特集 2024年1月16日

どこでも富士山になれるスカート

職場やプライベートで嫌なことがあって、あなたはとても落ち込んでいる。いつもケラケラ笑いながら見てるテレビ番組にも、感動的な映画にも、あなたの心はまったく動かない。

だがそんな時、不意に富士山が見えたらどうだろう?

1980年、東京生まれ。片手袋研究家。町中で見かける片方だけの手袋を研究し続けた結果、この世の中のことがすべて分からなくなってしまった。著書に『片手袋研究入門』(実業之日本社)。

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富士山は良い

「あ、富士山だ」

スッと一筋の光が射し込み、あなたの心はじんわりと温かな空気で満たされる。富士山には、そんな不思議な力がある。仕事の忙しさで心が死にかけていた昨年末。たまたま寄った海ほたるから綺麗な富士山が見えて、思わず笑みがこぼれた。

はしゃいで手乗り富士山やっちゃうくらいに心が晴れた

ああ、私も富士山みたいな人間になりたい。どんな事態にも動じず、ドンと構えていられる大陸的な人間。その場にただいるだけで、何となく周囲の人達が安心感を抱いてしまうような人間。

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なれる

でも、私みたいに器の小さな男には無理だ。今日も奮発して買ったイクラを我が子が多めに取っただけで、思わずカッとなってしまった。「おい、ずるいぞ!」。たっぷり食べさせてやれよ、イクラくらい。可愛い我が子だろ?富士山なんて夢のまた夢だ。

よし、心は諦めて見た目から入ろう。「あれ?あの人、富士山みたいじゃない?」。そんな風に言われるにはどうすれば良いだろう?

~どこでも富士山スカートの作り方~

①青い布と白い布を用意します

②ギザギザに切った白い布を、青い布に縫い合わせて完成 

 スカートと書いたが、別にショールでもひざ掛けでも何でも良い。

「男がスカート?」。富士山の前でそんな小さなこと言ってマウント取るなよ
羽織ると新撰組っぽくなりますね

とにかく「あ!今、富士山になりたいかも」と思ったら、すぐさま腰に巻いて足を開き、前方に屈むのだ。

これは完全に富士山に見えるぞ。ちなみに横から見るとこうだ。 

結構辛い姿勢でプルプルしてしまう。富士山って大変なんだな

試しに近所の公園でやってみる。

家のすぐ近くで富士山が見られるなんて…

ベンチのカップルが訝しむ雰囲気、撮影を頼んだ妻が早く帰りたがっている気配をビンビンに感じる。だがどうだろう?富士山になった私は、そんなのまったく気にならない。「見た目だけでも…」とスカートを作ったのに、心も大きくなっているじゃないか。

なれた。富士山のような人間に、私はなれたんだ。

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みんな、見て!

人間として成長した私を、みんなにも見てもらいたい。ちょうど代々木公園でDPZの撮影があったので、富士山スカートを持ち込む。

遠くで見守るみんな達から歓声が上がる。嬉しい。富士山は見ても、見られても心地良いものなのだ。「みんなにも是非体験してもらいたいな」。自然とシェアの心が芽生えてきた。やっぱり人間として確実に成長してる。今なら子供にたんまりイクラを食べさせてやれる。 

橋田さん、トルーさんにスカートを託す。なんと赤富士も用意していたのだ
本当にここは代々木公園だろうか?

見よ、この雄大な景色。富嶽三十六景の北斎が生きていたら、間違いなくこの連富士も描いていただろう。良いぞ。これは良い。もっと色んな場所で富士山をやってみよう。

⏩ 海をバックに

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