ありがとう、辰ちゃん
知ってはいたけれど、食べたことがなかった辰ちゃん漬けを食べた。美味しかった。サイトを見ると辰ちゃん漬けにはまだまだいろいろなバリエーションが確認できる。見つける度に買いたいし、梅宮辰夫さんの人形と写真も撮りたい。子供の頃はなんとも思わなかったけれど、今は撮りたいのだ。憧れなのだ。
辰ちゃん漬けというものがある。梅宮辰夫のこだわりが詰まった漬物だ。平成の初めに誕生し、一時期は観光地に行くと、お土産屋さんの前に梅宮辰夫の等身大と思われる人形が置かれ、その人形があるお店で辰ちゃん漬は売られていた。
ただ最近は見かけなくなった。辰ちゃん漬けの存在は知っているけれど、食べたことがない人も多いのではないだろうか。そこで辰ちゃん漬けを食べたいと思う。初めての辰ちゃん漬けだ。
知っているけれど、食べたことがないものが世の中には存在する。それは値段的に高価なものだったり、なかなか手に入りにくいものだったり、その理由は様々だ。もちろんそこには値段も普通で、手にも入るけれど、なんとなく食べていなものもあるはずだ。
私は30代。観光地で梅宮辰夫の等身大と思われる人形をよく見てきた世代だ。この人形は「辰ちゃん漬け」を売っている証だ。そして、今となっては説明できないのだけれど、辰ちゃん漬けを食べてこなかった。チャンスは数えられないほどあったのに買わなかったのだ。
同世代の知人と話している時に辰ちゃん漬けの話になった。「最近見ないよね、あの人形」と知人が言った。そこで辰ちゃん漬けを思い出したのだ。確かに見ない。そして、辰ちゃん漬けを食べてみたくなった。買いに行かねばとなったのだ。
辰ちゃん漬けのWebサイトには「店舗所在地」というページがある。全体的に売っている店舗は少なく、関東には3店舗、全国でも20店舗ほどしかない。偶然、三重に行く機会があったので、ついでに「二見浦店」に辰ちゃん漬けを買いに出かけた。
売っていなかった。もうかなり前から売っていないと言われた。サイトにあっても売っていない店舗もあるようだ。しかし、私はあきらめなかった。成田の店舗に行くことにした。そのために私はいま飛行機に乗っているのだ。
仕事で熊本に行っており、私は東京に住んでいるので、本当は羽田空港を利用した方が自宅に近いのだけれど、あえて成田空港を利用した。すべては辰ちゃん漬けを買うためだ。成田の店舗では今でも辰ちゃん漬けを売っているのだろうか。
成田山新勝寺の参道を歩く。お土産屋さんを見ると鉄砲漬がよく売られていた。瓜の中をくり抜いて紫蘇の葉を巻いた唐辛子を詰めたものだ。ただいろいろなバリエーションがある。唐辛子ではなくごぼうだったもりする。
いっぽうで、辰ちゃん漬けは総称である。たくあんもあれば、野沢菜もあるし、味噌漬けもある。実は炊き込みご飯の素もある。そして、もう言ってしまうと辰ちゃん漬けの「鉄砲漬」もあるのだ。成田という地域性を考えるとここで売られている辰ちゃん漬けは「鉄砲漬」と予想できる。
関東に3店舗しかない辰ちゃん漬けを売るお店「成田門前店」に到着した。三重の二見浦店まで行って売っていなかった思い出があるので、今回は大丈夫だろうかとドキドキしていた。しかし、あると確信できた。だって梅宮辰夫の人形があるもの。
昔はよく見かけた。また再会できるなんて、という感動があった。人類は二つに分けることができる。辰ちゃん漬けを食べた人と、食べなかった人だ。私は食べた人になりたいのだ。
辰ちゃん漬けを食べたことがないので、美味しいから食べたい、とは書けない。ただ昔から見てきて知っているから食べたいのだ。その一心で成田までやってきたのだ。何度も書くけれど、三重にも行っているのだ。真に夢にまで見た辰ちゃん漬けなのだ。
店内に入ると辰ちゃん漬けがあった。予想通り辰ちゃん漬けの「鉄砲漬」だった。この一種類のみ。本当は辰ちゃん漬けのいろいろなバリエーションを食べたかったけれど、鉄砲漬に出会えただけでも幸せだ。まだ知らぬ味なのにこんなにも食べたいと思ったことはないかもしれない。
店内には梅宮辰夫さんの写真も貼ってあった。漬物を漬ける樽の前に立っている梅宮辰夫さん。人形と同じように赤いエプロンを着けている。美味しい、これは美味しいに決まっているとなぜか確信した。梅宮辰夫さんの写真を見てそう思った。
もう食べることは叶わないと思っていた辰ちゃん漬けを買った。楽しみで仕方ない。箱にも梅宮辰夫さんの写真が切り抜きで使われている。これを辰ちゃん漬けと言わずになんと言えばいいのだろうか。100%の辰ちゃん漬けなのだ。
箱から辰ちゃん漬けを取り出し、お皿に並べる。美味しそうなのがわかる。辰ちゃん漬けには旨味と梅宮辰夫さんの魂が漬け込まれているのだ。エターナルなのだ。
乳酸発酵させたきゅうりに一本一本手作業で穴を空け、その中に下漬けして太さを揃えた山ごぼうを入れているそうだ。その後で醤油にじっくりと漬ける。白米を欲する逸品だ。
食べてみるとわかる。美味しい。とても美味しい。ごぼうのカリカリとした歯応えが癖になり、白米が進む。梅宮辰夫さんにありがとうと言いたい。辰ちゃん漬けを食べてこない人生だったけれど、今後は辰ちゃん漬けを食べた人生を歩むことができる。ただ思うこともある、どこで買えるんですか、他の辰ちゃん漬けは!
知ってはいたけれど、食べたことがなかった辰ちゃん漬けを食べた。美味しかった。サイトを見ると辰ちゃん漬けにはまだまだいろいろなバリエーションが確認できる。見つける度に買いたいし、梅宮辰夫さんの人形と写真も撮りたい。子供の頃はなんとも思わなかったけれど、今は撮りたいのだ。憧れなのだ。
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