特集 2023年12月27日

「青梅」から「青海」までの旅

東京都青梅市にある「青梅(おうめ)駅」と、江東区青海にある「青海(あおみ)駅」は、所在地がぜんぜん違う。

だけど、人は間違う生き物だ。「梅」と「海」を混同し、行き先を勘違いして、たいへんな思いをした人の話を聞いたことがある。

かたや山の近く。かたや東京湾を臨む。そんな2駅の間をあえて移動してみたい。

せっかくなので途中下車しつつ、1日かけて。

 

 

1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。飲食物全般がだいたい好きだという、ざっくりとした見解で生きています。とくに好きなのはカレー。(動画インタビュー)

前の記事:旅先で、駅弁ではないお弁当を買う

> 個人サイト たぶん日記

間違いじゃなければ、しゅんとしない

駅名を勘違いして、行くはずじゃなかった所に行ってしまうのは、きっと多くの人にとって悲しい出来事だ。なぜなら、田町と町田、赤羽橋と赤羽など、似ている名前の駅同士は離れていることが多い。

…いや、ちがうな。距離の問題じゃない。

甲子園駅と甲子園口駅の間なら、ちょうどいいバスがあれば10分程で移動できるけど、着いたと思った駅に着いてなかったら、それだけでもう、たちまちにしゅんとしてしまう。

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私はむかし甲子園駅と甲子園口駅を間違って、しゅんとなったことあるのだ

ましてや青梅と青海のあいだは片道2時間弱もある。長い。

もし間違ったら、急いでヘリコプターをチャーターでもしないと遅刻はさけられないだろう。ああ、想像しただけで胃がヒュンッとなる。こわすぎる。自分だって、いつ何時やらかすかわからない。

 

だけど、もしこれが「間違い」じゃなかったら。
ただ「青梅」から「青海」まで移動するだけだったら。

泣きたい気持ちにならなくていい。

どの景色もぐっと輝いてみえるのではないか。

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青梅駅周辺、空の面積が広い

というわけで冬の午前10時、青梅駅に降り立った。

オレンジ色がまぶしい〜

青梅。名前は何度も見たことがあったけど、改札の外には出たことがなかった駅。なにがあるのかまったく知らない。

周辺にあるものたち。文字情報のみだと、想像がつくようでつかない
ふたをされてる場所が気になるが、なにひとつ思いつかない。知らない場所ってつまり、そういうことだ

改札を出たら、遠くの山々がよく見えた。

ビルの背は軒並み低くて空の面積が広い。酸素の量が心なしか、いつもより多い気がするけど、実際はどうなんだろう。

駅前のフルーツ屋さんのたたずまいもいい

突如あらわれた少し背の高いビルは、圧はつよめだけど、妙な味わい深さがある。

つよめのビル。広範囲の中国料理を網羅しているという意味でもつよい
色の使い方もつよい
せっかくだから、ここでごはんを食べていこうと思ったが、ビルそのものが売り出し中だった。どんな方の手に渡るのだろう

空がよく見える場所は、風通しもいい。つまり寒さが割としっかりめに降りそそいでくる。

胃が、あったかい汁物を欲しはじめたのでなんか食べたい。

近くにあった中華料理屋さんに入ろう
看板メニューはおそらくラーメン

入店してしばらくすると、お店の人が「寒いですね〜」と言いながらテーブルにお茶を置いてくれた。

手をかざした途端、即あったかい。冬の醍醐味って感じがする

思わず、「お茶、あったかいですね」とつぶやいたら、「これで、手をあたためてくださいね」とお店の人。ありがてえ。そうやってお茶で暖をとっているうちに、さらにあったかい奴も来た。

タンメン
自家製の麺らしい

麺のちぢれ具合をみているとより一層あったかさが染み渡る。この一杯ですっかりたっぷり大満足だ。

だが、ふと気づいてしまった。周囲にいたおじいちゃんおばあちゃんたちが、「中華麺と酢豚」「ラーメンと餃子、ライス」など、元気いっぱいなメニューを平らげていることに。

思わず、40年後の自分にもこのくらい胃のキャパシティがあることを願わずにいられなくなる。

八百屋さんは、みかんの種類が妙に充実していた
駅前のお土産やさんには、地元企業「カネク」の粉わさびがたくさん積まれていた。粉にちょっとぬるま湯を足して、練って作るらしい。お店の人が丁寧に教えてくれた

初めて見る特産物をみつめながらふと、だいぶ遠くまで来たような気持ちになった。非日常感。でも、訪れたどの店にもPayPayがあったことで、なんとなく現実に引き戻される。

PayPayの浸透率の高さがこわい。

無人駅総選挙が開催されたらしい。去年
吹き出し、ぜんぶ手作業で貼り付けられているっぽい。駅ごとにフォントが違うのは、それぞれの駅の駅員さんが制作したからなのだろうか
第一位の駅の動物遭遇率よ
階段の圧力が妙にかっこいい!
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河辺(かべ)駅のイオンには穏やかな時間が流れていた

青梅線に次回来るのはいつになるかわからない。ならば、ここぞとばかりに途中下車をしておきたい。

まずは河辺駅だ。「かべ」と読む。ずっと「かわべ」だと思っていたが、さっきアナウンスに教えてもらった。

さっきよりも矢印の圧が減って、階段がかわいい
「びっぐぷらむ」のひらがな具合もかわいい
なんかかっこいい円形の先にはイオン
くつしたの詰め合わせがたくさん売っていた

ひとやすみしようとイオンのソファに腰掛けてのんびりしていたら、館内放送が、長い横文字の食品名をしゃべる途中で、ちょっとだけ噛んだ。 でもこの世界では、それを責める人は誰もいないような気がした。なんとなく。穏やかな時間が流れていた。

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