意外と親切で優しい
怖いと思ったところも行ってみたら面白いし、そこにいる人たちは親切である。他にも町中にある将棋クラブや雀荘、自治体でやっている料理サークルなど色々と行ってみたい。夜のトイレも怖いが我慢して行こうと思う。
町を見渡すと「怖そうなお店」というものがないだろうか。ぼったくりなどがあるお店ではなく、人はいるがなんとなく入りづらいお店だ。
知らないだけで入ってみたら実は面白いんじゃないだろうか。行ってみることにした。
ネットで怖いと言われているラーメン二郎がある。基本的にはラーメン二郎がファミレスのような和気あいあいと喋るお店ではないので、少し他のお店と比べると静かではあるが、それをそれを超えるこわさだという。それが相模大野店である。
確かに「ラーメン二郎 相模大野」で調べると「怖い」と候補に出てくる。そういえば、大学生の頃、「ネットでよく聞くけどどんなところなんだろう?」と調べてから行こうと、色々と検索したら「ちゃんと注文ができなかったら注意を受けた」、「マナーやルールを少しでも違反したら怒られる」という情報を見てしまい、あまりの怖さに震えてしまってその日はご飯を食べずに、必死にお腹を空かせて次の日に行った記憶がある。
列に並ぶ間に何か言われることがないのか、メニューはどれがいいのか、「アラブ、ヤサイ、カラメ」という注文はいつ言えばいいのかなど、色々なことを気にしすぎていたら、緊張しすぎて味がしなかった。
緊張感は店内でも感じられて、誰も話しておらず、黙々とラーメンをすすっている。あれはドラマで離婚する直前の夫婦ぐらいの空気だった。
それから何度も行くうちに怖さにも慣れたのだが、本当に怖いのか確かめたい。二郎経験者の編集部安藤さんと行った。
以前行ったときには「正直緊張してラーメンの味はよくわからなかった」と言っていたが、果たして今回はおいしく食べられるだろうか。
またお店の前には「マンションに敷地内には立ち入らないでください」、「駐輪場に止めるようにしてください。」など近隣の方々に迷惑をかけないように注意書きが書かれている。迷惑をかけてはおいしい食べ物もおいしく食べられませんからね。
相模大野店は通称「スモジ」と呼ばれる。こちらの店主は元力士の方で、相撲界、ラーメン界で厳しい修行をしてきたのだろう。それだけにマナーに厳しいのかもしれない。
ただ、色々と書いたが一般的なマナーで言われた通りに答えればいいだけで、変なことさえしなければ怖くない、むしろ二郎の中でもおいしいと評判のお店なのだ。
普通、店内がにぎやかで外の行列が少しひかえめに騒ぐだろう。
これから楽しい食事をするというのに、ここは店内には謎の静寂感が漂う。
食べるだけなのだ。なのに2人とも緊張をしている。何かの決勝の試合でも出るぐらいの緊張感が漂う。
会話しないまま待つ。なぜならはしゃいで怒られたくないからだ。他の人たちも黙々とラーメンをすすっており、食べ終わった人たちは「ごちそうさまでした」と声をかけてパッと出て行く。
こちらを見ながら「お茶漬けの方行きましょう!」と店主から声をかけられた。安藤さんの注文したメニューだ。はっきりとした声で「そのままで!」と伝えていた。よしよし、練習の成果が出ているな。
スープは、しょうゆのパンチがドカッっと来たあとに油の甘さとうま味が来る。食べ終わったあとには「もう半年はいいや」と思うが、お腹が減ると食べたくなる中毒性の高いスープだ。
量が多いため食べていると味に飽きてくることがある二郎だが、カレーを入れるとまた普段とは違った味になって飽きず最後まで食べることができる。
お茶漬け~麺は梅が入っていることでサッパリとしていて食べやすい。またかつお節や昆布茶のうま味が二郎をよりおいしくさせている。好きな味だ。
水でしめられた麺は硬めで歯ごたえがある。この麺が好きで何回も通っているのだ。もう、止まらない。途中、安藤さんの食べるペースが落ちたが、それを横目にモリモリと食べ進める。
感想を聞いてみる。「少なめにしたけどやっぱり量が多くて、普通のお店の大盛りぐらいある。でも「残したら怒られる」と思って死ぬ気で食べた。お腹が重い。こんな緊張してご飯を食べることがないよね」
