アコースティックギターの高いやつとは…!?
最後に4階のアコースティックギター専門店「ハートマンギターズ」にてアコースティックギター。冒頭に書いたとおり僕はクラシックギターをやっている。同じギターの仲間としてここを外すわけにはいかない…!
メーカーは2本ともTAYLORです。今回は先に写真で見ていただきます。
なぜならおんなじすぎて笑えるから
デモ演奏いきましょう。
↑上の写真でいうと左の楽器。見た目一緒なので「左の方」とさせていただきます。
↑こちらは「右の方」とします。
古賀:石川くん分かった!?
石川:うっ、わかんね~~
古賀:今日いちばんわかんないよね。
谷頭:同じキャラですもんね。
古賀:そうそう。同じ顔してる。すごい微細な部分を聴きとらないと。
石川:いっこ気づいたのは、よく見ると中の作りが違うんですよ。
右の方だけ横方向に柱のようなものがある
石川:違うっていうだけでどっちがどっちかわかんないけど。
古賀:ほんとだね。
石川:音は強いていえば右の方が繊細というか端整というか、そんな気がする。裏側見てもいいですか?
秋田:どうぞ。
ヒントにならね~(と思ったが、実は大事な情報が隠れていたことが後でわかります)
古賀:私、ベースの時にここ(ポジションマーク)で当てたからさ。石の大きさ。
おっ、右の方が高そうな雰囲気がある!
広報・林:石じゃなくて貝です(笑)
古賀:ははは、貝か。貝の大きさで右。
石川:僕は音のきれいさで右で。
谷頭:同じくです。
初の全員一致で右の方。正解は…?
左の方:TAYLOR 214ce Rosewood・14万9800円
右の方:TAYLOR 414ce Rosewood V-Class・36万8000円
古賀・谷頭・石川:おー、全員正解(拍手)
店員・秋田さん(以下・秋田):おめでとうございます。まず、この2本は同じブランドでも製造拠点が違うのです。左はメキシコ、右は本国(TAYLORはアメリカのメーカー)で作っています。
もうひとつ大きな違いは、木材です。どちらもローズウッドという高級な木材なんですけど、右はオール単板といって、1枚の板で作ってあります。左は正面は単板ですが、側面と背面はラミネート材(合板)といって、複数の薄い板を貼り合わせた材料で作っています。
古賀:こんなに見た目一緒なのに。
石川:それ自分のギター買うときに調べたんだよなー。でもカタログで見てたから、自分で見分ける方法がわかんなかった。
秋田:あとは後ろから見るとちょっと形が違います。
左手前が「右の方」、真ん中奥が「左の方」。写真だとわかりにくいが、「左の方」は後ろの板が平面ではなく丸みがある
石川:ほんとだ。さっき裏面見たのに気付かなかった!これはなぜですか?
秋田:アコースティックギターって木材が振動して音を作り出すんですけど、ラミネート材って固いので、振動しにくいんです。だから後ろをラウンドさせる(膨らみを作る)ことによって音の響く空間を作り、豊かな響きが得られるようにしているんです。
石川:形状でカバーしてるんだ。
秋田:そうです。じゃあ単板もラウンドさせればいいじゃんって思うけど、単板は割れちゃうからそういう加工ができないんですね。
結果的にはどっちもふくよかないい音が鳴るようになっています。
それからTAYLORの面白いところは、ピックアップが10万の楽器も150万の楽器も同じなんです。
※注:すべて同じというわけではなく一部異なるモデルもあります。
石川:へー!
秋田:楽器に高いお金をかけられない駆け出しのミュージシャンでも、10万円台あればステージでいい音が出せる楽器がで買えてしまうんです。
弾き込んだギターはいい音が鳴る
秋田:高ければいいというわけではないエピソードとして、以前メンテナンスに来ていただいたお客様で、おなじTAYLORのAcademyっていうエントリーモデルのもっと安いギターを5年くらい弾き語りで使ってる方がいたんです。ライブに連れまわしてるからガッチガチに傷ついてて、もうボロッボロなんですよ。……でも、めちゃくちゃいい音がするんです。
古賀:いい話。
秋田:低価格のギターでも、よく弾きこまれているギターは、100万円以上するような高級な楽器の新品と比べても「味わい深くて楽器が鳴っていて... なんかいい…」と感じてしまう時があるんです。
オーディオやイヤフォンのマニアの人って新品を鳴らしっぱなしにしてエージングするじゃないですか。あれと同じで、ギターってトップ板が震えて鳴るので、たくさん弾き込んで振動させると板が柔らかくなっていい音が鳴るようになるんです。
古賀:そうなんだー。シンバルは叩きすぎると割れるって言ってたけど。
秋田:ギターは打撃しないですから(笑)。TAYLORの社長はミュージシャンにボロボロになるまでギターを使ってほしいとよくおっしゃっていて、リペアチームからそういったギターが持ち込まれたと報告するととても喜ばれるそうです。
めちゃくちゃギター密度が濃い部屋で話を聞いてます
石川:お店の立場で、こういう人にはどっちを勧めたいっていうのはありますか?
秋田:ライブでガンガンに弾くような人は、意外に左の合板の方がよかったりします。コンプレッションといって、ちょっと上から叩き潰した感じの音がして、強く弾いても音が暴れないんです。
ハイエンドのギターは弾けば弾くほど鳴るものが多いので、弾き手がしっかりコントロールしないと音が破綻することになります。ライブでガーって弾いて「オーイエー!」ってやりたいときにそんなこと気にしなくていいギターの方がよかったりしますよね。
石川:繊細に弾かなきゃいけないんだ。
秋田:逆にレコーディングで使ったり、家で自分の技術を伸ばしたいよっていう人には右の方がいいんじゃないかと思います。
広報・林:非常に高価なヴィンテージのギターを持ってるような方も、主にレコーディング用にして、ライブでは滅多に使えないって聞きますね。破損とか盗難の危険性もありますし。
秋田:楽器保護の意味でいうと、ステージって照明がすごく暑いんですよ。そこで汗をかくと楽器にダメージが行きます。野外ライブだと紫外線を受けることもあるし、(価格的に)気にせず弾けるギターがおすすめです。もちろん、ハイエンドをボロボロになるまで使い倒すのもかっこよいですけどね。
石川:この合板のギターどんどん欲しくなってきたなー
広報・林:取り置きしておきますよ(笑)
ご案内いただいた秋田さん。ありがとうございました!
安いものも高いものもいいらしい
というわけで4種類の楽器の比較が終わった。
なんとなく「高い=音がいい」「安い=音が悪い」というイメージでいたのだが、どの店員さんもそうではなく「好みで選ぶもの」あるいは「用途で使い分けるもの」と考えているのが面白かった。
とはいえ素人にはそもそも自分の「好み」「用途」自体がわからないのも事実で……その点でも、今回いろんな観点を言葉で説明してもらえたことでだいぶ楽器のことが分かった気がした。
いやー音楽、ほんとにおもしろいですね……。もはや興奮を通り過ぎて、しみじみ浸ってしまうほどの楽しい取材であった。
お知らせ
オライリーから本が出ました。
![書影帯付き.jpg](/application/themes/dpz2018sp/img/loading-min.png)
初心者向けの電子工作本です。電子に限らず工作って「いいもの作るぞ!」と身構えて作ると途中で挫折したり飽きたりしがちなので、「作品作りは雑にやってもいい」というマインドでオリジナル作品を最速で作る/考えるノウハウをまとめました。「無駄づくり」の藤原麻里菜さん、電子工作ユニットのギャル電との共著です!