特集 2020年12月25日

年越し!ザ・ワールド

年末年始は帰省したり家族で過ごすことが多いので、海外の大晦日ってあまり経験する事がないような気がする。

仮に海外にいたとしても、地元の家庭の行事を体験することはなかなか難しい。意外と知らない世界各国の大晦日の過ごし方について、友人たちに聞いてみた。

1986年東京生まれ。ベルリン在住のイラストレーター兼日英翻訳者。サウジアラビアに住んでいたことがある。好きなものは米と言語。

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からし入りドーナツを食べるベルリナー

ベルリンの大晦日の主役は、何と言っても花火や爆竹だ。ネットで「ベルリンの大晦日」と検索すると、個人が打ち上げるロケット花火や爆竹で、街が戦場と化す恐ろしさが語られている(実際に恐ろしい)。

だが、今回はベルリンのもう一つの大晦日名物である「ファンクーヘン」に注目したいと思う。

ファンクーヘンとは穴の空いていないドーナツであり、中にはジャムやクリームなどが入っている。ベルリンでは年越しドーナツとして大晦日に食べる風習がある。ベルリン出身の友人であるフレッドに話を聞いた。

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ほりべ「ベルリン民にとって、大晦日と言えばやっぱりファンクーヘンなの?」

フレッド「大晦日にファンクーヘンは欠かせないよ。大晦日を実家で過ごしてた頃は、毎年パン屋で30個ぐらい事前予約して買ってたかな。」

ほりべ「中には何が入ってるの?」

フレッド「プラムジャムとかアイヤーリキュール(卵黄ベースの甘いリキュール)風味のクリームが定番かな。親戚にいたずら好きなおじさんがいてね、いつもマスタード入りのドーナツを一つだけ混ぜてたな。」

ほりべ「うげ!そんなの売ってるの?」

フレッド「そう!特別に頼むと裏から出してくれるんだって。おがくず入りのドーナツを作ってるパン屋もあったらしいよ。」

ほりべ「いらない裏メニュー!」

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最近ではマスタード入りファンクーヘンを売るパン屋は減ってしまったらしく、おじさんはクリーム絞り機を使って自力でマスタード入りドーナツを作るようになったそう。ベルリンの年越しドーナツ文化も変わりつつあるようだ。

観光客が寝ている間にスキーをするスイス人

さて、隣の国スイスではどのような大晦日を過ごすのか。スイス出身のイラストレーター、イブに地元での過ごし方を聞いた。

イブの実家のベルン州は、スキーやウィンタースポーツを楽しみに世界中から観光客が訪れる場所である。実家から車で30分ほどのところにスキー場があるそうだ。

繁忙期はスキー場が観光客でごった返すため、地元民はなかなかスキーをする気にならないのだそう。そんなハイシーズン中、スイス人が唯一スキーをしに出かけるのが、元旦なのだとか。

イブ「スイス人は大晦日のお祝いは早めに切り上げて、元旦は早起きしてスキーに行くんだ。観光客は大体明け方まで飲んでるから、彼らが二日酔いでぐったりしている間はスキー場が空いてて最高なんだ。」

ほりべ「みんなここぞとばかりに早寝をするんだね。」

イブ「そう、年が明けるのも待たずに寝ちゃう人もいるよ。」

欧州の大晦日は明け方までお祝いが続くイメージが強かったので、スイス人が早寝をするのは意外だった。が、実はこれはスイスだけではなく、日本でも同じような行動が見られた。

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スイスも岐阜も、人が少なそうな元旦の早朝を狙ってスキーにいく地元民が多いようだ。

イタリアでは赤い下着がよく売れる

イタリアでは、地域や家庭によって大晦日の過ごし方は様々だそう。前の職場の同僚である、イタリア人二人に話を聞いた。

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フェデ1「うちでは12時を回ったタイミングでレンズ豆を一口食べるよ。金運が上がるんだって。」

