。そこはどこですか。どんなところですか。
この質問でわかることは「あなたの人生」だという
- どんな道を誰と走るか……あなたの人生の象徴とパートナー
- 隣に来た車と対処の仕方……ライバルとその付き合い方
- 標識を見て一言……今まで活きてきた感想
- ヒッチハイカー……浮気したいタイプ
- 目的地……人生の終わり
ドライブを人生に例えるのはなんとなくイメージできる。でもヒッチハイカーって浮気の象徴なの? とかはよくわからない。ネットに慣れた身だと「ソースは?」と発してしまう。
そして読み返してみてわかるのは、かなりお色気な心理テストが多いこと。放送してたのは土曜の22時だけど、そんなに下ネタでいいの!? とビックリする。
「電波少年」とはまた違う意味で、これはいま放送する内容じゃないな……と思うのだった。
とんち系クイズブーム到来「世紀末クイズ」
昭和から平成にかけて「10回クイズ」「究極の選択」といった引っかけクイズが流行った。
さらに『マジカル頭脳パワー!』(日本テレビ)が平成2年(1990年)にはじまって、知識ではなく“とんち”のクイズがブームになる。
そのブームに乗ってベストセラーになったのが、『笑っていいとも』(フジテレビ)発の『世紀末クイズ』。第1弾が93万部、第2弾が73万部売れた。
『世紀末クイズ』は、もともと『笑っていいとも』の「タモリ・ウッチャンナンチャンのそれ絶対やっちゃダメ!」というコーナーで、視聴者からのクイズにレギュラー陣が答える企画だった。
これが好評で、曜日レギュラーがダウンタウンになってからも「タモリ・ダウンタウンのそれ絶対やってみよう!」と名前を変えて続いたんですよ確か(うろ覚え)
なので、書籍も第2弾は『タモリの、ダウンタウンも世紀末クイズ“それ絶対やってみよう”』という書名になってる。
「世紀末クイズ」が面白かったのは、コミュニケーションをとりながら法則を探るタイプの問題が多かったこと。例えばこういうやつ。
世紀末クイズ、いまやってもウケそう。上記2冊に比べるとその穏便さにホッとする。
時代は「番組本」から「芸人本」に
今回挙げた3冊以外にも、『SMAP×SMAP』『SmaSTATION!!』『トリビアの泉』の番組本が年間ベストセラートップ10に食い込んでる。
- 『ビストロスマップ完全レシピ』(平成9年)
- 『ビストロスマップKANTANレシピ』(平成10年)
- 『ベラベラブック vol.1』(平成14年)
- 『ベラベラブック vol.2』(平成15年)
- 『トリビアの泉 へぇ~の本』(平成15年)
ただ、『トリビアの泉』以降は番組本がトップ10に入ることがなくなって、代わりに「芸人が書いた本」がベストセラーになっている。
- 『ホームレス中学生』(田村裕:平成19年)
- 『ハローバイバイ・関暁夫の都市伝説』(関暁夫:平成19年)
- 『火花』(又吉直樹:平成27年)
- 『大家さんと僕』(矢部太郎:平成30年)
図らずも「集団から個の時代へ」みたいな話になってきた。令和になったら「ネット番組本」がヒットしたりするのかなー。