すりおろしてもわかる
すりおろすことで食感を無にしてみても、お菓子にはそれぞれ特徴的な味があるからだいたい判別できる、ということがわかった。
そして食感のないお菓子は悲しい、ということもわかった。撮影中に月餅さんが「わたし、歯をだいじにする」とぽろっと言っていたのが印象的でした。
お菓子の美味しさの8割は食感なんじゃないかと思う。
今回はお菓子をすりおろすことで食感を完全に取り払ってみた。この状態で元のお菓子がなんだったのか当てることができるのかどうか。試してみました。
お菓子の美味しさの8割くらいは食感なんじゃないかと思っている。
昨日までサクサクしてたお菓子が湿気をはらんでキュッとなってしまうと、それはそれで美味しいけど途端に残念な気持ちになるだろう。
お菓子は食感なのだ。
今回、お菓子の肝である食感を完全に奪い去った場合、お菓子はそれでもアイデンティティを保っていられるのかどうか、調べてみた。
それぞれのお菓子はすりおろすことで食感を平等に取り上げてある。味で勝負だ!そんな声が聞こえてくるようだ。
果たして人は粉になって食感を排除された状態でも、そのお菓子がなんだったのかわかるのだろうか。
今回の実験に参加してくれたのはライターの江ノ島さんと月餅さんである。二人にはこの粉がもともとなんのお菓子だったのか教えていない。
ーーどうですか、粉になってもこれが元々なんだったかわかるものかなと思って。
月餅「粉なんだけどちょっとだけ、なんとなく食感みたいなものが残ってるんですよね。なんだろうなこれ」
江ノ島「ポテトチップスの、ほら、筒に入ってるやつだと思う」
月餅「あー、わかった、チップスター?」
江ノ島「そう、チップスターの塩味!」
実はチップスターはサクサクすぎて、すりおろす前に砕けて粉になってしまったのだった。月餅さんの言っていた「なんとなくな食感」というのはこのことだろう。
二人の感想
・ジャガイモだということはわかった
・粉の中にも小さい範囲でカリカリした部分がある
・お菓子を食べ終えたあとの袋を逆さにしてる感じがしてテンションが下がる
すごい!粉になってもわかるね!美味しいね!というハイテンションな会を期待していたのだが、なんだかすごくローな始まりである。どうした。
めげずに次にいきたい。
江ノ島「サラダせんべいかな」
月餅「いや、私これ正解わかった気がするんだけど、ぜんぜん嬉しくないですね。好きだからかな、とてもつらい」
ーーつ、つらい?
月餅「安藤さん、これ自分で食べてみましたか」
ーーいや、いま初めてすりおろしたので食べてないですね
月餅「人に食べさす前に食べてみてくださいよ、ちょう嫌だから。お菓子自体はたぶんハッピーターンだと思うんですよね」
ーーハッピーターンは粉が美味しいからすりおろしても美味しいかなと思ったんです。
月餅「粉は美味しいんです。でも安藤さん中身まで一緒にすりおろしてるじゃないですか。それで記憶の中のハッピーターンと違う味になってるんです」
ーーハッピーかどうかでいうと?
月餅「ハッピーどころじゃないです。これは私がハッピーターンすきだからかもしれないけど」
二人の感想
・すごく嫌だ
・いつか噛めなくなった時にこれを食べさせられたら泣くかもしれない
・ハッピーターンは粉が美味しいんであって、粉にしても美味しいわけじゃない
月餅さんに責められて自分でも食べてみたのだけれど、確かにあの美味しい粉の味がボディの風味に合わさってぼやけてしまっていた。
ハッピーターンは悲しくなるからすりおろさない方いい。これは今回の貴重な学びである。
学びは学びとして次にいきたい
江ノ島「じゃがりこのチーズ味だと思います」
月餅「わたしもそう思います」
ーー正解です。じゃがりこは硬くてすりおろすのがたいへんでしたよ。だからちょっと粗目の粒が混じってますよね。
江ノ島・月餅「……。」
二人ともこの会を楽しもうという気分ではなくなっているのか、淡々と粉を舐めて答えを当てるだけのマシーンと化している。雑談がない。
お菓子を食べてこんなにテンションが下がるなんて。やはりお菓子は食感なのかもしれない。最後までやる前に確信してしまった。
二人の感想
・とくになし
ごめん、だけど最後これ食べて。
ーー次が最後ですから
江ノ島「これは粉がふわふわですね」
ーーわかりますか?一番よくすりおろせましたからね
ーー粉がふわふわじゃなかったですか
月餅「でもそこに意識が行かなかったです」
江ノ島「粉になると味がダイレクトに感じられるような気がしますね。これは甘さとなんだろう、ナッツの香ばしさ?」
月餅「食べた瞬間はなんだかわかんないんだけど、口の中で粉が溶けると後味で記憶の扉が開きます。キャラメルコーンですよね」
二人の感想
・粉にすることで味が濃く感じられる
・でもあえて粉にする必要はない
・合間に飲んだコーヒーが美味しい
会議とかでは会話が弾むようにお菓子を用意することがあるが、それが粉だと会話は弾まないだろうなと思った。
やはりお菓子に食感は大切なのである。二人とも、ありがとうございました。
すりおろすことで食感を無にしてみても、お菓子にはそれぞれ特徴的な味があるからだいたい判別できる、ということがわかった。
そして食感のないお菓子は悲しい、ということもわかった。撮影中に月餅さんが「わたし、歯をだいじにする」とぽろっと言っていたのが印象的でした。
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