手癖の字の旨み
殴り書きしてある他人の名前を見るのが好きだ。
目から鱗の略字や、驚きの書き順、『自分の名前だから』という遠慮のなさから生まれる大胆な筆遣い。たった数文字に、あまりにも魅力が詰まりすぎている。
特に、手癖で早書きする時、その味わいが顕著に現れると思う。
みなさん今一度思い出してみてほしい。例えば、自分が宅配便を受け取るときのサインのこととか。どうだろう。かなり独自性の強い字を書いているはずだ。わたしはそういうのがもっと見たい。
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腕の見せ所
そんなことを考えていたある日、ちょうどDPZライターたちが集う機会があった。本名で活動しているみなさんに協力してもらうことにした。
まずはDPZライターの窪田さんに書いてもらう。
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この企画のトップバッターにふさわしい見事な走り書き。一連の様子を見ていたギャラリーも思わず破顔。「読めない」「そういう絵みたい」「『江田』ですか?」などの声が飛び交った。
比較すると、『窪』の崩し方が特徴的。窪田さんいわく、「『窪』の穴冠は書いてません」とのこと。そんなのありなんだ。さすが窪田歴三十余年。非・窪田からは想像できない、大胆な省略である。
「『川』の字の1画目と2画目が短いのは、幼少期に母がこう書いていたのを見てマネしたんです」と石川さん。たしかに苗字の略し方って親の影響が出やすいかも。

そして、注目すべきは『樹』の書き方である。勢いがすごい。特に『樹』の『寸』の部分が反転したBになってるのがいい。
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珍しい苗字だし、『園』の略し方もパワフルだが、不思議とちゃんと『文園』と読める。文園さんが言うには、くにがまえを書くと中身は適当でも大体『園』だと通じるらしい。そうか、部首から全体像を推測させるという手があるのか。
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くにがまえの中のウネウネした部分も、一見無秩序に書いているように見えて、毎回安定してこの形とのこと。
やはり、窪田さんの『窪』や、石川(大樹)さんの『樹』同様、画数の多い字に技が出る。

