上流から下流へ
野川を下り、世田谷の喜多見辺りにやってきた。小さな流れだった野川はこの辺りでは、そこそこの規模になっている。カワセミがいたりもするそうだ。私が住む狛江にも野川は流れ、風景印に採用されていたりもする。
成城学園前駅から15分ほど歩いた場所にある「次大夫堀公園」。野川の脇にある公園だ。園内は世田谷の農村風景が復元されており、緑美しい木々があり、田んぼがあり、小川も流れている。小川は野川から引かれた水だ。
江戸時代の古民家などを移築した「民家園」もあり、昔の世田谷の様子を知ることができる。今の世田谷とは随分と違う。屋敷林があり、茅葺の家があり、この時期は蚕が育てられている。
屋敷林は地域差があって面白い。関東ではシラカシが多く、日本海側に行くと松となり、東北ではスギなどになる。また山形では垣根がウコギだったりもする。非常食として食べることもできるからだ。この民家園では茶が垣根になっていた。
古民家の入り口の柱を見ると「大口真神」と書かれた護符が貼られていた。多摩川沿いではよくこの護符を見かける気がする。私のフィールドが多摩川沿いなだけな気もするけれど、多摩川沿いの古い家でこの護符をよく見かけるのだ。
この護符を売っているのが青梅の御嶽神社。多摩川の上流域に鎮座する神社だ。その神社の境内に「大口真神社」があり、オオカミが祀られている。真神はオオカミの異名的なもので、日本武尊が道に迷った際に助けてくれた白狼に、ここに留まるように言ったことによってできたものだ。
水だけが上流から下流に流れるのではなく、上流の文化などの信仰も下流へと流れてくるのだ。そこが川の面白いところ。全ては繋がっているのだ。ちなみに3月に私は大口真神社に行っていて、護符も当然買って家にある。
雨の落合川
今回オススメしてもらった川で一番多いのは「落合川」だった。東久留米市を源流とする川だ。水系で言えば荒川水系ということになる。雰囲気がいいし、水遊びができるように整備されているとのこと。遊びたいじゃない、川遊び大好きだ。
雨だった。とても雨だった。風を伴う激しい雨だった。雨の川にもいい点はある。植物が濡れることで緑が濃くなり美しい。もちろん悪い点もある。川遊びは絶対にしてはいけないことだ。
落合川沿いは整備されていてとても歩きやすく、東京なのかと思うほどに緑も多く、流れる水も美しい。鳥もよく見かけた。ただ雨である。そして、風が強く寒い。6月だけど、雨で濡れると寒いのだ。
この雨で1つわかったことがある。たとえば漏らした時はパンツが2手に分かれる中央部から濡れるが、雨では逆で周りから徐々に濡れ始め、中央へと水が染みて行く。パンツが濡れるという点では一緒ではあるが、過程が異なる。最終的にはどちらも全部濡れるんだけどね。
景観阻害要素と言えるようなものはなく、ひたすらに美しく、落合川をオススメしていただいた理由がわかる気がする。雨が降っていなければ川に入り、夏休み初日の小学生のようにはしゃいでいたと思う。でも、本日は雨なのです。
落合川周辺には湧水も多く、それが落合川の流れを作り出している。上流へ歩いていくと、「上流端」という看板も見つけることができた。聞きなれない言葉だけど、現状ではいっちゃん上ということでいいのだろう。
奥に入れないことはないようだけれど、梅雨時期で雑草が元気いっぱいに伸びていて、私の侵入を拒んでいた。ここを落合川の最上流ということにしたい。その代わりに、落合川が流れる東久留米市で育てられている「幻の小麦」のスイーツを食べたいと思う。
柳久保小麦は江戸時代にこの辺りで育てられていた小麦。美味しい小麦ではあるが、収量が少ないことや倒れやすいこともあり、戦後は姿を消し「幻の小麦」と言われるようになった。ただ昭和の終わりに栽培を復活させ、市内ではこの小麦を使ったパンやスイーツ、麺類などを出すお店がある。
小麦粉も売っているけれど、今回は落合川を見ながら食べたいので、スイーツを買った。食べてみると確かに美味しい。甘いのだ。それはスイーツだから当たり前なのだけれど、そこに幻感があった。私の心にしっかりと柳久保小麦は根を張った。