特集 2025年8月6日

静岡県掛川市、山の中にある岩の割れ目が絶景かつ恐怖

割れてる!

静岡県掛川市。

山の中にある岩の割れ目がすごいと聞いて行ってきました。

ちょっと想像を超えるすごさでしたよ。

行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

前の記事:あの登呂遺跡に行ってきた

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まずは山頂の神社を目指す

静岡県掛川市に小笠山というところがあって、山頂にある神社からしばらく歩くと岩が割れていてすごい、という話を聞いた。

それは見に行くしかないだろう。朝5時に起きて掛川市へと向かった。

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この上が小笠神社

いきなり神社に到着したが、実はここまで来るのにかなり道に迷っている。なんてったって道案内がほぼ皆無なのだ。

ほぼ、というのは下の写真にある一つだけ見つけることができたから。

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表示、全区間通して見つけられたのはこれだけでした

事前の調べによると、小笠山はハイキングコースとしても人気らしく、夏休みなんかにはふもとの駐車場が満車になることもあると書いてあった。

それで朝いちばんで来てみたのだけれど、結果的にこの日、人とすれ違ったのは神社を掃除してくれていた人だけだった。僕のつかんだ情報が違っていたのか、それともたまたまそういう日だったのか。

鳥居をくぐるとハイキングコースの道案内が掲示されていた。

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かなり丁寧な地図ですが
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インフォメーションがいちいち怖いんです
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ぜったい無理しちゃいけない山だな、ということだけはわかる
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ドンドン隧道の「ドンドン」すら不吉な描写に思えてくる

事前に地図アプリでルートを確認しておいたのだが、いざ入山しようとするものを拒むかのごとき表示板である。

あとからこの記載の正確さを思い知ることになるのだが、この記事を読んで興味を持った人はぜひきちんとした準備と計画を立てて臨んでほしい。

とはいえ山道は整備されていて歩きやすい。

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急だけど階段もフェンスもあって迷うことはありません
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ただ明らかに落石注意だな、と思わせる屋根があったりして背筋が伸びる
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そして明らかに落石が当たったな、という跡も
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山頂までは問題なし

山頂付近、小笠神社までは階段が整備されているので多少キツイが迷うことはないだろう。

問題はその後である。

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しばらくこのくらいの勾配の階段が続きます
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階段の先に空が見えたと思ったら
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神社に到着

小笠神社は見晴らしのいい山のてっぺんに位置しており、ここまで来るだけでも達成感が半端ない。いままで犯してきた様々な罪がぜんぶチャラになったような気分である(犯してきた罪の内容にもよると思うが)。

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ここからの景色を眺めて下山するのがもしかしたら正解なのかもしれません

話はここからである。この先の山道を1時間ほど歩くと岩が割れているらしいのだ。

僕は普段トレイルランニングといって山の中を走り回る競技をやっていることもあり、歩くのはかなり速い方だと思っている。ハイキングで1時間というのなら、きっと30分くらいで到達できるだろうなという自信があった。

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勾配が急な山に入っていきますが、道が整備されているので怖い感じはありません
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ところどころに鳥居があったりするので、そういう意味で身が引き締まります

神社を過ぎてしばらくは階段が続いており、案内表示もわかりやすく設置されていて不安は全くなかった。

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分岐する道には丁寧に表示がされています

しかしこの親切設計もこのあと10分くらいで急変する。

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山が本気出す

歩きながらふと横を見ると、思いっきり崖だった。あれ、さっきまであんなに穏やかなハイキングコースだったのに。

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徐々に道が険しく、表示があいまいになってくる
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え?ちょ
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ちょっと待ってくれ(この道、幅が50センチくらいで両側が崖です)

低くても山をなめてはいけない。日ごろから登山やトレランなんかで山に入っている人ならともかく、思い立ってふらりと、ほぼ手ぶらでやってきました、みたいな人はこの辺で引き返した方がいいと思う。この先はかなり道があいまいだし表示もあまりない。動物のふんもたくさんある。

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アプリでも紙でもいいけど地図は必携である

おどかすわけではないけど、虫も大量にいるので苦手な人はやめたほうがいい。ヘビもハチもいる。あとお化けとか草むらとか、高いところとか孤独に耐えられない人なんかもやめておいた方がいいだろう。山にはもれなく全部ある。歩いているとクモの巣に顔から突っ込むなんて茶飯事である。