怖いと評判のお店だが、普通にしていれば怖くないのだ。世の中にある他の怖そうなお店も実は怖くないのではないか。行ってみることにした。
歌舞伎町なども怖いが個人的に怖い町、原宿に行ってみたい。
おしゃれなお店、高級なお店が怖いのだ。入った瞬間、「おい貧乏人がきやがったぜ!」と指を差されて笑われ、「本日はダサい男が来たので閉店します」と蛍の光が流されてしまうのではないか。真相を確かめなければならない。
世の中にいる全ての人がいるのでは?と思ってしまうぐらい大勢の人をかきわけながら進むと町の地図があった。それを参考にお店に行こうと思う。
原宿なんてほぼ行かないのでわからなかったがこんなにも服屋があるのか。目がチカチカするぐらい服屋が密集している。そして、名前だけでは情報がわからないので、目に入った普段行かないお店に色々と入ってみた。
アインズ&トルペはドラッグストアみたいな感じかと思ったが、全然マツモトキヨシのような感じじゃなかった。キヨシ感ゼロである。
慣れないおしゃれにお腹が痛くなってきた。このあとトイレをするためだけに表参道ヒルズに行きました。初めての表参道ヒルズはデートとかではなく、便意でした。
そして、高級店にも行ってみることにした。
怖い。コーチの頭につくのは鬼しかない。鬼コーチだ。入った瞬間、腹筋100回をやらされたりしないか。
入るとすぐにお店の人が近寄ってきた。入って3歩で追い出されるのかと思ったが「何かお探しでしょうか?」と質問をうけた。
しかし、なにも探しているものはない。とっさに出てきたのが「母の誕生日にあげるものを探しておりまして・・・」母の誕生日は4月26日だ。過ぎている。
必死に何かを探して目に入った「お財布や小銭入れとかないでしょうか?」を探すことにした。色々と紹介してくれて、様々なカード入れや小銭入れをデザイン、機能性など細かく教えてくれた。接客サービスが恐れ多いほどていねいである。
感想はどうだろうか。
恥ずかしいのだ。うそをついてしまった恥ずかしさもあるが、買う物がないのに入るのが恥ずかしいのだ。あと、そこのお店に興味があるのかも恥ずかしくなるポイントである。
興味があれば「私興味あるんです!」という気持ちで入れるが、興味がないと「私なんかがすみません」とネガティブな気持ちで入ることになる。
あと、服屋がこれだけあるのに太っている人のサイズが全然ない。入るお店に4Lとかが置いていない。
「カップルたちがいる中で男がぶらりと入ると(なんの修行をしているのか?)という疑問が生まれたがお店を出る瞬間は少し優雅な気持ちになれた」と悪い気はしなかったそうだ。
このあと、ルイヴィトンに行ったが客層からして気持ちに余裕がありそうな人たちにあふれていてこんなに人たちになりたい。ココイチで値段のことを考えないでトッピングできるような人間になりたいと感じた。
原宿はまだまだ終わらない。今度は若者たちに人気の竹下通りに行ってみる。
多くの服や雑貨、小物やタピオカドリンクやクレープなど若者たちが愛してやまないものたちがあふれるお店が立ち並ぶ。そんな中、気になるお店を見つけた。
原宿にはイベントステージもあるのでそういう人のお店かなと思い、入ってみた。
浅草の演芸とかでよく見る衣装がたくさん置いている。若者たちの町で、ベテラン漫才師の衣装とかを見るとは思わなかった。ウクレレ漫談とかを見たい気分にさせられる。
ここで衣装を買おうかと思ったが、冗談で5万は高いので手軽なもの買ってみた。
いい買い物をした。また別の場所に行こうと思って外を出た。いつでも人が多い。そんな中、アフリカ系の明るい外国人が「お兄さん、服買わない?」とアクティブに声をかけてきた。
着いていったらどうなるのだろうか。路地裏のお店に行くことになった。
とりあえず、お金がないことを伝えて、Tシャツをおすすめされた。「太っているけどサイズありますか?」と聞くと「ダイジョウブ!アメリカのサイズだから大きいよ」とサイズはあるようだ。
「似合いそうなやつを下さい!」と言うと「じゃあこれだね!」と胸ポケットがあるボーダーのTシャツを手渡された。
少し薄めの生地ではあるが肌触りがよい。いくらだろうか。2万円とか取られた寝るときに涙を我慢しながら思い出すだろう。いくらですか?
