花粉症、花粉を見に行きたいと言われる
寒さが和らいだと思ったら花粉の季節になってしまった。春服で野原を駆け回りたいのにくしゃみが出る。歯がゆい季節である。歯がゆいというか目がかゆい。
そんな時に、編集部の安藤さんは花粉が飛ぶところを見たいという。杉の林から黄色いモヤが漂う景色を見たいのだそうだ。よく夕方のニュースで見るアレだ。
花粉対策グッズがあるらしい
テレビで見る景色を自分の目で見たいという気持ちはよく分かるが、こちらは花粉症なのだ。「でも車で行くし花粉対策グッズがあるから大丈夫だよ」と安藤さんは言う。
色々な花粉対策グッズを試しながら花粉が飛ぶ様子を見に行く旅なのだそうだ。
対策グッズがあるから辛い場所に行っても大丈夫だよ、という理屈、なんとなくしっくりこない。そもそも行きたくないのだ。「この日予定ないんでしょ? 飲み会これるじゃん」と言われた時の気持ちと似ている。そもそも行きたくないのだ。
でも花粉対策グッズは気になる。僕はと言うと、今年ついに自分が花粉症であると認めはじめたところなのだ。
ここ数年春になるとくしゃみが出るなあと思っていたが「埃に敏感なので」と自分に言い聞かせてやり過ごしてきた。しかし今年は症状がひどくて気持ちでやり過ごせるレベルではなくなってしまった。花粉症ビギナーとしていい対策グッズは知っておきたい。
グッズに釣られる形で花粉を見に行くことになった。
奥多摩がすごいらしい
横浜の日産本社で待ち合わせて、エクストレイルという素敵な車を借りて奥多摩に向かう。安藤さんが事前に、花粉が飛びそうな場所を調べたのだそうだ。
「花粉 関東 発生源」とか検索したのだろうか。パソコン、その瞬間にぶっ壊れたらよかったのにな。
杉を見ながら進む
とりあえず車の中は清潔で花粉もないので、安藤さんと花粉や車の話をしながらドライブをした。
「花粉がない」というのはただ窓を締め切っているから、という理由だけではない。エクストレイルならアレルゲン活動を抑制するクリーンフィルターが付いているらしく、外から入ってくる空気も清潔なのだ。この季節にぴったりの車。
段々僕もリラックスしてきて、奥多摩の名物などを調べたりした。釜飯とそばがおいしいらしい。
杉である。もうすぐ新緑の季節だと言うのにうっすら赤茶けている。そんな木がすごい密度で生えていてブロッコリーみたいになっている。木の塊が一つの生き物みたいなのだ。怖い。
車の中は安全なはずなのに、なんだか目がかゆくなってくる。
「これは花粉飛びそうだねー!」と安藤さんが興奮している。「安藤さんも今日吸った花粉で花粉症になっちゃうんじゃないですか」と言ったが「なっちゃうかもねー!」と笑っている。
僕からの必死の抵抗が響いていない。「なっちゃうかもねー!」ってなんだ。なっちゃったらどうするんだ。
<僕のやりたいこと> 花粉対策グッズを試す
奥多摩についた。観光をしながら花粉のモヤを探す。まずは小河内(おごうち)ダムを見学することになった。
「見学することになった。」じゃないよ(自分で書いたのですが)。出たくないのだ。だってあんなに杉だ杉だ言うんだもの。怖い。
そこで花粉対策グッズである。試したものはこちら。
車に満載されたグッズのうち、一気に5種類を使った。使いすぎだ。いくつかは機能していないんじゃないか。飴って今から舐めて効果あるのか。
しかしさすがに花粉の存在は感じない。よかった。何がどう機能しているのか分からないが安全ならなんでもいい。
使ってみた感じをまとめておきます。
<安藤さんのやりたいこと> 花粉が飛ぶところを見る
花粉対策グッズを5個使った筆者と0個使った安藤さんの2人で車を降り、ダムに向かう。
展望塔という、ダムを高いところから見渡せる施設があるのでそこに行こうという時、その時である。
モヤが、音もなくゆっくり広がっている。イメージ通りだ。すげえ。うっかり興奮してしまった。
モヤが薄くなってなくなるまでしばらく見ていた。わざわざ来た甲斐があったなあと思ってしまう、説得力のある光景だった。恐ろしいんだけど見てよかった。なんだこの気持ちは。
