彼女たちは車内をネイティブな柄の布で覆ったり、ガーランドを飾ったり、ドリームキャッチャーを吊ったりする。ランタンの灯りで本を読み、挽きたての豆でドリップしたコーヒーを味わったりするのだろう。そして気ままに車を走らせ景色のいい場所に停めて星を眺めながら眠りにつき、朝を迎える。
素敵だ。
妹「車中泊してみたい!」
オシャレ民族のオシャレなバンライフへのあこがれが頂点に達した妹は声高々と叫んだ。
しかし妹は車はおろか、運転免許さえも持っていないポンコツであった。それなのに「車中泊してみたいなあ」とほざく。この厚かましき夢を叶えるためには、通常ならばまずは運転免許を取得するために教習所に通い始めなければならないところだが⋯。
姉「ええよ」
幸い妹には姉がいた。
姉はフォトグラファーである。写真撮影のため早朝に車で家を出ることが多い。たまに夜中に出発することもあるので車中泊も経験済みであった。
姉「滋賀県の植物園に蓮の写真を撮りに行きたいから、ちょうどいいかも」
その植物園はいつもなら朝9時開園なのだが、7月の土日は朝7時開園なのだそうだ。ちょうどいい。夜に出発して、どこかで車中泊。そして朝7時までに現地に着けばよい。
夢は口に出せば叶うという。
あっさりと車中泊したいという夢が叶う運びとなった。しめしめ。
宿泊地に到着
夜に待ち合わせをして姉と合流。
姉の運転で1時間ほど走ると、車中泊するつもりのサービスエリアに着いた。
言い忘れていたが、姉の車は普通車だ。バンライファーが乗るような、いわゆるバンではない。この車に大人が二人で泊まる。無茶苦茶だが、そういうことだ。
そして「宿泊地」とさらっと書いてしまったが、本来サービスエリアはドライバーがトイレなど休憩のため立ち寄る場所であって「車中泊してみたい!」と言って泊まる場所ではない。
規約やマナーを調べてみると仮眠程度は全く問題ないようなので、今回はその範囲にとどめることにした。なるべく長居はせず夜明けには出発するつもりだ。
サービスエリアで遊ぼう
実は我々はサービスエリアも大好き。一度思う存分楽しんでみたかった。
まずはモテナス草津の食堂で晩ごはんだ! キャッキャッ!
サービスエリアではその土地の名物を扱ったものを選ぶのが望ましい、という気がする。なので近江牛の焼き肉とビーフカツの定食をいただく。
近江牛定食は、めちゃくちゃ美味しかった。
食事のあとは売店で販売しているお土産などを見て回った。
草津といっても滋賀県の草津なので温泉はない。それを逆手にとった「温泉ない饅頭」がよく売れているらしく高く積み上げられていた。面白いけど買わずに別の団子を買った。
あと、草津には「おんせんどろぼう」というゆるキャラも存在する。スーツを着たどろぼうで、頭に桶とタオルを乗せている。彼がここの温泉を盗んでしまったんだよ、という意味だろうか。
そんなに「ない」ものばかりを強調しなくても。滋賀の草津にもいいものがたくさんあるじゃないか、と励ましたくなった。
ひととおりモテナス草津をパトロールしたあとは、隣に併設しているセブンイレブンでコーヒーを買い、団子を食べることにした。
時間はたっぷりある。いつもなら用が済んだらさっさと立ち去ってしまうサービスエリア。誰もが通り過ぎていく場所だ。だが今夜だけは、うちらはとことん向き合うつもりだ。
夜が更けていくにつれてだんだんお客さんの姿も減っていった。土曜日だけどまだ夏休み前ということもあり、停車している車も少なかった。
それでもモテナス草津はこうこうと灯りを照らし営業を続ける。何時でも「温泉ない饅頭」を買うことができる。ありがたいな。
静まりかえったサービスエリアでのんびり過ごすのも結構楽しかった。しかし、うちらは車中泊という目的があった。忘れてた。車内をホテルに仕立て上げなければ。そろそろ車に戻ろう。
姉がとてもいいものを持ってきてくれた。アウトドア用のマットレスだ。広げるだけで寝心地バツグンに早変わりするという。2個セット。すげー。
5年ほど前に購入し、一度だけ使用して倉庫で眠らせていた代物だ。
座席を倒し、マットを敷くと⋯
さらに、姉がオートバックスで見つけて買っておいた日除けのカーテン。
これを窓に装着すると、日除けだけではなく車内の灯りが外にもれることもないし、外から中を覗かれることも防げる。
車内がカプセルホテルのようになった。ちょっとワクワクしますね。
姉「寝心地どう?」
妹「ちょっと段差は気になるけど寝れる寝れる」
しかし後で知ったのだが、このマットレスは広げるだけではなく、バルブを開くことで空気が入るタイプのマットレスだった。姉は長く眠らせていたため、すっかり使い方を忘れていたようだ。
深夜のサービスエリア、はじめての車中泊というシチュエーションに興奮していたので、我々はいつまでも喋りまくってはしゃいでいた。そしてはしゃぎすぎたのか仕舞いにはケンカをする始末。
いいかげんそろそろ眠りにつくとしましょう。おやすみなさい。