「本当は1万円だけど、おにいさんやさしいから6500円でいいよ!」と3500円の値引きである。お得だ。ウキウキ気分で買った。この夏はこのTシャツを着倒そうと思う。
このお店を出た直後に「うちのお店にも来てよ!」と体格のいい外国人3人ぐらいから熱望のまなざしで誘われた。こんなに誘われるの初めてだ。異文化コミュニケーションが生まれそうだったが、「クレープを食べて帰るので」と言って去った。そのあとに買ったツナマヨネーズのクレープはマヨネーズの味がいつもよりもやさしかった気がした。
目の錯覚を起こしそうなTシャツである。果たしてこれが高いのかわからない。でも、似合いそうなのでよしとする。
最後はアメ横である。威勢のいい声がどこにいても聞こえる活気あふれる商店街である。
アメ横に来たのはほぼ初めてである。売られている商品がスーパーでは見ないものが多く、歩くだけで楽しい。また、食べ歩きできるような食べ物屋、露天で食べられるお店もあるのでここだけでも異国の感じがある。
普通に歩くだけでも楽しいのだが、今回のテーマは「怖そうなお店」である。聞いたうわさだと「アメ横センタービル」が怖いらしい。
さっそく中へと入ってみる。まだエントランスの部分なのだが怪しく怖い雰囲気がただよう。
少しビビりつつも目的の地下ではなく、上の階確認してみたい。普通のお店が並びそこまで怪しい雰囲気がない。しかし歩き進めると面白いお店を見つけた。
中古カメラのお店の店先には大量のこけしが置いてある。話を聞くと知り合いにコレクションをしている人がおり、その人の余ったこけしをもらって無料で配布しているらしい。
そして、ついに怖いとうわさの地下へと行く。活気あふれる通りとは違い、怪しいオーラが地下から漂ってくる。
階段で降りてみるとそこは日本にはない光景が広がっていた。
上野の地下には東南アジアの市場がある。パスポートを持ってないと連行されるのではないかと思うぐらい東南アジアだ。買いに来ている人たちも日本人の人よりも9割が外国人で日本語が聞こえてこない、ほぼ聞いた事のない言葉である。
珍しい食材やここでしか買えない調味料など見たもの全てを買ってしまいそうになる。友人と2人でそれぞれ興味のあるものを買ってみた。
「王老吉」と書いて、ワンラオジーと呼ぶ日本では見かけないドリンク。中国で一番売られているお茶だそうだ。お茶というとウーロン茶のイメージだが、この「王老吉」は涼茶というジャンルで幅広く飲まれているらしい。
ただ、お茶と思って飲むと驚くだろう。甘いのだ。ガムシロップを10個ぐらい入れたんじゃないかと思うぐらい甘い。甘さと一緒に薬草の風味が口の中に広がる。こうやって書くとおいしくないと思われるかもしれないがおいしい。癖になる味だ。
また、中国では冷たい飲み物は体に悪いと言われており、常温で飲み物が売られていることが多いそうだ。
そして、市場を歩く中で名前は聞いた事があるが実物を見たことがない面白い食べ物を見つけた。怖い。
果物の王様ドリアン。こんなのまで売っているのかと即決して買った。こちらではドリアンをむいた状態で果肉を冷凍した状態で売られており、「解凍したらそのままで食べてみて」と食べ方まで教えてもらった。
よく「ドリアンがにおいがとてつもなく臭い」と聞く。あれでしょ、熱湯風呂が実はそんなに熱くなくて、大げさにリアクションしているみたいなことでしょ。そんなに臭いないのにみんな大げさなんだから。そんな気持ちでにおいをかいだ。
この世の臭さを凝縮したにおいがする。鼻がよじれるにおいとかではなく、ふて寝したいぐらいくさい。三角コーナーの生ゴミを出し忘れてしまったまま2週間の旅行に出てしまい、帰宅後に部屋を開けたらするであろうにおいの3倍はくさい。気軽買ったことを後悔する臭さである。
解凍されないでこのまま永久に解けないでほしいと思う反面、一度食べてみたい好奇心がうずく。夕方にとけたドリアンを食べることにした。
友人の部屋で食べようとしたが、強い意志で断られたので公園で食べることにした。
持ってくる際、「においが漏れ出てないか」と心配になる。東南アジアでは公共のバスや電車などの公共の場にドリアンを持ち込むことが禁止されている。
日本では大丈夫だが何重にも包装してにおいが漏れ出ないように持ってきた。
「臭いと言えば臭いですけど、臭さの中に南国のフルーツのようなトロピカルな香りがするので全然大丈夫です」
強い。このにおいをかいで大丈夫な人がいるのか。それでは食べてみよう。私はにおいでは負けたが食べたら「このにおいが逆においしい」となるかもしれない。
録音した音声通りに感想を書いてみる。
なにがそうなのかわからないが、明らかに語彙がなくなった。
生ゴミのようなにおいと果肉のやわらかさも合わさって、食べてはいけないと体が反応している。ときどきチワワぐらい震える瞬間があった。かわいい。
私はダメだったがにおいは大丈夫と言った能登さんはどうだ。おいしく食べられるのであればこのまま9割食べてほしい。
ダメだった。「口に入れた一瞬だけ、南国のフルーツのような甘い味がしたんですけど、噛んだら三角コーナーでした」
このあと、頑張って食べました。ドリアンを食べたあとに食べたラーメンはとてもおいしかったです。
怖いと思ったところも行ってみたら面白いし、そこにいる人たちは親切である。他にも町中にある将棋クラブや雀荘、自治体でやっている料理サークルなど色々と行ってみたい。夜のトイレも怖いが我慢して行こうと思う。
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