あの下のことは今は考えたくない。家で紅茶とか飲んで気持ちを落ち着けてから考えたい。
展示を見ながらもぼんやり花粉のことを考えてしまっていた。あれすごかったなあ…。
<僕のやりたいこと> 花粉対策グッズを試す
このあと「あのモヤモヤの下、行ってみようよ!」となる。なんて愚かなことを言うのだ。遠くから見えたからいいじゃないか。でも車で行くし、花粉対策グッズがある。そう、僕は今日グッズを使うために奥多摩に来たのだ。
新しく試したものがこちら。
安藤さんが専門店で防塵マスクくださいと言ったら「有機溶剤ですか?酸ですか?」と聞かれたらしい。「花粉だ」とは言わず「酸です」と答えて買ってきた。「なんかすごそうだから」ということだ。
<安藤さんのやりたいこと> 花粉を間近で見る
話が前後するが、さっきモヤが見えた真下、ちょうどそこに階段があってかなり歩きづらいが道が続いていた。杉林に入れるのだ。
ジャケットとジーパンの人がひょいひょい登っていく。やっと追いついて一緒に杉の木を見上げるが、さっきのモヤモヤは見えない。一回ブワッと飛んじゃうとしばらくああいうのはないのだろうか。
残念でしたね、さあ帰りましょう、と言おうとしたところで安藤さんからふさふさしたものを渡された。
この中に花粉が入っているのだ。杉の木を遠くから見てちょっと茶色く見えたのはこの雄花の色だったのだ。おびただしい数の一個一個花の中におよそ40万個の花粉が入っているそうだ。目がかゆくなってきた。
安藤さんが「うわーうわー」と言いながら花の一つを手のひらの上でつぶして、出てきた花粉を興味深そうに眺めていた。
このあと、別の道で花の部分に近づける場所があり、すごいものを見てしまった。
そりゃもう大変なことにもなるわ、という量の花を見てしまった。迫力が違う。今まで「くしゃみが出そうだ」とか「目がかゆくなってきた」とか書いていたが、画像の処理をしていて本当にくしゃみが出た。
<安藤さんのやりたいこと> 奥多摩を楽しむ
また話が前後してしまうが、そばを食べて『へそまんじゅう』を買った。
おいしかった。杉を見て怖い怖い言ったあとなのでこういうおいしいものが沁みる。
でも本当は天ざるが食べたかったかもしれないなと思いながら食べた。そばを頼んだらおばちゃんに「あったかいのでいいですか? 冷たいのもありますけど」と言われて反射的に「はい、あったかいのでいいです」と答えてしまったのだ。
そうか、今日はそんなに寒くないし冷たいのもおいしいだろうな。でもこのあったかいのもおいしいな。でもな、冷たいのどんな味だったんだろうな。どっちがよかったかな。ゆっくり考えないと分からないな。と心の中でブツブツ考えながら食べた。花粉で判断力が鈍っているのだ。そばも選べない体。
目的の花粉を見て、ダムも見ておいしいものも食べて、2人で大変満足して帰路に着いた。僕としても対策グッズと車のおかげでそこまでひどい花粉症の症状もなく旅行を終えた。鼻マスクがすごいということも分かってよかった。
運転中にくしゃみでも出たらどうするのだ、と思ったが、エクストレイルにはハンドルを支援してくれる「プロパイロット」や前を走る車や歩行者との衝突を回避する「インテリジェントエマージェンシーブレーキ」、さらに、もしもくしゃみをしている間に車線をはみ出したらブザーで警告してくれる「車線逸脱防止支援システム」などもあるのだ。
だからくしゃみしながら運転しても大丈夫、というわけはないけど、万が一の時にも助けてもらえるぞと思うと楽しく運転できた。
そして花粉症になる
そば屋で安藤さんが「鼻がムズムズする」と言い出していた。「花粉症になっちゃったんじゃないですかー?」と冗談っぽく言ってみたが本当に辛そうなのだ。車に戻ってマスクをしていた。
帰ったあと、メッセージがあった。
こんなにきれいな「だから言ったじゃないか」もそうない。あまりにきれいなのでむしろ言っていない。数日後会った安藤さんは目を赤くしてぼーっとしていた。花粉症だ。