家でやろう
外でやるべきものではない。
花粉対策や風邪予防に「鼻うがい」という対処法がある。鼻の中に洗浄液を入れてきれいにし、もう片方の鼻の穴や口から液を出すのだ。大胆で魅力的なうがいである。市販されている鼻うがいの商品を3種類、試してみた。
遂に認めざるを得ないところまできた。
数年前から春になるとくしゃみは出ていたのだが「花粉というより埃全般苦手なので、チリとしての花粉に反応しているだけだろう」と思ってやり過ごしてきた。実際症状もそこまでではなかったのでそれでなんとかなっていた。
しかしある日くしゃみをしだしたらもう止まらなくなって他のことが何もできなくなってしまった。何かを考えることすらできない。ひどく生産性の低い人間だ。情けないなと思う。
これはもう花粉症であることを認めて対策を講じるしかない。鼻うがいをやってみよう。
鼻うがい、鼻の穴から液体を入れて、中にある花粉や雑菌を洗い流すあれである。大胆な発想だ。よく花粉症の人が「鼻を取り外して丸洗いしたい」と冗談で言うが、それに近いことができてしまうのだ。
存在を知った時から「すごい、やってみたい!」という思いと「でも痛そうだな…」という思いがせめぎ合ってきたが、くしゃみに困る今、いよいよ「すごい、やってみたい!」に体重が乗ってきた。やるなら今である。
調べてみると、手軽に鼻うがいができる『ハナノア』という商品がある。電動の商品もあったけどいきなりそんなことしたら死んでしまうかもしれない。まずはハナノアの通常タイプを使ってみることにした。
記念すべきはじめての鼻うがいなので袴を着た。世界には色々な通過儀礼がある。バンジージャンプをしたり体に模様を彫ったり。それに比べたら鼻に液体を入れるなんて軽いものである。この鼻うがいを経て、僕も一人前の花粉症として世に羽ばたきたい。
北向さんも花粉症だが鼻うがいの経験はない。比較的新しく出てきた商品なのでよかったら使いたいかも、と様子を見ていたらしい。是非今日の僕を参考にしてほしい。
ハナノアには洗浄液と、液を鼻に入れるための洗浄器具が入っている。
この器具に洗浄液を入れて鼻に当て、 鼻の奥の上咽頭(じょういんとう)というところに当てるように流し込んだあと、口から出すのだそうだ。鼻の穴、片方10mlずつ行う。Amazonのレビューを見ると「スッキリ!」「とても良いです!」という感想に混じって「上級者向き」「難しい」とある。20mlがすごく多く見えてきた。
いざやるとなったらすごく怖くなってきた。鼻うがい経験者は全員この緊張感をくぐり抜けてきているのだろうか。
動画では、モデルの女性が鼻から洗浄液を入れ、口から出し、微笑んでいた。そんなわけないだろうと思った。
「あー」と声を出しながら液体を入れる。こうすると耳の方に液が来ないらしい。
鼻と口と目から色んな汁が出てあっぷあっぷした。汚い話ですみません。
一瞬だけ鼻の奥に液体が来た感覚があったが、反射的にそれを追い返してしまった。失敗である。
写真を撮ってくれた北向さんが「もうちょっと上向かないと入っていかないと思いますよ」という。でも上向くと耳の内部に洗浄液が入り中耳炎になる恐れがあるとパッケージに書いてあった。怖いじゃないか。
でも確かにコツを紹介しているサイトを見ると、アゴをクイッとやられた時ぐらい上を向くと書いてある。
アゴをクイっとやられたことがないので分からないが、それぐらいほんの少し上を向かないとうまくできない。しかし上を向きすぎると中耳炎になる。すごいチキンレースをしているぞ。これがうまくできたら絶対に立派な大人になれる。
鼻うがいは鼻の粘膜に負担をかけるので1日に3回程度にとどめるべきとあった。何回もできないのだ。1回目は粘膜にほとんど影響はなかったと思うが、とにかく次で最後にしたい。
汚い話ですみません。飲んで大丈夫なものなのかサイトのQ&Aで見たが、1回使用量程度なら問題ないらしい。よかった…。特に味はしなかった。
しかし、全然口から出る気配がない。そういえばコツを調べた時、少し上を向くが洗浄液が鼻に入ったら正面を向く、とあった。きっと上を向いたままだと口に出るルートに液体が来ないのだ。
鼻を洗浄液が通過した達成感で北向さんにこう聞いたら「いや、口から出してこそじゃないですか?」と言う。そうか。ダメか。洗浄液を口から出してこそ鼻うがいなのだ。次だ、次こそ最後だ。
しかし初めての鼻うがい、ミントの香りでスースースースーする。爽快感がすごい。鼻の奥まで鼻があるなあと感じる。ムズムズしたり詰まっていたりして気がつかなったが、こんなに鼻って奥まであるのだ!と実感できる。長らくできなかった深呼吸をしました。
やる前は、プールで溺れた時の鼻がツーンとする感じになるかと思ったが、液が鼻から入る異物感を受け入れれば、それ以降は痛いことはない。慣れればいけるなと思った。
やっぱり鼻の奥にある洗浄液を口から出す作業がすごく難しかったが、とにかくできた。勝負事に弱い人生だったが、ここに来てラストチャンスをしっかりつかんだのだ。(自分の鼻の粘膜を大事にしたので絶対に3回で終わりにしたかった。)
最初がすごくヘタだっただけに鼻うがいのコツが分かった。北向さんも参考になったと思う。
なんとなくコツは分かった。日を改めて他の商品も使ってみよう。
使い方簡単タイプは洗浄液を鼻から入れて鼻から出す。洗浄液が奥まで入らず戻ってきてもう片方の穴から出て行く、みたいなイメージだろう。
さすがは使い方簡単タイプで、ボトルを押したらいつの間にか成功していた。下を向いていていいところもいい。僕の場合はそんなにひどい花粉症ではないようで、このタイプで十分スッキリできた。
40度から42度のお湯を作って、付属の洗浄剤を溶かして洗浄液を作るのだ。手間がかかる。
「温度大事!」と思った。液が暖かいと気持ちよさすら感じる。手間をかけただけはあって一番快適に鼻うがいできた。下を向いて使うタイプだけど、液が鼻の奥まで来ず洗いきれていない、という感じもしなかった。
市販の商品を3種類使ってみた。それぞれ洗浄器具に特徴があって使う際のコツも細かく異なると思う。僕は3つ目のハナクリーンが一番快適にできた。
でも一番思い出深いのは袴を着てやったハナノア(通常タイプ)である。苦しかったら苦しかったでそれなりの良さがある。
外でやるべきものではない。
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