ここにあったのか!
国道というものがあるが、その中の一部は「酷道」と呼ばれている。それが徳島にある。国道439がそれだ。それを目指して走っていると小便小僧があった。写真では見たことがあったけれど、ここにあったのか、と驚いた。
1968年に設置されたものだそうだ。存在は知っていたけれど、徳島にあるとは知らなかった。またかかしだらけの町も徳島にあると知った。やっぱり写真を見たことはあったのだけれど、徳島とは知らなかった。
「かかし」と言われると田んぼなどで、鳥の襲来を防ぐために設置するイメージがあるけれど、ここでは人間サイズの人形をかかしと呼び、町のあちこちに置いてある。廃校になった小学校の体育館にもあるし、道端にもあるし、軒先にもある。もはや人だ。
遠くから見ると人なのか、かかしなのかわからない。椅子に座っていたり、木に登ろうとしていたり、窓を覗いていたりとパターンもいろいろだ。町は過疎化が進んでいるけれど、かかしのおかげで賑わいがあるように見える。
酷道を進んだ先にあるかかしの町。迷い込んでしまったような感じがして楽しい。ここで住民には合わなかったけれど、観光客はたくさんいた。しかも、海外の人も多い。確かに来るべきだ。逆にすごい未来に迷い込んだ感がある。
天空の集落
小便小僧やかかし村があるのは祖谷という場所で、山の中にある。幾重にも重なる山の中にあるのだ。その証拠に平家の落人がここにやってきている。おそらく私は平家側の血筋なのでとても興味がある場所だ。
平家の家紋は揚羽蝶。私の家の家紋も揚羽蝶なので、ほぼ間違いなく平家側の人間だ。そんな平家側の人間が行くのが祖谷にある「落合集落」。近年は天空の村として注目を集めている。
山奥にある村と言われると、狩猟や林業、炭焼きなどをしている人が多いと考えてしまう。しかし、ここでは農業が行われている。急な斜面を切り開き畑を作り、水田を作り、家を建てている。普通なら谷の部分に家を建てそうだけれど、斜面に建っているのだ。
集落内の高低差は約390メートル。集落の起源についてはわかっていないけれど、平家の落人伝説も残っているので、関係しているかもしれない。なにより景観が素晴らしい。本来なら奥山という景観になるはずだけれど、里山の景観。面白い。
集落には里道が設けられている。車道が整備されているけれど、上まで登る最短距離はこの里道ということになる。車道はグネグネとしているけれど、最短距離の里道はもうまっすぐに走っている。つまり急なのだ。
ところどころに「コエグロ」がある。これはススキを刈り取って積まれてもので、土壌流出防止、マルチや堆肥などとして利用される。この辺りは換金作物してタバコ栽培が行われ、その場合は干鰯などを購入して堆肥にしたけれど、自家消費用の作物はススキを使った。堆肥としてのススキは「コエグサ」とも呼ばれる。
石垣も美しかった。開墾時などに出てきた岩を使い、側面は小口が見える「だるま積み」になっており、角は石の長手と短手が交互に積んである「算木積み」になっている。大変だったろうなと思う。この斜面で石を運んだのだから。
世界三大土柱
世界三大というものがある。世界三大珍獣はパンダ、オカピ、コビトカバで、世界三大河川はアマゾン川、ナイル川、ミシシッピ川となる。そんな世界三大が徳島にある。それは世界三大土柱である。
世界三大土柱はイタリアの「チロルの土柱」、アメリカの「ロッキーの土柱」、そして、徳島の「阿波の土柱」だ。土柱とは砂礫層が断層の活動で隆起したものを、雨水が侵食してできたものだ。岩石や礫により侵食をまぬがれた部分が柱のようになるのだ。
812年に阿波守に着任した菅原清公もこの土柱を見て短歌を詠んでいる。「春霞波とう嶽に浮かび来て花の波うつ小倉野の里」。波とう嶽がこの土柱のことだ。なかなかに迫力があり見入ってしまう。地味なのだけれど、ずっと見てしまう魅力があるのだ。
遊歩道が整備されていて、下から見ることもできるし、上から見ることもできる。渦潮もそうだったけれど、上からも下からも見ることができるのが徳島の魅力かもしれない。夕日に照らされてより美しく見えたかもしれない。
日本唯一のボンカレーの自販機
オロナミンCやポカリスエット、カロリーメイトを作っている大塚製薬や大塚食品などの大塚グループは徳島で創立された。ボンカレーは大塚食品が発売している。世界初の一般向けの市販レトルト食品がボンカレーだ。
そんなボンカレーの日本唯一の自販機が徳島に残っているそうだ。それは食べたいと、コインスナック御所24に向かった。うどんやそばの自販機や普通のジュースの自販機、手袋の自販機と並び、その自販機はあった。
どこにもボンカレーとは書かれていないけれど、ボンカレーの自販機で間違いない。文字が消えているけれど、本来ならライスの上に「大塚のボンカレー」と書かれているのだ。今は消えていてボンカレーの要素はないけれど。
300円を入れてカレーを買った。温かいご飯の上に温かいレトルトのカレーが乗っている。自分で開けてご飯にかけるのだ。問題はボンカレーではなく、ハウス食品の咖喱屋カレーであることだ。ただ特に問題はない。