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この間友人数名と会ってそれでは乾杯でもしようという時、1人がグラスを持った手を伸ばしつつ、体を反らしてもう片方の手で写真を撮っていた。
グラスを持った手が真ん中に集まった、乾杯の写真になる。そういえばそういう写真素材ってある。あれは鏡があれば1人でも撮れるぞ。
乾杯の写真素材、こういうやつである。
何の集まりでどんな人がいるのか全く分からないのに楽しそうな雰囲気だけは伝わる。
「乾杯」から個人情報を引くと楽しげな雰囲気だけが写真に残るのだ。
そんなことを考えながら洗面台で顔を洗ったりしている時。
鏡と鏡の隙間に手を入れると、お互いを映しあってたくさんの手が現れる。グラスを持って近づけてみた。
家で1人。グラスも空なのに楽しそうだ。なぜかというと乾杯の写真素材みたいだからだろう。
パーティー感のある写真、みたいな写真が撮れたのだ。モノマネのモノマネは楽しい。「ちょ待てよ」とみんなで言っていた飲み会を思い出した。
背景も飲み物もそろって乾杯の写真素材が完成した。すごいぞ、楽しそうだ。
1人だ。あきれるほど1人。会話も席の移動もなかった。
鏡とお酒を持って公園に来た。
三脚にカメラをつけて斜め下に向ける。カメラの正面に鏡が来るように持って、ビンを近づける。
身を焦がすほど1人。こんな俯いた乾杯あるか。この後イスに座り、空を見てぼんやりした。
乾杯の写真素材は1人でも撮れることが分かった。でも本当の乾杯とはかなり雰囲気が違う。
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