大阪の家庭には一家に一台たこ焼き器があることは周知の事実。大阪では昔から定期的に家庭でたこパ(たこ焼きパーティー)が開催される。
たいてい、一家の大黒柱であるお父さんが腕を振るい、粉の調合から焼き上げまですべてを担う。
そしてお父さんは必ず「会社辞めてたこ焼き屋やろうかな⋯」と呟く。
それが大阪のどの家庭でも見られる幸福なワンシーンなのだ。
6月28日はうちらの父、恭治の命日。七回忌であった。
お父さん=たこ焼き
多少強引な気もするが、うちら姉妹は恭治を偲び、七回忌たこパを開催することにした。
たこパをしましょう
まずはスーパーで材料の調達だ。
たこ焼き粉、だしの素、卵、ネギ、紅しょうが、揚げ玉、青海苔、かつお節、たこ焼きソース、マヨネーズ。
そして主役のたこも忘れてはならない。
あと、たこと同じくらい重要なもの、それはたこ焼き器だ。
先ほども触れたが、大阪では各家庭に一台たこ焼き器がある。妹は一人暮らしなのだが、ちゃんと持っている。
妹のように手軽にコンセントに差して使う電気プレートタイプを使う家庭は多い。これで充分美味しいたこ焼きが焼ける。
しかし、姉の家では違う。「もっと本格的な本物のたこ焼きを!」と、こだわりぬいた家庭ではガス火タイプ一択だ。
今回使用するのは当然、姉が持参した自慢のガス火タイプのたこ焼き器だ。
姉「本当に美味いたこ焼きを作るための決め手になるのは、火力。そうなるとやはり電気よりもガス火だ。大阪人がこだわる、外はカリッ中はトロッのたこ焼きを焼くには、ガス火しかないのだあぁぁ!」
と、御託はこれくらいにして。じゃ、作りましょうか。
調理はたこ焼きに命をかける姉がほぼ担当した。
具の準備ができたら次は生地作り。大きいボウルがなかったので鍋で作ってます。
ここで大事なことを申し上げておく。皆さんよく聞いて。たこ焼きを愛する大阪人にとって一番忌み嫌うもの、それは「硬めのたこ焼き」だ。
大阪人に「たこ焼きが好きなんでしょう」と無闇にたこ焼きを振る舞ってはいけない。もしもそのたこ焼きが硬めだった場合、「なんやこれ、野球のボールやないか! 投げたろか!」と烈火のごとく怒りだすだろう。
たこ焼きは野球のボールのように投げられる硬さであってはならない。
外はカリッと中はトロッ
つまり、見た目はボールのように丸いのだが、中がトロトロのほぼ液体であるため、かろうじて手でつかめたとしても投げるまでに中身が飛び出てしまうのだ。そして100%火傷するだろう。
中身がトロトロでアツアツの液体であればあるほど美味いたこ焼きといえる。そのために、生地は「シャバシャバ」であることが推奨される。
水のようにシャバシャバ。これが大阪のたこ焼きの
生地だ。ていうか、液だ。決してホットケーキの生地のようにドロドロであってはならない。
次に専用のじょうろのようなものへ、専用のお玉で移し替える。
じょうろはわかるが、お玉もそれしかだめなのだろうか?
普通のお玉より深く、じょうろのサイズにぴったりなので、移し替える際に引っかかることがないのだそうだ。
スムーズさを求める大阪人。大阪弁でいうと「いらち」だ。
さあ、いよいよ焼いていくでぇ!
まずは鉄板の穴に油を塗っていく。
大阪には当然「たこ焼き器の穴に油を塗るための道具」も売っている。しかし家庭ではお店と違い毎日焼くわけではないので、このようにキッチンペーパーをてるてる坊主のような形にして使おう。使い切りタイプなので衛生的だ。
ほな、たこ焼き専用ピックで丸くしていくでぇ!
焼きながら姉は「たこ焼き屋やろうかな⋯」と呟くことも忘れなかった。
母みさ子の作った皿に盛り付けて、ソース、マヨネーズ、かつお節、青海苔をトッピング。
まずは父にお供え。
恭治「おっ、美味そうやな!」
父も母も喜んでくれているような気がする。
うっまあーーーー!!!
外はカリッと香ばしく、中はアツアツトロトロだ。これぞ大阪の本格的なたこ焼き。本物の味や!
アツアツトロトロのたこ焼きとビール。最高すぎる。最高のご馳走、最高の弔いや。
こうして父の七回忌の夜は更けていくのであった。
⋯と、これだけで終わるわけにはいかない。うちら姉妹の「なにごとにも本気で遊ぶ」というミッションを達成しなければ終われない。


