東京ではごくたまに、石垣島ではたくさん会える
というわけで、イカスミチャーハンの話をしたいのだが、まず、ビジュアルから味わってもらいたい。
お店によって「ものすごく黒」「若干まだら」「グレートーン気味」など、ちょっとずつ違いがあったりもするが、基本的には黒い。
食べられる場所は全国に点在していて、なんなら台湾の南のほう(高雄)でも食べられるらしい。
沖縄の郷土料理として見かけることもあれば、中華の店やイカ専門店のレギュラーメニューとして置かれていることもある。で、まれに一般的な居酒屋に置かれている場合もある。
……という状況なので、けっしてごくごく局地的な食べものではないんだろう。だが、食べられる店の数は多くない。
体感的には、カレーやラーメンなどのメジャーなごはん達に比べると、100分の1程度の遭遇率な気がしている。
いや、もっとぜんぜん少ないかもしれない。
そんなイカスミチャーハンを置いている店の密集率が、私調べによると、とっても高い場所が石垣島なのである。
ためしに石垣島の市街地を10分弱歩いてみたところ、神保町でカレー屋に出くわすくらいの遭遇率で、看板にイカスミチャーハンがのっているお店に出合えてしまった。
3泊4日の旅では食べきれない量のイカスミチャーハン達
ここで私のおなかに吸い込まれていった、イカスミチャーハン達を紹介したい。不思議と、食べても食べても食べ飽きることはなかった。
このイカスミチャーハンには、ぱっと見だとわかりにくいかもしれないが、細かく刻まれたイカがたっぷり入っていた。
白身魚も少し入っていたのだが、黒々とした色合いにかき消されて、口にするその瞬間までわからなかった。
とはいえ、何が入っているかわからないのは黒いからこそ。イカスミチャーハンの醍醐味ともいえる。
「ひとし本店」は予約の絶えない人気店である。だが、ぼんやりした私は「宿に近いから行ってみよう」と、前情報なしに訪れ、「もし22時までに空席がでた場合には、電話連絡します(でなかったら連絡はなし)」という、いちかばちかのかけに出ることになった。
実をいうと、連絡を待ちわびているあいだ空腹にたえられず、別の食べものを口にした。そのため、このチャーハンを食べるとき、私はすでに満腹であった。だけど食べられた。完食した。おいしいから。
「海鮮居酒屋 魚礁(パヤオ)」には、イカスミチャーハンも置いてあったのだが、リゾットを熱烈に賞賛する口コミをみかけたため、気になる気持ちを抑えきれず、リゾットを頼んだ。
結果、学んだ。イカスミとバターは相性がものすごくいい。あと、イカスミとしめじの相性もいい。イカスミは、結構いろんな奴らと友好的な関係を築けるタイプらしい。
いろいろだ。
不思議と「もう飽きたから別の料理が食べたい」とはならなかった。
お昼にイカスミチャーハンをたらふく食べて満足して、日が暮れるころには、イカスミチャーハンが食べたくなっていたのである。