立っても立たなくても風太君
レッサーパンダは脚の構造上、風太君でなくても立つことができるのだという。
しかし平成を生きた僕たちにとって、立つレッサーパンダといえば風太君だし川に現れたアザラシといえばタマちゃんなのだ。ぜひこれからも気が向いたら立ち上がったりしながら、人気者として元気に暮らしていってもらいたいと思いました。
人間みたいに二本足で立つレッサーパンダとして、千葉市動物公園の風太君が人気者になったのは2005年のことらしい。
14年前の話である。
風太君は今でも立っているのだろか。見に行ってきた。
※この記事は2019年のゴールデンウィークとくべつ企画のうちの1本です。
千葉都市モノレールの動物公園駅で降りると、すぐに風太君一家が仁王立ちで出迎えてくれる。といっても本物ではなくマネキンである。
当時、二本足で立つレッサーパンダの風太君は人気者となり、テレビやCMなんかにもよく出ていた。おれだって基本二足歩行なのに、と、その人気を妬んだ人もいたのではないか。
ここ千葉市動物公園には、ゴリラもゾウもカンガルーもいるのだけれど、やはり今でもレッサーパンダは人気のようで、細かい雨の降る平日の午前中にもかかわらずレッサーパンダのいるゾーンにはひっきりなしに人が集まっていた。
クウタ君は風太君の息子である。2008年生まれなのですでに立派な大人だろう。貫禄すらただよう毛並みである。
そしてこのクウタ君の、壁を隔てた隣のスペースに風太君は暮らしている。
説明看板の風太君は座頭市の頃の勝新太郎みたいな顔をしていた。これはさぞモテたことだろう。
そんな風太君は今でも立っているのだろうか。
風太くーん!
説明看板に書かれている通り、風太君は寝ていた。
2003年生まれの風太君は今年で16歳。人間でいうと70歳くらいらしい。若い頃はかたときも落ち着いていなかったというが、この日はしばらく見ていてもまったく起きる気配がなかった。
しかし雨の中2時間かけて千葉まで来たのだ、今でも立つという風太君が起きるのを少し待ってみたいと思う。立つまで待とう風太君、である。
しばらく待ってみてもまったく起きる気配がないので、雨宿りがてら売店へ行ってみた。
売店ではハシビロコウとナマケモノ、そしてやはりレッサーパンダが人気のようだった。売られているグッズのざっと半分くらいが今でもレッサーパンダ関連だ。
売店の人に聞いたところ、風太君は好きなエサがでると、今でも立ち上がることがあるのだとか。あれから14年間、ずっと立つことを期待され続けてきたのだろう。人間でいうと70歳である。もうわざわざ立たせなくてもいいじゃないか、とすら思った。
お土産を買って帰ってきたら、なんと風太君が起きているじゃないか。笹を食べているぞ。
風太君はうまそうに笹を食べながら壁の向こうにいる息子と目を合わせ、のっしのっしと威厳のある歩きで雨宿り場へと入っていった。
レッサーパンダは脚の構造上、風太君でなくても立つことができるのだという。
しかし平成を生きた僕たちにとって、立つレッサーパンダといえば風太君だし川に現れたアザラシといえばタマちゃんなのだ。ぜひこれからも気が向いたら立ち上がったりしながら、人気者として元気に暮らしていってもらいたいと思いました。
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