それでもぼくらは生きていく
ノープランで色々なお店を探すのは楽しい。なにが起こるかわからないままにぶらぶらしていると今まで興味がなかったものも段々と興味深く見えてくる。ただ、こういう記事は心臓に悪いので1年に1度ぐらいにしたいものです。
生きていれば色々なことがあるだろう。試験に合格したり、宝くじが当たったりなどのいいこともあれば、財布を落としたり、スマホが突然壊れたりなど悪いこともある。
これは記事の撮影をしに行ったらうまくいかなかった男たちの記録である。
※編集部より
この記事はデイリーポータルZの運営元であるイッツコムのサービスエリア、東急沿線の魅力を紹介する記事です。
「元住吉駅」という駅がある。神奈川県川崎市にあり、東急東横線の渋谷駅から電車で約20分で着く、にぎやかな商店街がある素敵な町だ。
元住吉駅にはオズ通り商店街とブレーメン通り商店街があり、今日行こうと思っているお店はブレーメン通り商店街にある。
元々、元住吉西口商店街だったが1990年に改名し、1991年には、ドイツのブレーメンにあるロイドパサージュ商店街との友好提携をしたらしく、ドイツも認める日本のブレーメンと言っても過言ではない。ドイツのブレーメンに行ったことはないが、負けないぐらい活気にあふれるにぎやかな商店街である。
このときはまさかこのあんなことになるとは思わなかった。そう、ロバの足を触りながら幸せを願っているときは。
今回は本場の台湾料理が食べられるお店で臭豆腐(しゅうどうふ)を食べようと思っていた。臭い豆腐、どんなものか、どれぐらい臭いのか、というより食べていい物なのか? だって臭いんでしょ?など疑問はつきないが、一度食べて見たいなと思い、元住吉駅にある「台湾小吃 美」というお店に向かった。
臭豆腐とはどんな料理なのだろう、他にもおいしい料理をたくさん食べて帰ろうと思っていてお店の前に行ったら、もう事件です。
やってない。ネットでは営業中となっていたので行ってみたら見事にやってない。一般的なライターは電話で聞いてから行くらしいと言ううわさを聞いたが、現地に行って許可を取る形で俺たちはやってきたのだ。いつだってなにが起こるかわからない、現地のわくわくを味わいたいのだ。臭豆腐を食べる記事は延期となった瞬間だった。そして、途方に暮れた。元住吉、19時30分頃のできごとであった。
ここの台湾料理のお店に行きたいが、次回の営業時間まで待つと締め切りに間に合わない。ネットで探すと近くに別の台湾料理のお店があるらしいのでそこに向かう。
「ネットで調べればなんでもある。無敵だ。」という話をしながら、お店に入り、「臭豆腐は置いてありますか?」と聞いてみて、「あります」ぐらいのところでうちには置いてない」と言われた。
でも、我々はめげない。臭豆腐をあきらめたが別の変わった料理を見つけた。
お店オリジナルのドクロ麺。これはぜひ食べて見たい。今回は「ブレーメン商店街でドクロ麺を食べる」のタイトルで決まった。
気分ウキウキでドクロ麺を食べてみようと「じゃあ、ドクロ麺ください!」と元気に言った。それはまるで裏山を走り回る少年のような元気っぷりだった。
やってなかった。どうやらドクロ麺はお昼限定のメニューで夜は出していないらしい。なんだろうすごく震えてきたが、これが武者震いってやつか。1日に二度打つ手がなくなると落ち込むどころか、テンションがあがってくる。これだから記事を書くのはやめられない。
あと、確認なのだが、ロバの足をつかんだら幸せが来ると聞いたが、どうしたのだろうか。幸せをじらされている。もしくは本場ドイツから来るのか。調べたところ、羽田空港からドイツのフランクフルト空港まで12時間かかるらしい。幸せの到着予定時刻、明日の8時である。当日便で来てほしい。
そんな落ち込むできごとが続く中、素敵なものを見つけた。商店街オリジナルのビールである。
猪苗代地ビールで有名な福島県猪苗代町のビール醸造所の協力で作られたブレーメン商店街オリジナルの地ビールだ。
ビールの本場ドイツの「ビール純粋令」に従って作られていて、余計な材料は使わずに作ることでビール本来の味を楽しめるビールらしい。これは一度飲んでみたい。
ぶらぶらしていると、スーパーで見つけることができた。
さっそく買ってみよう。お会計をするときに栓抜きがないことに気づいたが、一緒に買ってしまおう。
