隠れた名作「バグズ・ライフ」の水の表現
まず「バグズ・ライフ」についてちょっと説明させてほしい。
虫たちの世界が舞台で、主人公はフリックという発明家のアリ。
フリックの属するコロニーでは横暴なバッタたちに食料を搾取されており、それに立ち向かうためにあれこれする物語だ。
虫たちの世界ということだけあって、普段私たちにとって他愛のないものもダイナミックに描かれている。落ち葉や鳥、タンポポの綿。これらがアリたちにとって脅威にもなったり、移動手段になったりする。
その中でも興味深いのが水の表現だ。
虫たちが酒場でお酒を頼むとプリッとした水滴が渡される。グラスなしに水滴を掴み、チューチュー吸って飲酒するのだ。
発明家のフリックはくるくるに巻いた葉っぱに水滴を押し込んで望遠鏡として使う。子供だった筆者にはこれがとてつもなくかっこいいものに見えた。
どうして私はアリじゃないんだろう。こんなでかい人間に生まれたばかりに水を掴むことができないなんて。と当時は本当に人間であることを悲観していた。あとリトルマーメイドを観て人魚に生まれなかったことも悔やんだりもした。
でも今になって思う。人間の知能を使えば、頑張ったらこの水望遠鏡はつくれるんじゃないか、と。
水を持てないならゼリーにしてしまえばいいじゃない
以前、DPZでは馬場さんが水のゼリーについて紹介している。
記事によるとアガーというやつを手に入れたらできるらしい。
これと、
この二つで水滴っぽいゼリーを作る。それを葉っぱでくるむ。
この3つがあれば20年来の夢が叶う。
葉っぱ、くるくる。ゼリー、ぱこ。
イメトレは完璧。作っていこう。
両面テープを葉っぱに貼るとはがれやすい
まずは葉っぱの筒を作る。
注文した笹の葉が思ったより小さく、3枚くらい重ねることに。
重ねるだけだとすぐバラバラになってしまうので両面テープを貼る。
笹の葉は食べるわけじゃないので文具を使ったことを許してほしい。
30年近く生きてきて知った新事実なのだが、葉っぱに両面テープを貼ると結構はがれやすい。表のつるつるした面に、繊維方向で貼ると特に。
筒ができた今、次に必要なのは「水滴」となる水ゼリー。
調理レシピは購入したアガーのパッケージ記載のものに準じた。
手順がシンプルだし、透明だし、なんだろう、「料理」感がない。
でもかまわない。私は今「水滴」を作っているのだから。
ここでようやく、いざ合体の瞬間だ。
作中ではフリックは水滴を手に持って上から葉っぱを被せていたので、その通りにしたい。
バグズ・ライフを知らない人にはただ工作をしているだけに見えるかもしれませんが、今、私は信じられないほど感動しています。
フリックが、ドットが、見張り番のアリたちが持っていたあの水望遠鏡を、作り出してしまった。
こんなかわいいものを「アリが遠くを見る」という手段として考えたピクサーの人が愛おしくてたまらない。
人間にとっては「機能性<かわいい」
もちろん、実際に望遠鏡として機能するか確認することも忘れない。
想像通りではある。アリにとってはうまいこと大きく見えたりするのかもしれないけど、人間の私にとっては視界があまりにも水の中。
全然見えない。でもかわいいし楽しいからオッケーです。
食べてもちゃんとおいしい
望遠鏡としての機能性は全くない、ということが判明したが、スイーツとしてはちゃんと仕事をしてくれる。
全くクセのないわらびもちみたいでおいしい。
かわいくて、楽しくて、おいしい。
えらいな、水ゼリーは。大満足です。
フリック、私はあなたに憧れて人間界で食べられる望遠鏡を発明したよ。いつか食べてほしいな。楽しみをありがとう。