電車っていいね、グッドバイブレーション
大阪への18きっぷ旅行は今回が初めてではない。学生時代、毎年恒例の部活の親善大会が3校持ち回りで行われていて、3度ほど関西に夜行で移動した。
私事で恐縮だが、当時私は社交ダンス部に入っていた。夜行に乗るため夕方のうちから並ぶので、無聊を慰める為にみんなでゲームをやり、負けた者は向かいのホームに行き一人で社交ダンスを踊らされた。本っ当にこっ恥ずかしかった。それも今では良い思い出だ。
しかし眠い。眠いが、車窓の景色についつい見入ってしまい眠ることができない。肉体のスイッチだけ切り、目だけ開けて体を休ませることができる動物のつもりになり、眠気をごまかす。
真鶴あたりで車窓から海が見え、朝日が輝いている。今日はいい天気になりそうだ。もっとも、あの太陽が大阪につくころは私の敵になるだろうけども。
沼津で男子中学生達が近くに席を占め、何やら話すのが聞こえてくる。
「あと読書感想文だけだー」
そうか、まだ夏休みかちくしょういいなー。こんな早朝にボストンバッグ持って、部活の練習だろうか。なんとなく防具の匂いがする。剣道部だろうか。
「休みよりさー、普通に学校あるほうがいいんだけど俺」
うん、8月末だし、そろそろ学校恋しくなるころか。
浜松から乗り、車内を写真に撮っていると隣から
「席替わりましょうか?窓際がいいでしょ、写真撮るなら」
と声がかかる。振り向くと、藤沢から一緒の電車に乗っていた見覚えのあるおじさん。
「また一緒になりましたねー」
聞けばこの方、18きっぷを数十年にわたり愛用している玄人さんだった。今日はこのまま広島まで行き一泊し、明日は徳島で同窓会があるので出席してまた18きっぷで帰ってくるとのこと。
「行程を組むのが楽しいんですよね。いろんな景色もじっくり見れるしね。」
最近中高年の間で18きっぷの人気が高いという記事を読んだ。パズルのような行程を時刻表とにらめっこしながら組んでいき、それをひとつひとつこなしていく楽しみというか。それ、わかります。子供のころから、そういうこと、やっぱり楽しいんですよね。
遠くの町に旅行しても、あまり「遠いところにいる」という実感というのはなかなかわいてこないものだ。地図の上のあそこに今いるんだ、いるんだよなあと思おうとしても、とっかかりがなく、いつも奇妙に思う。行き先をダーツで決めてみたら少しは実感わくだろうか。全然関係ないか。