とん蝶を称えながら飲む会
そのような流れでカラオケの部屋を予約して、私はその日の昼頃に今日食べるためのとん蝶を買い集めることにした。再び阪神百貨店梅田本店に来た。
この日も限定の「金ごま入り枝豆とん蝶」が売られていたようだが、割と早く行ったつもりが、もう売り切れていた。すごい人気!大阪の人がどれだけとん蝶を愛しているかが伝わるだろうか。
私はベーシックなとん蝶を人数分と、他の味をいくつか買うことにした。その日、ちょうど用事があったのでそのまま大阪・なんばの「大阪高島屋」の地下にも寄ってみることにした。すると、「味百選」という、やはり全国のうまいものを集めたようなコーナーで、「神宗とん蝶 細切り梅昆布入り」というものが売られているのを見つけ、買うことができた。
これは大阪の老舗佃煮店「神宗」と「絹笠」がコラボして生まれた商品で、大阪高島屋でしか販売されていないらしい。そういうのがちらほらあるから目が離せないぜ、とん蝶。
とにかく、これで今日の準備は整った。あとは夜を待つのみ。
私は少し早く集合場所近くについてしまい、デパ地下の飲酒可能なイートインスペースでビールを飲んでいた。そこは地下街で売られているものを買って食べながら飲んでいい場で(ここにとん蝶があれば最高なのだが)、私の座った場所のすぐ近くでは、窯で焼いたピザが売られていた。
焼き上がって運ばれていくピザを眺めながらふと、「とん蝶とピザって、ちょうど対極にある食べ物なのでは?」と思った。ピザに魅かれるが、これから自分はとん蝶を食べるのだ。お腹をできるだけ減らしておきたい。我慢。
やっと時間となり、ビルのカラオケ店の一室にみんなで集まった。テーブルの上に、買ってきたとん蝶を並べる。
私はこの日のために自慢したいグッズを一つ持ってきていて、それが「とん蝶巾着」である。
これもまた阪神百貨店梅田本店で、巾着に入ったとん蝶が期間限定で売られていたことがあって、その時に……は買うことができず、後日、巾着だけをメルカリで購入したものであった。結構高かった。
巾着の裏側には、そこに入っていたとん蝶の消費期限などを示すシールがそのまま貼られていて、私はもったいなくてこれを未だに剥がすことができない。ニューエラの帽子のシールみたいな。
で、それを私が自慢したら、「ああ、それ持ってきましたか?僕は2種類持ってます」と見せてきた山琴さんが今日の参加メンバーの一人である。
そしてもう一人が、東京出身で、私同様、ここ数年の間にとん蝶を知ったというライターの橋尾日登美さん。
さらに、新幹線で東京に行く際など、とん蝶をよく駅弁がわりに食べているという今野ぽたさん。
以上のメンバーに集まってもらって、とん蝶を食べながら飲んでいくことにする。乾杯もそこそこに、まずはとん蝶を食べよう。
――いただきます。うん、うん。うまい。そしてビールにも合うなー!
橋尾「うん、やっぱり美味しいですね。塩加減も絶妙。昆布も大豆も、しっかり味がするんですよね」
山琴「豆とか昆布の入り方がランダムでしょう。これはあえてやってるんでしょうね。梅干しに到達するのが楽しみなんですけど、梅干しが苦手な人も中にはいるでしょう?でもこれがとん蝶の顔というか、梅干しが入ってる側が表じゃないですか。こっちが顔」
――ははは。顔がこっちなのか。それは考えたことがなかったです。みなさん、とん蝶ってどんな時に食べますか?私は新幹線で食べるのが一番多いかな。
橋尾「おにぎりのように食べるにしてはちょっと量が多いじゃないですか」
山琴「それはありますよね。僕は限定ものが出てそれが買えたら晩酌の時に食べることが多いです。だから箸でちょっとずつつまむんですよ」
――なるほど!箸で食べる方がちょっとずつのおつまみ感が増すんだ。
今野「僕は新幹線が多いんです。ビールと一緒に」
――旅情を掻き立てるようなところもありますもんね
橋尾「私は新幹線でとん蝶を選べなくて、っていうのも、いつも『カルネ』を選んじゃうから」
――カルネがまた旨いんだよなー!わかります。そもそも駅弁ってライバルが多すぎますよね。
山琴「いざ、とん蝶を買おうと思ったら売り切れて棚が空っぽだったり、いつでも買えるわけではないんでね」
――当日が消費期限だし、そこら辺の少しハードルが高い感じはありますよね。お土産にしたくても、その日のうちに食べられる人にしか渡せない。
橋尾「初めて食べるまではこれがこういうものだというのも想像できなかったですよ。中身も見えないし、名前もよくわからないし」
――ははは。「とん蝶」って、名前の中に説明要素がないですもんね。
今野「こういう食べ物のジャンルで『ちまき』もあるじゃないですか。比べてみたら面白いかと思って、買ってきたので食べてみませんか?」
――えー!ありがとうございます。食べてみよう。うわー!味が強い!
橋尾「本当だー!全然違いますね」
山琴「これは、それこそ、お酒のアテですね」
――塩加減も、あと油の感じも、強くて。中華料理的なおつまみっていう感じですね。これを食べると、とん蝶の存在感が逆に際立つかも。
橋尾「このちまきにはビールっていう感じですけど、とん蝶ってビールなんですかね。何に合うんだろう」
――レモンチューハイとかではないのか。まあ合わないこともないと思うけど、とん蝶の繊細な味には……日本酒ですか?
山琴「冬場にお燗を合わせたらいいかもしれないですね」
――よさそう!あとはお茶ハイとかね。緑茶ハイとかなら。
山琴「夜遅くなって、ちょっとパサパサになったとん蝶をつまんでいると、お酒を欲しますよ」
橋尾「インスタグラムで見たんですけど、とん蝶って毎日、朝の5時に炊いて、それからあちこちに直送してるんですって」
――そういうものだから、ほとんど大阪にしか出回っていないわけですね。一回、翌日に食べたことがあったんですけど、本当に食感が別もののようになってしまって。
山琴「でしょうね。別に悪くなるとかでもないんでしょうけど、このもちもちした感じは失われてしまう」
――とん蝶一個とちまきでもうお腹いっぱいですが、他の味も食べてみましょうか。みんなで少しずつ分けて。今日は買わなかったんですけど、今野ぽたさんは「七味とん蝶」がお好きだとか?
今野「好きですね。見た目はそんなに変わらないです。七味も辛くはなくて、香りがしていいんですよ」
山琴「僕は最近だと、ナオさんが売り切れていて買えなかったと言ってた『枝豆とん蝶』も食べました」
――おお!どうでしたか?
山琴「最初にパッと中身を出した時は、表面にそんなに枝豆がなくて『あれ』と思ったら、中の方にたくさん入ってました。そこら辺もやっぱりランダムなので」


