特集 2026年5月12日

噂でしか聞いたことがないシャトルランをやろう

体力テストで「シャトルランがツラかった」という思い出をよく聞く。周りに運動が得意な人がいないせいか、「毎年嫌だった」「トラウマ級」と、それはそれはネガティブな話を聞く。

でも僕の世代はシャトルランをやったことがないのだ。何がどれくらいツラいのかわからない。これは一度経験しておいたほうがいいんじゃないだろうか。シャトルランをやろう。

1975年宮城県生まれ。元SEでフリーライターというインドア経歴だが、人前でしゃべる場面で緊張しない生態を持つ。主な賞罰はケータイ大喜利レジェンド。路線図が好き。(動画インタビュー)

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これだから大人は

きっかけは子どもたちとの会話だった。小学校や中学校の体力テストでは毎年「シャトルラン」があり、そのたびに大変な思いをしたという。

しかし、シャトルランが何者なのか全然わからない。どうやら1999年から始まった「新体力テスト」で追加された種目らしい。そりゃやってないよ。旧体力テスト世代だもの。

子どもたちからどんなことをするのか聞くと、どうやら持久力を測るもののようだ。しかし経験してないから大変さがが共感できない。そう伝えると「これだから大人は!」「やらないとダメ!」と散々な言われよう。

そんな熱量で言われたらやるしかない。話の輪にお父さんも入れてくれ。編集部に相談して、体育館を押さえてもらった。

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東京都江東区にある「BumB 東京スポーツ文化館」サブアリーナ。

いま簡単に「押さえてもらった」って言ったけど、シャトルランには20メートルの距離が必要らしく、条件を満たす体育館はみんな予約がいっぱいで、1ヶ月以上先の予約になってしまった。DPZライターの皆さんに参加者を募ると5名も集まり「この日のために仕事を休みます」という人もいる。

なんだか意図せず大事(おおごと)になってきた。やるぞシャトルランを。よくわかっていないけど。

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 同世代でも経験・未経験が分かれる

いよいよ本番当日。JR新木場駅を降りて徒歩10分、夢の島公園の中に「BumB 東京スポーツ文化館」はある。

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集まった参加者がみんな「入口にあった食堂のわらじメンチカツ、おいしそうでしたね」と言っていた。

シャトルランのために集まった大人たちは自分を含め計7名。シャトルランを「やったことがある人」と「やったことがない人」が混在したメンバーになった。

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シャトルラン未経験者たち(高瀬、りばすと、西村、井上)。撮影している編集部橋田さんも未経験。

「一度やってみたかった」という未経験者たち。シャトルランについては「ネットミームのあるあるネタとして知っている」「しんどいってことだけ聞いた」「だんだん速くなるんでしたっけ?」というくらいの解像度である(詳しいルール説明はこのあとやります)

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シャトルラン経験者の與座さんと文園さん。高瀬さんに「やったことないんですか!?」と驚く與座さん。「みんなやってると思ってた」とのこと。

文園さんは子どものころから運動が苦手で、「他のクラスが体育館でシャトルランをやっている音が教室まで漏れ聞こえてくるだけで嫌だった」という。よく来てくれたなぁと思う。

一方、與座さんは「中1のとき学年1位を取ったことがある」とのこと。男子に勝って会場は大盛り上がりだったらしい。

與座さんは「120くらい行った」というのだけど、その数字がどれくらいすごいか実感できないので、未経験者たちは「おぉ……」という中途半端なリアクションしかできない。しかし、そんな玉虫色の態度も今日までだ。

さてここで、参加者それぞれの年代とシャトルラン経験をまとめると以下のようになる。

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注目すべきは30代。文園さん、與座さん、りばすとさんは同じ30代なのにシャトルラン経験が分かれている。この日は「地域や学校によって違うんですかねぇ」という感じで首を傾げて終わった。

しかし、後日改めて文部科学省の「新体力テスト実施要項」を確認してみると、新体力テストでは「1500メートル走(持久走)か20メートルシャトルラン(往復持久走)のどちらかを選択する」と書いてある。

学校によってどちらを選択したかが違うのだ。そういえば、りばすとさんは「1500メートル走はありました」と言っていた。そういうことか。

旧体力テスト世代の40代50代も、当時から1500メートル走はあった。あれに替わるものが20メートルシャトルランだったとは。てっきり踏み台昇降がなくなってシャトルランになったのかと思っていた。

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踏み台昇降は新体力テスト導入と共に廃止されている。というわけで若者たちに「踏み台昇降とはなにか」を説明する一コマもあった。
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シャトルラン用CDを聞こう