ほりべ「一口でいいの?」

フェデ1「いや、他に食べるものが多すぎて一口しか入んないんだよ。」

ほりべ「確かにイタリアの大晦日のご馳走、半端なさそう。他に何かある?」

フェデ1「昔、友達のお母さんが窓からお皿を投げてたな。」

ほりべ「え、窓から?めちゃくちゃ危なくない?」

フェデ1「新しい年を迎えるために古いものを捨てる、っていうことらしいけど。」

ほりべ「日本の豆まきみたいなもんなのかな……」

フェデ2「あと新年の運気をアップさせるために、赤い下着を履いたりするよね。」

フェデ1「私も高校の頃やってた!」

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スーツケースで近所を歩き回るコロンビア人

南米ではどのような祝い方があるのだろうか。大学時代の友人、スエにコロンビアの大晦日について聞いた。

スエ「コロンビアでは今年も沢山旅行ができますようにって、12時になったらスーツケースを持って外へ出て、近所を歩き回るよ。」

ほりべ「面白すぎる!じゃあ12時に外に出ると街中にスーツケースをガラガラ引きながら歩いてる人が大勢いるってこと?」

スエ「そうそう!」

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ほりべ「スーツケースは空でもいいの?」

スエ「いや、ちゃんと中身も詰めなくちゃだめだよ。」

ほりべ「意外とシビアなんだね!」

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ちなみに、コロンビアでは黄色い下着を履くと新年の運勢が良くなるそう。色は違っても、下着に願いを込めるのはイタリアと同じなようだ。

お金をばらまくフィリピンのおばあちゃん

友人のパトリシアはアメリカ人だが、幼少時代を生まれ故郷のフィリピンで過ごしたそうだ。

毎年、親戚一同がおばあちゃんの家に集まって大晦日を祝うのだが、毎年恒例のちょっと変わった風習があるそうだ。

パトリシア「12時を過ぎるとおばあちゃんが小銭が詰まった大袋を持って庭に出てきて、小銭を庭中に投げまくって、それをみんながわーって一斉に拾い集めるの。」

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ほりべ「すごい!セルフお年玉だ!」

パトリシア「投げるのは1ペソ硬貨とか5ペソ硬貨で、大きいから当たるとすごく痛いんだけど、みんな夢中で拾ってたな。あとでいくら拾えたか数えるのが楽しみだった。」

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ほりべ「参加するのは子供だけ?」

パトリシア「いや、大人も参加するよ。20人ぐらいが一斉にお金にたかるもんだから、そりゃもうてんやわんやだよ。わざと子供たちの邪魔をするのを楽しんでたおじさんもいたな。」

ほりべ「親戚のおじさんあるある。これって、フィリピンで良くある大晦日の風習なの?」

パトリシア「いや、多分うちだけだと思う。」

ほりべ「そうなんだ!どうしてこんな習慣ができあがったの?」

パトリシア「おばあちゃんは子供の頃すごく貧しかったんだけど、女手一つで事業を立ち上げて成功したんだって。詳しくは分からないけど、お金への執着心が強かったのかな。いつもワンピースのポケットに札束を入れてるような人だったから……」

パトリシアのおばあちゃんが亡くなってしまった今でも、毎年恒例の小銭投げ会は受け継がれているそうだ。


いつか体験してみたい世界の大晦日

今回は世界各国の友人たちから沢山のエピソードを聞かせてもらった。いたずら好きな親戚のおじさん、ラッキーカラーの下着、雪国あるあるなど、文化を超えて共通する要素も多くてとても面白かった。

詳しく紹介できなかったが、他にもこんな風習があるそう。

・願い事を書いた紙を燃やし、灰をシャンパンに入れて飲む(ラトビアなど旧ソ連の国多数)
・トルコではテレビでベリーダンスショーを見る
・スペインでは12時にぶどうを12粒食べる
・小さな鉛の塊を溶かし、出来上がった形で新年の運勢を占う(ドイツ語圏、ラトビア、その他多数)

ベルリンでは、今年はロックダウンで大晦日の個人花火の販売が禁止されるそうだ。いつもとは違って静かな大晦日になるかもしれないが、年越しそばと年越しドーナツを食べながらひっそりと過ごそうと思う。

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