たけのこの里はそれほどタケノコに似ていない
ビニール袋に入った徳用サイズもあるけれど、私は断然この紙箱派だ。うまく言えないけれど、開封した瞬間の、薄暗くて狭い箱の中で大勢のたけのこの里が「ひしめいている」感じが好きなのだ。
こうしてじっくりと眺めると、思ったほど本物のタケノコに似てないな、というのが正直なところである。
たけのこの里はタケノコの形をしている、というのは、我々日本人に植え付けられた共同幻想なのかもしれない。
スコーンで土台を作る
まずは土台だ。
オリジナルのたけのこの里の、土台の部分はクッキーでできている。
ならば大きな円錐型のクッキーを焼けばいいと考えたが、そうでもないらしい。調べたところによると、大きすぎるクッキーは中が生焼けになりがちなのだそうだ。
これをそのまま大きくするわけにはいかない。人間をそのまま拡大してウルトラマンを作ると自重で足が地面にめり込んでしまうなどという話があるだろう。あれと同じである。
ならば大きくても中まできっちりと焼けてくれるものを土台にすればいい。パン生地だとふわふわしすぎて、これまた上にチョコレートをかぶせたときに自重で崩壊してしまうといったことになりかねない。そこで、スコーンである。
お菓子作りが上手い人いわく、スコーンは雑に作るほど美味しくなるらしい。事実ならたいへんありがたいことなのだが、本当にそんないい加減なことで大丈夫なのだろうか?
「今日は無礼講で!」という言葉を真に受けた人が本当に好き放題に振るまってしまって、翌日呼び出されて謝罪させられるような羽目になりはしないだろうか?
不安になってついつい念入りにかき混ぜてしまった。
雑にとは言うが、実際のところどのくらい雑にしていいものなのか。そこのところをはっきり示してもらわないことには、おちおち雑になることもできない。
オーブンから取り出したスコーンは、ちっとも思った形に焼き上がってくれていなかった。
バターと小麦粉その他を練り合わせただけのものに、こちらの意思を汲み取ってまっすぐに膨らんでくれることを期待した私がバカだったのである。
チョコレートのクリームをかぶせてやる
スコーンの生地といい、なんだか今日は練ってばかりである。
そういえば、ちょうど1年くらい前は牛乳をひたすらかき混ぜながら煮詰めて蘇を作っていたのだった。いつの間にやら季節が一巡していることに驚きつつ、ひたすらかき混ぜる。
10分弱ほどかき混ぜ続けたところで、おはぎの餡子ほどの固さにまとまってきた。
シルエット的には及第点だが、このままではまるで巨大などんぐりのようだ。
なんとかオリジナルと同じように、タケノコの皮の重なりを表現してやらねば。
オリジナルより多少ずんぐりむっくりしているが、ともかくやりとげたのだ。
作っている最中はあまり意識しなかったのだが、でき上がったものを計ってみると高さが18cmあった。中くらいのタケノコくらいのサイズにはなったわけである。
作りたかったものは完成した。1時間以上チョコレートのクリームと格闘した甲斐があったというものだ。
たとえばキノコとタケノコが喧嘩していたとする
こんな大きなのが参戦してきたら、もはや戦う前から勝負はあったというものだ。
大きい。
大きくて、頼もしい。
部屋に置いておくと、ピラミッドグッズと間違えるくらいの存在感がある。
実際に食べ始めると途中で食べ飽きることは間違いないのだが、わかっていてもこの特大サイズのたけのこの里を前にすると自然と笑顔がこぼれてしまう。大きいことは、良いことなのだ。
竹藪にも連れて行ってみた
カロリーを計算して戦々恐々
頼もしいのは見た目の大きさだけではない。
怖いもの見たさで、巨大なたけのこの里のカロリーを計算してみた。
その値は......しめて約3760キロカロリー!うわあ!
参考までに、成人男性が1日に必要とするエネルギーが約2200キロカロリーらしい。頑張ればこれ1本で丸2日食いつなげる計算だ。
市販のたけのこの里に換算すると、約294粒分。漠然と「1000粒分くらいはありそうだ」と予想していたので、こっちは思ったより少ない。チョコレートスナックは食べ過ぎない方がいいだろう。
考えただけで胸やけがするが、作った以上は食べなければならない。さいわい日持ちはする素材である。頑張って消費しようと思う。