特集 2023年11月28日

旅先で、駅弁ではないお弁当を買う

いわゆる「名物」と呼ばれるもの以外でも、その土地でしか食べられないものは、いっぱいあるんだろう。

たとえばお弁当。旅先で、駅弁以外のお弁当を買い求めた経験があんまりないのだが、地元の方たちが日常的に買って食べている、チェーン展開していないお店の質実剛健なお弁当を食べてみたい。

1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。飲食物全般がだいたい好きだという、ざっくりとした見解で生きています。とくに好きなのはカレー。(動画インタビュー)

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未知のお弁当を尋ねて

コロナ禍、飲食店のテイクアウトやウーバーイーツの恵みに触れ、あらためて感じ入ったのが「お弁当というフォーマットの自由さ」だ。

お弁当とはつまり「専用の容器に詰められた食べ物」だが、それ以外には、そこまでがっちりした定義がない気がしている。

お店ごとに違う顔があって、あるときには、自分では到底揃えられない数のおかずがぎゅっと詰まっていたりする。組み合わせ方も豊かだ。なんといっても、食べる場所を自分で選べるのもすばらしい。

そんなお弁当、しかも駅弁とかじゃない、地元の人が日常的に楽しんでいるお弁当をあえて旅先で食べてみたいのである。

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そんな気持ちとともに新幹線に乗り……

やってきたのは宮城県気仙沼市。近年朝ドラ『おかえりモネ』の舞台になったことでも知られている。

コンビニに冷蔵庫が置かれているのをみたとき、「遠くまで来たんだなぁ」と実感した
気仙沼ではいろんな海産物が採れる。特にめずらしいのはサメだろう。サメの心臓「もうかの星」はレバ刺しに似た味といわれている。サメ肉の唐揚げを売っているお店もあった。そして、サメ肉ジャーキーの切り取り線がかっこいい

サメグルメの数々に触れ、「今回の記事、『サメグルメの豊かさを堪能する』に切り替えたほうがいいんじゃないのかな?」とも思った。だが、初心貫徹して今回はお弁当を探していきたい。

Googleの地図アプリに「弁当 気仙沼」と入力してみたところ、いくつかのお弁当屋さんがヒットした。まずは宿泊先から車で5分くらい走ったところにある「味ロマン」というお店に向かう。

 

味ロマン
「ギョーザランチ」
うっかりカーナビがついてないレンタカーを借りてしまったため、何度か迷子になって辿りつくまでに1時間かかりました(本来なら5分で着ける)
なお、さすがにこのままではまずいと思ったので、ナビアプリをスマホにダウンロードして、車のエアコンに設置できるスマホホルダーを近隣のキャンドゥで買いました

運転に慣れてない人がカーナビやスマホの地図に頼らず運転すると、うっかり大冒険になることがわかった。もし昭和中期にタイムスリップすることになったら、カーナビはマストで連れていきたいと思う。

よかった。営業中だった

お店に入ると、店員さんが「注文が決まったら呼んでください」と声をかけてくれた。さてどうしようか。種類がたくさんあって迷う。

視界にはざっと20人前くらいのお弁当が広がっている

ふと「ギョーザランチ」という名のお弁当に目がとまった。

餃子とごはん、野菜炒めの組み合わせ

餃子もごはんも野菜炒めも、食べたこと自体はあるけど、この組み合わせで目にしたのははじめてな気がする。

日替わり弁当だけ、作り置きされているようだ

注文すると、「15分ほど待つけど大丈夫ですか?」と尋ねられた。ほとんどのお弁当は、注文を受けてから作り始めるようだ。

「はい、大丈夫です。」と答えたあとに、「1時間かけてやっとたどり着いたんだもの。もう、待てるだけ待ちますとも!」と心のなかで付け加えた。できたてほやほやが味わえるのは、むしろうれしい。

待ち時間に見つけた、顔がちょっとほころぶ瞬間

そして15分くらいが経過。出てきたその姿には驚いた。とにもかくにも大きいのである。自分が知っているお弁当箱の2〜3倍くらい。いや、お弁当箱というよりも、ケータリングで頼んだオードブルが入っているような容器だ。

思わず「お、大きいですね」と声が漏れた。

店員さんは即座に「うちのはそうなのよ。味噌汁はサービスです」と伝えてくれた。

この日は小粒の雪がぱらぱらと舞っていた。温かい飲み物のサービスが染みる

ホテルでさっそく開封する。

容器に余白はあるとはいえ、だいぶボリューミー。野菜炒めの量が脇役じゃない

写真でこの大きさがきちんと伝わりきるのか不安なのだけど、ちらっと写り込んでいるホテルの電話機と比較してみてほしい。 

ちなみに餃子単体でも、一般的な餃子の2倍くらいの大きさなのだ
まさかここで出合うとは思わなかった白米にグリンピースのせ。かわいい
野菜炒めが、まちの中華屋さんにあるような、本気でがっつり炒めているやつだ
ついまじまじと見たくなる餃子。具もたっぷりだ
味噌汁の具が、それ相応の時間煮込んだ汁物特有のくたっとした質感で、思わず頬がふんにゃりほころんでしまう

自分とは違う誰かの生活を想像することは正直、あんまり得意じゃない。だけど、こうやってくたくたに煮込まれた白菜を食べていると、この味噌汁を作った人が、白菜を刻んでいるところ、味噌汁を煮込んでいるところが、なんとなくだけど想像できた。 その晩はぐっすり眠れた。

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味ロマン
エビフライ弁当
なので翌日、同じ店に別の弁当を買いに行った。今日はエビフライ弁当

エビフライは揚げたてほやほや。手のひらのうえに弁当を置いたら、お弁当の熱さが伝わってきた。

エビの存在感がしっかりしている

どこで食べようか悩むよりも前に食べたくなってしまい 、車のなかでさっそく頬張った。

そうか。車ってこういうところが自由なんだ。

エビがぷりっとしてる!

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