では、シャトルランのルールをきちんと把握しよう。この日のために、「20mシャトルランテスト用CD」(株式会社エバニュー)を買った。

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1800円くらいした。Amazonで売っている。

このCDには2曲しか入っていない。1曲目はシャトルランの説明、2曲目はシャトルラン中に使用する音源だ。まずはちゃんと説明を聞こう。説明書をちゃんと読むタイプだから。

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施設で借りたCDデッキを囲んで、体育座りして聞く。

軽快なオープニングサウンドと共に、女性の声で「この20メートルシャトルランテストは、設定された電子音に合わせて、できるだけ長く20メートルのシャトルランを走り続けるものです」と説明が始まる。

電子音は、ある一定の間隔で設定されています。最初の電子音で、片方のラインをスタートします。次の電子音で、20メートル離れたもう一方のラインまで走り、直ちに折り返します。
スタートは、ラインの手前から行ってください。ターンするときは、必ず片方の足がライン上、またはラインを越えるように行ってください。

なんらかの電子音が鳴るまでに、20メートル先のラインまで走ればいいんだな。間隔の広い反復横跳びみたいなものか。

続いて、電子音が鳴る間隔は約1分ごとに速くなること、スタート時の速度は非常にゆっくりと設定されていることが説明される。

それぞれの電子音の間には(ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド)という音が入力されています。この音によって、ランニングペースを合わせるようにしてください。

あなたは、徐々に間隔が短くなる電子音に合わせて、できるだけ長く走り続けるようにします。設定されたスピードについていけなくなったところで、テストは終了です。

最後に聞いたトータルの数字が、あなたのこのテストでの記録です。

徐々に速くなる音に合わせて20メートルのあいだを行ったり来たりし、間に合わなくなったら脱落。20メートルを走るたびにカウントが1つ追加され、脱落したときのカウントが自分の点数。

なるほどわかってきたぞ。

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西村「デスゲームみたい」 與座「デスゲームですよ!」

りばすとさんは「ワクワクしてきましたね」と立ち上げリ、與座さんは「嫌になってきた~!」と頭を抱える。経験の有無でくっきりリアクションが分かれているのが面白い。学年1位になっても嫌なものは嫌みたい。

このあと西村さんが「今日2,3回やるんですよね?」と聞き、與座さんが「絶対ダメです!」と強く止める場面もあった。心霊スポットに気軽に遊びに来た人と、その態度に釘を差す地元の人みたいな構図だった。

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 20メートルってこんなに長いんでしたっけ

じゃぁやってみましょうか、と、施設から借りたメジャーで20メートルを測る

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「これが20メートル!?」「本当!?」「結構あるな!」「めっちゃ遠いんですけど!」

「20メートル」が実体を持って現れた瞬間、あちこちから戸惑いの声があがる。体育館の端から端までじゃん。しかも長いほうの。

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「こんなに長いんですか? 無理じゃないですか?」 徐々に現実に気づき始めるりばすとさん。

芽生えてきた不安を一旦脇に置き、きちんとルールを理解するためにも、ウォーミングアップ代わりに1往復だけやってみることにする。2曲目を再生する時が来た。

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高まる緊張感。

5秒前からカウントが始まり、CDの中の女性が「スタート」と冷静に告げた。ゆったりとしたペースで、「ド~レ~ミ~ファ~ソ~ラ~シ~ド~」と音階が鳴る。最後に「ポーン」という電子音が鳴るので、それまでに向こう岸のラインを踏めばいい。なのだが……。

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このとき全員「えっ思っていたより速いな」と焦った。
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やばいやばいやばい
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これやばいぞ! 1回止めよう!

最後の「ポーン」が鳴るまで9秒。これが思っていたより速い。説明のとき「非常にゆっくりと設定されている」って言ってたから完全に油断した。みんなでびっくりした。

井上:あんなに『ゆっくり』って言ってたのに!
文園:小中学生にとってはゆっくりなんでしょうね……。
橋田:これが一番遅いんでしょ?
高瀬:もうやばい。
與座:めっちゃきつい。びっくりした。
西村:だって俺、最初たどりつけてなかったからね。
りばすと:これ0.8倍速とかできないんですか?

事の重大さに気が付き始める未経験組。たった一往復で当時の記憶が蘇る経験者組。あとダメだよ0.8倍速にしたら。

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最初でこれなら後半どうなってるんだ。音源を早送りして、19分後くらいに流れるカウント200を聞いてみる。ドレミファソラシド、ポーンまで約4秒。「はっや」「え……」「顔崩れますよ」

「最後のポーンで線をまたげばいいんでしょ」「早く着きすぎるのも良くないのか」「でもギリギリを攻めすぎると方向転換が遅れるし」「うまい子は円を描くように走っていた」と、焦りからか持てる限りの情報を交換する大人たち。

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5分くらい話し込んだのち、「みんな全然走ろうとしないな!」と気がついて爆笑した。

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