これからますます気になると思います
見たことはあるけど名前は知らない、そのくらいの存在だったランチャームが、橋場さんの話を聞いて急に気になるようになってしまった。これからお寿司やお弁当を買うときにはランチャームが入っているものを買ってしまいそうです。
ちなみに他社製品との見分け方は尻尾に旭マークがあるかないか、らしいので今度お弁当買ったら確かめてみてください。
取材協力:旭創業
お弁当を買うと付いてくる可愛い魚のしょうゆ入れ。
あれに名前があるって知ってましたか?
その名も「ランチャーム」。どうしてランチャームっていうのか、作っている会社で聞いてきました。
みなさんこれ、見たことありますよね。
お弁当に入っている魚の形をしたしょうゆ入れである。誰もが一度は見たことあるけど名前は知らない、そんな存在なんじゃないか。
今日はこのしょうゆ入れを作っている会社「旭創業」さんへやってきた。お話を聞かせてくれるのは社長室の橋場さんである。
さっそく目の前に並べられたしょうゆ入れの数々に、思わず声がでた。
ーーお弁当に入ってない状態で見るのは初めてかもしれないんですが、こうやって改めて見ると可愛いですね。もちろん魚型とボトル型、どっちも見たことあります。
橋場「可愛いですよね。うちの創業者の発案で、しょうゆをプラの容器に入れて販売しはじめたのがランチャームの始まりと言われています。最初から魚の形だったわけではないらしいんですよ。」
僕は学生の頃にコンビニでアルバイトをしていたので、これを見るとお弁当から取り出してレンチンしていたのを思い出す。
ーー忘れてそのままレンジに入れると破裂しちゃうんですよね。
「当時はよくそういったお話を聞きました。今は高温でも破裂しにくい素材だったり、お弁当に入れる位置を工夫したりもしています。」
ーーところでさっき橋場さんのおっしゃっていた「ランチャーム」というのは?
「そうですよね、まずそこからご説明しなきゃでしたよね。」
「ランチャームという名前には創業者と二代目の思いが詰まっていまして、ランチをチャーミングに、つまり楽しく美味しく食べてほしい、というところからランチャームになったと聞いています。昭和29年のことなので、もう70年も前の話ですね。」
魚型に限ったことではなく、プラ容器にしょうゆやソースを入れたものに「ランチャーム」という名前を付けて販売を始めたのが、旭創業の創始者だったというわけだ。
それにしても戦後すぐの時代に「ランチをチャーミングに」っていう言葉選びはかなり先進的ではないか。僕なら寿司用魚型しょうゆ入れ、みたいな無粋な名前を付けて国民から忘れ去られてしまいそうである。
ランチャームはお弁当の販売増加にともない、百貨店で取り扱われ始めたことを契機に一気に定着する。
今ではランチャームという名前は知らなくても、その存在自体は誰もが知っている商品となった。
ーーところでどうして魚の形になったんでしょう?
「お寿司をはじめとしたお弁当にいっしょに付けてもらうことが多いからってことで、魚の形にしてみたところ好評で、中でもやっぱり鯛がめでたいだろうってことで、結局この形に落ち着いたみたいなんです。」
めでたいから鯛、なるほど、これのモデルは鯛だったのか。
それにしても魚だけでもこんなに種類があるとは思わなかった。
「小さい方から2ml、2.5ml、3ml、4mlときて一番大きいのが6.5mlです。これはお弁当の中身によって変えているんですが、玉子焼きとか単品に付けるのは小さくて、逆に仕出しとかパーティー用とか、そういうものに入れるのは大きいですね。」
ーー2ml、2.5ml、3mlくらいまでは刻んできてるのに、急に6.5mlっていう特大なのがありますね。
「日本では小さいサイズが主流なんですが、海外だと大きいものが人気なようです。オーストラリアとかヨーロッパとかでもいま日本食が人気で、お寿司なんかに入れてもらってるみたいですね。」
ーーずっと気になってたんですけど、この金の鯛もランチャームなんですか?
「そうです!私もこの金のランチャーム大好きなんです。いいでしょうこれ」
「お祝いの席のお弁当なんかに入れています。通常のものだとどうしても地味なので、ということで、招き猫型とか、他にもいろいろ試行錯誤したようなんですが、その結果、この金のランチャームが生まれました。」
確かに圧倒的めでたさである。そしてこれ、実物を持ってみると通常のランチャームと同じ重さなのだけれど、見た目にずっしりと高級感があるのだ。なぜなんだろう。
「しょうゆを入れた時にきれいな金になるように、素材の色を選んでいますね。」
なるほど、中にしょうゆを入れた時に色が重なって完成するわけだ。だからこんなに重厚感があるのか。
「いまは販売していないんですが、以前は法事とかお悔やみの席でも使えるようにと、銀のランチャームも開発しました。これもしょうゆを入れると重厚感のある銀色になります。」
ーーランチャーム、ざっとどのくらいの数が作られているんですか?
「一種類で日に30万個くらいは製造できるので、他の形を含めるとランチャームだけで一日で100万個くらいですかね。」
すごい。
一日100万個のランチャームがお弁当といっしょにわれわれにしょうゆを届けてくれているのだ。
しかも旭創業では、しょうゆやソースの充填も自社で、つまり容器から中身から充填まで、完全国内生産なのだとか。どうですか、ランチャームを見る目が変わったでしょう。
ーーお会いした時からずっと気になっていたんですが、橋場さんの着ているポロシャツってもしかしてランチャームですか?
「そうです!震災のあとに計画停電があったじゃないですか、あの時に社員もクールビズで!ってことでおそろいのポロシャツを作ったんです。それからなんだか好きでずっと着てますね。」
「わたし含め、社員もとにかくランチャーム好きが多い気がします。これ私の社用携帯なんですけど」
「私自身とにかく金のランチャーム推しで、ストラップもこれ自作なんです。」
ーー橋場さんがこの会社に入ったのはランチャームが好きだったからですか?
「それがですね、じつは入るまで知らなかったんです。もちろんお弁当とかで見たことはあったので、最初は(ああこの会社が作ってるんだ)くらいの感じでした。入社してからどんどん好きになっていった感じですね。」
橋場さんに限らず、社内を見ると社員のランチャーム愛がところどころに見て取れる。
好きな商品を作っている会社に入ってみたらいろいろ見えちゃってお腹いっぱい、みたいな話はありそうな気がするのだけれど、橋場さんみたいに入社してから自社製品を大好きになるパターンもあるのだ。
ランチをチャーミングに、と名付けた創業者の思いが脈々と受け継がれているんだろうなと思いました。
見たことはあるけど名前は知らない、そのくらいの存在だったランチャームが、橋場さんの話を聞いて急に気になるようになってしまった。これからお寿司やお弁当を買うときにはランチャームが入っているものを買ってしまいそうです。
ちなみに他社製品との見分け方は尻尾に旭マークがあるかないか、らしいので今度お弁当買ったら確かめてみてください。
取材協力:旭創業
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