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この「転落事故、道迷い発生」と書かれている六枚屏風というのがこれから向かう先です

ちなみに僕は水1リットルと緊急用に食料、あと携帯とバッテリー、応急手当グッズを持って山用のシューズを履いて臨んでいる。それでも大げさではないな、と思わせる雰囲気がびんびんである。一歩間違うとどこまででも落ちていきそうな崖があるし、分岐で間違うと二度と元来た道には戻れなさそうだ。上の方で聞いたことない鳥が笑うみたいな声で鳴いてる。

自分の歩いたルートをチェックしつつ、ところどころにある表示板におびえながら歩くこと1時間。さっき「30分で着くだろう」とか言っていた自分に説教したくなり、背中を濡らす汗が冷えはじめた頃、とつぜん場の温度が2℃くらい下がったような気がした。湿り気を帯びた風が吹いている。

目線を上げると正面に割れ目があった。

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割れ目だ
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割れ目は突然に

割れ目である。割れ目以外にちょっとなんと表現したらいいのかわからない。目の前の森がぱっかり割れているのだ。

場所は小笠山の六枚屛風。「屏風」と名の付く地名はだいたい切り立っていることが多いが、ここの切り立ち方は容赦ない。

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森が割れています

近くまで行ってみると、岩というよりも、森というか山自体が割れているようだった。木々が生えている土台となる山自体が二つに割れているのだ。

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ぱっかーん

割れ目は人一人がどうにか入れるくらいの幅だった。でも入るにはものすごい勇気が要る。

僕はわりと高いところも低いところも平気な方だと思っていたのだけれど、この圧迫感というか両の岩から受ける圧みたいなものは想像を超えていた。

それでもせっかくここまで来たのだからと、数歩割れ目に足を踏み入れてから落ち着こうと大きく息を吐いて上を見上げると、はるかかなたに割れ目の外の世界が口を開けていて背筋が伸びた。

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かんべんしてください

ずっと前にヨルダンという国のペトラという遺跡に行ったことがある。あそこも言ってしまえば割れ目だった。

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ペトラの割れ目

でもペトラのそれは乾ききった古い遺跡の割れ目だ。

静岡の割れ目は違う、生きている感じがするのだ。食虫植物みたいに人が入るのを森の奥で待ち構えていて、ばかが入ったらいつのまにか閉じる。そんな活き活きしたやばさを感じる。

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足もとはこんな感じです

足もとはおもに石、そしてところどころに水が溜まっている。たまに木が敷かれている箇所もある。敷かれているというか、きっと上から落ちてきた木がそのまま挟まっちゃったんだろう。これ、踏むと岩が閉じるトラップなのではないだろうな。

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そんなわけないんだけど、中にいる間に割れ目が閉じてしまったらどうしようかとずっと考えていました
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見つけた人すごい

昔の人はよくこの場所にこれを見つけたなと思う。よく最初にナマコを食べた人はすごい、みたいな言い方があるが、それより最初にこれを見つけた人と、入ってみようぜって言った人の方がずっとすごいと思う。

割れ目は曲がりくねりながら続いており、僕は行けるところまで行って帰ってきた。途中で(これぜったい行ったらやばいよな)という胸の高さくらいの段差も泥だらけになりながら超えたので褒めてほしい。

おかげで出てきたときには別人になったみたいな達成感だった。人はこうして冒険にのめり込んでいくのかもしれない。

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静岡の割れ目がすごい

静岡県掛川市にある小笠神社、その先の山奥にある割れ目に行ってきた。かなり山の深い位置にあるので、見に行く人はくれぐれも計画的に、無理をしないようにしてもらいたい。

それでも行く価値あるくらいやばい割れ目でしたよ。

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当たり前ですが帰りの分の体力も残しておきましょう(帰りも1時間かかるからな)

 

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
いやすごい。道中の崖っぷちの道とかは、体験したことはないけど概念としては知ってるので「こえ~」って感じで読めるのですが、「割れ目」はもうその概念自体が頭にないじゃないですか。文章を丁寧に読んでイメージするしかない、もはやSF読んでるみたいだと思いました。
そしてそれでも背筋が伸びる感じが伝わってくる筆致です。上を見上げた写真の見たことなさもすごかった。

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