レジの方に栓抜きがどこにあるか聞いてみた。これで持ってきてくれてハッピーエンドになると思っただろう。
聞くと「すみません、置いてないんですよ」と申し訳なさそうにレジを打つ。レジの引き出しが開くときの「ガッシャーン」というレジを開ける音がこの日はやけに大きく聞こえた。今日のレジの音は心に響くぜ。
会計を済ませたあと、許可を取って店内で開けさせてもらうことにした。どうしても飲みたい我々は自宅の鍵やキーホルダーを使用してなんとか開けようと必死である。
お店の人も外にまで栓抜きを探し行ってくれて、「なかったのでスプーンを持ってきました」とまたも申し訳ない感じで貸してくれた。スプーンで開けたことがないが、店員さんが持ってきてくれたのだ。きっと開けられるだろう。「絶対に開けられる」というその場にいた全員の思いがスプーンに集まった。
お礼を言って外に出る。きっと栓を開ける方法があるはずだ。コンクリートや鉄の鎖、その他多くの物で試したが中々、開けられない。
ダメだ、全然開かない。「昔、アメリカの映画とかでハードボイルドな男が歯を使って開けてましたね」と安藤さんと話していた。一応、自分でもやってみたが開く雰囲気がいっさいない。あきらめつつある中、ハードボイルドな男、安藤さんの闘志は燃え続けていた。
「違うスーパーに行ってみましょうか」と言おうと思ったが、この姿を見て飲み込んだ。体中の力が歯に集まっている。
そして、何回か試行錯誤してもうダメかと思った瞬間、ビール栓にむかない安藤が勝った。
まさか、取れるとは思わなかった。見ているときに自分も再挑戦してみたが、口の中から聞いたことのない、明らかに歯が欠ける音がしたのでやめた。安藤さんすごいな。ブレーメンの音楽隊に祝福してほしい。
先月、虫歯の治療が終わったばかりの安藤さんが言うには「上の歯で栓の上部を抑えつつ、栓の下側に歯をひっかけてあとは思いっきり力を入れてあける」のがコツらしい。このあと、自分の分も開けてもらった。一芸ができた瞬間である。ただ、あと、2、3回やったら歯がなくなってしまうらしい。なくならないでほしい。
ビールを飲みながら元住吉駅を散策すると、色々なお店が建ち並んでいる。
ハントンライスとは「デイリーポータルZ北陸にたまごのせ文化があるのか?」にも載っているが、オムライスに白身魚のフライ、そしてタルタルソースが乗った石川県のB級グルメである。
石川県に住んでいた安藤さんが言うには「石川県の洋食屋ではどこでも置いてある」と一般的な料理のようだ。
ハントンライスで記事を書こうか迷っているといいお店を見つけた。カレー専門店パピーである。
普通のカレーの店に見えるが、まずは注文したものを見てほしい。びっくりすると思う。
とんかつにカルボナーラ、そして、カレーにチーズをトッピングしたまさに「理想」である。自分も夢で見るかもしれない。
こちらのお店、普通のカレーもあるがカレーとスパゲッティの合盛りで注文することができる。
トッピングやスパゲッティなど、組み合わせしだいでは無限の数のメニューがあるだろう。見つけてしまった、夢のお店を。
数分で運ばれてきたカレーとスパゲッティ。カツはカレーの上に乗せられているのでまわりがサクサクである。
世の中のだいたいの合盛りは、少ない量が半分ずつあるというのが多いが、パピーはカレー1人前とスパゲッティ1人前がやってくる。カレー1人前とスパゲッティ1人前が合わさって友情パワーの味がする。
今回は中辛を頂いたが、カレーはピリッとした辛さがありつつもコクのあるマイルドなみんな大好きな味、カルボナーラも少し柔らかめなスパゲッティにたっぷりのソースにベーコンなどの具材が入っている。どちらも家庭的な味でおいしい。家の近くにあったら通いたい。
色々なありすぎて1日中撮影していた気がする。ブレーメン通り商店街は活気あふれて、色々なお店もあって楽しいのでぜひ行ってみてください。
ノープランで色々なお店を探すのは楽しい。なにが起こるかわからないままにぶらぶらしていると今まで興味がなかったものも段々と興味深く見えてくる。ただ、こういう記事は心臓に悪いので1年に1度ぐらいにしたいものです。
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