ある日、輸入食材店を眺めていたら「韓国ヤクルト」とPOPに書かれた飲み物を見つけた。
238mlという絶妙なサイズで、1缶88円。安い。
その場で「シッケ とは」というやや知能の低いワードで検索してみたところ(湿気取りについてのサジェストをされた)、どうやら「シッケ」と「スジョンガ」の別名が「韓国ヤクルト」なのではなく、韓国ヤクルト株式会社が手がけた、韓国の伝統飲料の缶入りバージョンなのだそうだ。ヤクルトが海外進出していたことすら初耳である。
ヤクルトが手がけるからには、乳酸菌飲料なのだろうか?と思い、成分表を見て驚いた。
まずこの製品名の時点で、我々が知るヤクルトとは遠く離れた位置にいる何かだということは分かる。
原材料は麦芽エキス、砂糖、米、麦芽糖、生姜エキス、シトラスエキスパウダー、さらにおまけの甘味料(ステビア)。
シナモン干し柿混合抽出液…?スジョンガは乳酸菌飲料どころか、シッケの仲間ですらないのか?
シッケもスジョンガも全く未知の飲み物だが、海外のローカルドリンクには興味がある。さっそく1本ずつ買って、冷やして飲んでみることにした。
匂いはかなり独特だ。オートミールにシュガーシロップをかけて水で薄めたような…これから酒でも仕込むのか?といった印象の香り。
想像の5倍くらい甘かった。確実にヤクルトではないが、これに近い飲み物を飲んだことがある。沖縄の「ミキ」だ。
ミキも「飲む極上ライス」の名前の通り、甘いお粥のような味だが、このシッケはミキよりも相当甘く感じる。ゴクゴク飲めるタイプの飲み物ではない。
調べたところ、シッケはもともと炊いた米に麦芽水、砂糖などを入れた飲み物だそうだ。麦芽水が入るということは酵素で澱粉が分解されるだろうし、砂糖を追加しているのはアルコール発酵のためであるような気がする。つまり「これから酒でも仕込むような味」というのはあながち間違っていない。
海外のお菓子によくある、一切の妥協を許さないあのシナモンの香りだ。干し柿の香りは…ちょっとシナモンの存在が大きすぎて見つけられない。
スジョンガとは、もともと韓国ではお正月に飲む伝統茶で、シナモンと生姜を煮出して、干し柿を入れていただくものだそうだ。薬効もありそうで興味深い。
缶入りのシッケとスジョンガは、甘い飲み物があまり得意でない筆者にはちょっと甘すぎたが、本場で手作りの味を飲んでみたくはなった。
少なくとも日本にある飲み物とは(ミキを除いて)完全に別物だ。見かけたら、一度試してみてはいかがだろうか。