今までどうしていたんだ
またがっているかどうか、という目で寿司を見ると、軍艦にちょっと載ったネギが全てまたがっているのに気がついた。
無意識に避けているものに気が付いた。またがって載るものがある寿司である。あれはどうやって食べたらいいのだろうか。
回転寿司で、2貫にまたがってトッピングが載っている寿司がある。刻んだタマネギや白髪ネギがもりっと載っているあれだ。
このタイプの寿司を、無意識に避けている自分に気が付いた。興味はあるのに何となく後回しになって結局頼まない。
なぜなのか自分に問いただしたところ、どう食べたらいいか分からないからだと思い至った。
多くの寿司は、2貫ずつ皿に載っていて、それを1貫ずつ食べる。しかしその寿司の上にまたがって載っているものがあったらどうしたらいい。
妻に聞いたら「載ってるやつをさ、分けたらいいじゃん。『そっそっ』って」と言う。きっとそれが正解なのだろう。メニューを開発した人もそれでいい、と言ってくれる。「好きなように食べたらいいですよ」とも言ってくれそう。
しかしその「好きなように」がまだ分からないのだ。避けている場合ではない。自分の好きな食べ方を見つけなければ。
席に着いてタッチパネルでメニューを見ると、タマネギやネギがまたがって載っている寿司がいくつかある。
「何となく分からない」と思って避けていたものだ。
その中から、刻んだタマネギがもりっと載ったサーモンマヨアボカドというネタを頼んだ。「サーモンマヨアボカド」だ。タマネギのインパクトがすごいのに名前に入っていない。
まずはそのまま食べてみよう。箸で、わしっと寿司をつかんでみる。
ここで静止すると「こぼしちゃった…」みたいな気持ちになるので、「気にしていません。そういうものなので」という顔で、箸に残ったタマネギと寿司を口に運ぶ。
おいしい。一口の中に色んな味と食感がある。それぞれがお互いを補い合って五角形のパラメータを埋めているようだった。
ただ、タマネギがもう少し多くてもいい。落としたからだよな。
タマネギが多くなった。食感も味も、1貫目との違いが出ておもしろい。
こうやって楽しむものなのかもしれない。「こぼしたらどうしよう」と心配していたが、逆にこぼしてから本来の良さが出るものなのだ。
2貫にまたがったタマネギの食べ方
そのまま食べる
おいしさ ★★★★☆
手軽さ ★★★★★
見た目 ★★☆☆☆
問題なくおいしく食べられる。ただ、タマネギが落ちた時に「本当にこれでいいのか?」と思ってしまう
ここから、工夫を加えてサーモンマヨアボカドを食べてみる。
まずは載っているタマネギを1貫ずつに分ける。
ギュッとひとかたまりになったタマネギをほぐして、サーモン1貫に載せ直した。
土台が小さくなるし、2貫の時のようなくぼみがないので、うまく載らない。
かなり手間取ったが、食べると味が安定していておいしい。2貫とも同じようにおいしいというのは安心できる。
そういった安心はあるが、苦労した甲斐がある、というほどでもない。苦労の方が大きい。
2貫にまたがったタマネギの食べ方
分けて載せ直す
おいしさ ★★★★☆
手軽さ ★☆☆☆☆
見た目 ★★☆☆☆
おいしい上に安定している良さがあるが、手間がかかりすぎる。無理に載せずに、分けて横に添える、という程度でもよかった。
次は片方に全部載せた。
ひとかたまりになっているタマネギをギュッと寄せるだけなので、2つに分けるよりはるかにやりやすい。
この接しやすさに対して味はかなりエッヂの効いたものになった。
タマネギがない方はどこまでもまったりしているし、ある方は辛味が強い。コントラストを楽しむという意味では良さそう。全く別の寿司を2貫食べたようだった。
2貫にまたがったタマネギの食べ方
片方に全部載せる
おいしさ ★★★☆☆
手軽さ ★★★☆☆
見た目 ★★★☆☆
全然違う味の2貫が出来上がっておもしろい。極端なものを食べたい時にやろう。
タマネギを基準に考えるのはどうだろう。2つにまたがって載っているのではなく、土台が別れている大きな1つの寿司なのだ。
シャリ、サーモン、タマネギの味が今までの2倍口に広がって分かりやすくうまい。特にサーモンのねっとりした旨みが顔中に広がって眼球が飛び出そうになる。
「一口でたくさん食べられてうまい」に「タマネギをきれいに食べられて爽快でうまい」が加わって特別にうまい。これは良い。
2貫にまたがったタマネギの食べ方
一口で2貫食べる
おいしさ ★★★★★
手軽さ ★★★★★
見た目 ★★★★★
楽だしタマネギも落ちないので、口に入るのであればなるべくこうしていきたい。「シャリ小さめ」がオーダーできない場合は食べられない。
最後の工夫。タマネギを降ろして横に添える。ガリみたいに寿司を食べながらつまんだらいい。
すごく安心して食べられる。おいしい。
今までタマネギが落ちないようにすることにいくらか神経を割いていたけど、敢えて落としてしまえば、その分も使って全力で寿司を楽しめる。
タマネギは、寿司と一緒に食べる時と違う味がした。完全に爽やかさに振り切っていて分かりやすい。コロッケの横の千切りキャベツのような潔さがあった。脇役であっても、役割に特化できる存在は強い。
2貫にまたがったタマネギの食べ方
横に添える
おいしさ ★★★★☆
手軽さ ★★★★☆
見た目 ★★★★★★
「タマネギをどう載せるか」という戦いの土俵から降りたことでホッとするおいしさを手に入れた。星は5つが満点だけど、見た目が特にかわいので6つになりました。
5種類の食べ方で2貫にまたがるタマネギと向き合った。
分かりやすく「おいしい!」と思えたのは一口で2貫食べる方法だった。
タマネギを降ろしてしまうのも安心できるし、気が向いたらタマネギを載せ直すという複合技もできる。
「何となく分からない」という手の付けようのない理解度だったところから、「分からないところを質問できる」ぐらいのレベルにはなったと思う。
頼める寿司ネタが増えた。タマネギがまたがる寿司、白髪ネギがまたがる寿司、大根降ろしがまたがったものもある。きっとこれから楽しいだろう。
またがっているかどうか、という目で寿司を見ると、軍艦にちょっと載ったネギが全てまたがっているのに気がついた。
| ▽デイリーポータルZトップへ | ||
| ▲デイリーポータルZトップへ |