シンバルの高いやつとは…!?
次は3階「ドラムステーション渋谷」にて、ドラムの聴き比べ。ドラムセット全部くらべると時間がいくらあっても足りないので、今回は違いが分かりやすいシンバル(ライドシンバル)を比較させてもらった。
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左端にあるハイハットと並んで、リズムを刻むために使われることが多い。ツクツクツクツクってリズムを刻むのがハイハット、カーンカーンカーンカーンって派手に刻むのがライドシンバルだそうだ。
さっそくデモ演奏から。メーカーはどちらもPaisteです。
↑見た目から「年輪の方」としましょう
↑「デコボコの方」と呼びます
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谷頭:これは無理だ…
石川:あはは、さっぱりわからん
店員・栫井(かこい)さん(以下、栫井):値段でいうと4倍くらい違います。
古賀:そんなに!?!?
石川:年輪の方が、叩いたあと残る残響に迫力がある気がする。
谷頭:僕はデコボコの方がワッと音に包まれる感じがしました。
古賀:私はデコボコの方が空気をたくさん揺らしている気がして、それが豊かさなのかなと思った。でも年輪の方もソリッドだよ。
谷頭:でも、ベースのときの理論でいくと、余計な振動が無くてソリッドな年輪の方が高いってことはあるかも!?
古賀:うわっ、そうか
石川:僕は年輪の方に決めました。
谷頭:僕もです。
古賀:でも私はデコボコの方を信じる。
正解は…
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デコボコの方…Paiste Formula 602 Modern Essentials Ride 20・6万4680円
正解は、デコボコの方…!
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古賀:ほら!ほら!やっぱこれだよ!
谷頭:感覚を信じればよかった…!
栫井:この2つはまず素材が違います。年輪の方はブロンズが多いので色が赤っぽい。デコボコの方はスズが多くて、きらびやかな音がすると言われています。
製造法も違います。年輪の方は、輪の模様と別に水玉のようなへこみがあるのがわかりますか?
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石川:ありますね
栫井:ハンマリングといって、ハンマーで叩いてわざと雑味を生む作業があるんですね。それがこっちは規則的ですが、デコボコの方はもっと細かくて、わざといびつに…
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栫井:この製品は手作業でハンマリングを行っているんです。そこにコストがかかっています。
古賀:それで音が変わるんですか?
栫井:そうです。年輪の方は、クリアでソリッドなんですね。デコボコの方は雑味がある心地の良い音になりますね。
谷頭:へ~~
石川:ベースの時は雑味がない方が高かったじゃないですか。逆で面白いですね。
栫井:シンバルの場合は、雑味が多いことで叩く位置によって違う音が出るので、音のバリエーションが多様っていうことになるんです。
音楽ジャンルで使うシンバルが違う
栫井:シンバル自体の厚みも違うんですよ。年輪の方は硬くて分厚いんです。音も硬い音が出ます。
デコボコの方は薄くて柔らかいので、ダイナミクスレンジ(大きく鳴らしたときと小さく鳴らしたときのメリハリ)が大きいんです。
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石川:そうすると、高い方が全体に高性能といえますか?
栫井:実は一概にそうは言えないんです。ロックミュージシャンとかヘヴィ・メタルの人は大きくて突き抜けてくる音を出したいので、プロでも年輪の方のタイプを買われることが多いです。逆にデコボコの方は、ドラムをきらびやかに聴かせたい、ジャズとかポップスのドラマーさんが使うことが多い。
古賀:考えたこともなかった!
栫井:正直、単音で聴き比べてもわかりにくいです。でも録音してミックスして音楽としてできあがったときに、違いが見えてきます。
割れることもあるシンバル
栫井:シンバルって、割れるんですよ。
古賀:えっ、消耗品なの!?
栫井:これは値段ではなくて厚みで決まるんですが、分厚いと割れやすいんです。薄いものはたわんで衝撃を逃がすので。
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栫井:こういう違いもあったりします。
石川:すげー。そしてこういうひとつひとつの違いが、ドラムセットでいうとスネアにもあり、ハイハットにもあり……
古賀:やべー!
谷頭:沼、沼。
石川:ひとつひとつ組み合わせて自分の好きなドラムセットを作るんだ。
古賀:いやもう一回も考えたことなかったことばっかりだよ、今日は!
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