多少ひねくれた紹介の仕方だったかもしれないが、とにかく寝台列車に乗るのは楽しいのだ。世間が寝静まった、その隙間をぬって移動するような旅の快感。公共交通でありながら、持てる自分だけのスペース。自由に部屋を暗くできることで増す、いっそうの浮遊感。
狭さも、車窓の景色の移動とともに味わえば、また違った経験になると思う。ぜひ皆さんも、さあ乗って帰ってくるだけでも、さあ。
(編集部より:この記事は2009年に取材しました。その後あけぼのも惜しまれながら運行終了となってしまいました)
最後、この狭さをひとつ利用して、ちょっとしたカスタマイズをしてみたい。
お茶室の「にじり口」のようなドアをくぐるとそこには、上質な和の空間―。
備え付けの寝巻き(浴衣)を羽織って、これまた持参の茶碗(本当はソバ猪口)を手にすれば、気分はもう裏千家。
実際、九州新幹線の車内は和風のしつらえに挑戦しているのだから、いずれは「お座敷寝台」、「掘りごたつ寝台」、「四畳半寝台」などもできていいのではないだろうか。へたな学生気分で旅するハメになりかねないぞ。
狭いがゆえに画角の確保に苦労した写真撮りも終え、機材を撤収。待ちかねたビールを開け、車窓そばの定位置に落ちつこう。部屋の電気を消し、多少ぬるまったビールをちびちび口に運びながら、暗く寂しい夜中の沿線地帯をひとり眺めるのだ。
多少ひねくれた紹介の仕方だったかもしれないが、とにかく寝台列車に乗るのは楽しいのだ。世間が寝静まった、その隙間をぬって移動するような旅の快感。公共交通でありながら、持てる自分だけのスペース。自由に部屋を暗くできることで増す、いっそうの浮遊感。
狭さも、車窓の景色の移動とともに味わえば、また違った経験になると思う。ぜひ皆さんも、さあ乗って帰ってくるだけでも、さあ。
(編集部より:この記事は2009年に取材しました。その後あけぼのも惜しまれながら運行終了となってしまいました)
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