苗木城からの眺め
次は中津川市にある「苗木城」に行く。「天守閣から眺める景色は別格」とのこと。それは見たい。木曽川の右岸にある山の上にある。お城を見ると、昔の人は毎日そんな高いところまで行っていたの、と思ってしまう。元気だ。

苗木城は岩山の上に築かれ、建物が板張りや土壁で白く塗られていなかったこともあり、「赤壁城」とも呼ばれていた。城主は遠山氏で、乱世の時代から明治維新まで12代に渡りこの地を治めたそうだ。


巨岩を上手く利用しつつ石垣も作られている。ここまで石を運ぶのは大変だったろうと思う。今は建物自体はないのだけれど、天守閣の場所には当時の構造を復元したものがある。そこからの眺めを楽しみたい。


「霞ヶ城」とも言われており、晩秋の早朝に行くと木曽川からの霧が立ち込めているかも、ということで私も早朝に訪れた。でも、残念ながら素晴らしく見通しがよかった。朝早く起きたことを評価して欲しい。早朝は気持ちよかったし。

繊維街に迷い込め
苗木城では上から街を見たので、次は街を歩きたいと思う。そこで訪れたのが岐阜駅からすぐの場所にある「繊維街」。岐阜駅の周りには高い建物が並ぶけれど、繊維街は異なる場所のように感じる。早朝に行くと異世界に来たみたいということで、早朝に訪れた。



戦後に北満州から引き上げた人々が、古着や軍服などを集めて販売するバラックをここに並べた。やがて古着だけではなく、新しい服を売る形態に変化して行き、東京、大阪に並ぶ日本三大ファッション産地と呼ばれるほどに発展したそうだ。


確かに行ってみると、多くの洋服屋が並んでいた。駅前が分かりやすく発展していたので、このアーケード街の雰囲気は異世界のように感じる。建物は古く趣がある。茅葺屋根みたいな趣ではなく、今を感じることのできる趣。そういうのがたまらない。


そのような時間を感じる建物の間から、最新の高いビルが見える。その感じに悶える。遠い時間と今の時間が一枚の写真に収まるのだ。もちろん繊維街には今の時間も流れている。そういう時間の渋滞がたまらなくいいのだ。

ちなみに私は緻密なスケジュールを立てて撮影に行っている。ここからここが移動で1時間で、撮影に30分で、みたいな感じで。ただそんなものはここでは崩れる。正直な話、撮影は20分予定だった。それなのに1時間もいた。教えていただいた通りの異世界感。犬ならうれしょんしていると思う。

グーグルマップにない道
次は下呂市金山町の「筋骨めぐり」をしたいと思う。飛騨地方では狭い路地のことを「筋骨」と呼ぶ。かつては国が所有する道で、やがて法廷外道路となり、現在は下呂市が所有する道になっている。これが感動的だった。

金山町の全ての道が狭い路地ということではもちろんない。車が通れるような道もあれば、自転車すら通れない、人が通れるだけの道が家々の間にあるのだ。もはや迷路のようになっている。この町でかくれんぼをしたら絶対に面白いと思う。



このような道が町中に張り巡らされている。生活のための道だ。公道なので誰でも通ることができる。私の心をバンバンにくすぐる。なぜだろう、ワクワクするのだ。安い言葉になるが、心が震えた。こんな街に出会ったことがなくて、心が震えるのだ。


そんな路地への入り口に銭湯があった。銭湯の引き戸を開けると、「昭和63年9月10日最後の入浴」と書いてある写真があったので、もう30年ほど前になくなってしまった銭湯ということだ。そこを見学する。




またスケジュールが大幅にずれた。20分の予定だったのだ。それが1時間半という滞在時間。当然陽は暮れる。私は緻密なスケジュールを立てていると書いたけれど、もはや緻密でもなんでもない。街が時間の経過を忘れさせるほどの力を持っている。その結果、真っ暗なんだけどね。



家々の夕食の匂いを感じながら、スマホを出してグーグルマップを開いた。当然のようにそこには道がなかった。人の家にいるような感じになっている。でも道はあるのだ。しかも公道なのだ。犬じゃなくてもうれしょんすると思う。しそうだったもんね。
