スマホカバーも昭和ナイズしたかった
最初に思い付いたのは、やはり「スマホカバー」であった。でも作りはじめてみると、
これはいつかリベンジしたい。
かつて自宅の電話機に、布で作ったカバーをかける文化があった。あれを見ると「昭和っぽいなあ」と感じる自分がいた。
じゃあ逆に、いろんなものにカバーをかけると昭和っぽく見えるのではないか? 試してみた。
そのむかし、電話機に服を着せる(布のカバーをかける)文化があった。
黒電話は見た目も地味だったため、「自分の好きなカバーをかけることで個性を出す」というファッション的な側面もあったのだろう。その点は、現代における「スマホカバー」と一緒である。
とはいえ……。画像検索でもヒットするけれど、いま見ると「昭和っぽいなぁ」というステレオタイプな感想を抱いてしまう。布のカバーから、「昭和っぽさ」という抽象的な概念が想起されるのだ。面白い。
じゃあ逆に、最新家電にカバーをかけるとどう見えるだろう。新しいのに、見た目は昭和っぽくなるのだろうか。試してみたい。
昭和感を出すことを、この記事では「昭和ナイズ」と呼ぶことにする。
最初に昭和ナイズするのは、『Google Home』(正確にはGoogle Home Mini)。ここ数年、勢いを見せるスマートスピーカーである。家電に向かって話しかけるなんて、数年前までは謎の行動であった。それがいまや日常だ。時代が変わると、人間の常識も変わっていく。
昭和は遠くなりにけり……といった感じだが、これにカバーをかけることで、あえて昭和っぽさを掘り返していきたい。
今回の工作の素材、それは布である。布……となると、制作手段は手芸だ。当たり前である。
普段から工作はしているものの、裁縫となると実は二十年ぶりである。針を持つ手がふるえる。今回ほどハンドメイド趣味の方々を偉大に感じることはなかった。
ヒラヒラ成分とは、(私が勝手にそう呼んでいるだけだが)やたらヒラヒラしている装飾のことだ。
家電の外装は金型から起こすので、基本的にシュッとしていて、フリルのような立体的な装飾は付けられない。でもそれだと、カワイイが足りない。そこをヒラヒラ成分で補うのである。
このヒラヒラ成分を使って、花びらのようにGoogle Homeの円周を取り巻くことにした。そうして最終的に出来上がったのがこれだ。
Google Homeはそんなこと言わない。時代考証が甘いドラマみたいな雰囲気になってきた。
ちなみに写真の撮り方は、「2018年の食べ物を1970年っぽく撮るには」という記事の手法を参考にした。その上でザラザラしたノイズを加えている。撮り方ひとつで生み出される、この圧倒的な昭和っぽさよ。
これ、何か見覚えがあると思ったら針山だ。Google Home Miniは針山に似ていることが判明した。
そんなどうでもいいことが分かったところで、次いってみよう。
ここ数年で最も勢いのあるテクノロジーのひとつが「VR」だ。PSVRをはじめ、ゲーム界隈でも盛り上がりをみせている。特に『Oculus Go』は、ワクワクが止まらず発売日に入手した。コスパも高く、最初のVRヘッドセットとしてオススメできる機種である。
この生地はほどよいクッション性があって、家電の保護という意味でも適した素材だ。フィット感も抜群である。とはいえ、これだけでは物足りなさを感じる。……やはりヒラヒラ成分が必要なのか?
※ちなみに放熱の問題から、前面の平たい部分を覆うのは厳禁。カバーは側面だけにしておこう。
ミシンもないので全て手縫いしていたのだが、せっせと裁縫していると「筆が乗ってきた」ならぬ、「針が乗ってきた」感覚があった。針と糸というシンプルな道具だけで、思い描いた立体物を形にできることのスゴさよ。裁縫スゴい。古くから日常作業として家庭に根付いていたのも頷けるなあ、などと今さらながらに思ったのである。
それではお見せしよう。これが昭和のOculus Goだ。
見たことないのに懐かしい。そんな雰囲気をかもし出すことができたのではないか。やはり布の柄が持つ力、そしてヒラヒラ成分が重要なポイントであることは間違いない。
VRは、遊んでいる姿を見られると恥ずかしいという課題がある。そこにファッション性を持ちこむことで、現状を打開できる「何か」がないだろうか。少なくとも、この布カバーでは逆効果であるが……。
最後は「スティック掃除機」を彩りたい。
コードレス掃除機自体は昔からあったものの、かつてはパワーが弱くて使えないという印象があった。それがいまや、コード付き掃除機(キャニスター型)からシェアを奪うまでになっている。
「え? 『Google Home』、『Oculus Go』と来れば、次は『ルンバ』やろ!」という意見も聞こえてくるが、残念ながらロボット掃除機は持ってないのだ。なので俺はスティック掃除機で行く。
黒電話もそうだけど、手に持つ部分にカバーをかけがちである。ただ実際に使ってみると、とにかく布が滑るのだ。黒電話の受話器もそこそこ重かったと記憶してるけど、滑り具合はどうだったのだろう。
スティック部分のカバーは、ファッション性を高める意味では大いにアリだなと感じた。特に邪魔にはならないし、それでいて個性が主張できる。もともと硬派なマキタだけに、スイカに塩をかけたような甘みが引き出されている。
思えば黒電話も、ガッシリとした質実剛健タイプであった。そこにファンシーな要素がプラスされることで、お互いが高め合う相乗効果が生まれていたのだ。
気に入ったので、スティック掃除機はしばらくこのままの状態で使っていこうと思う。
最初に思い付いたのは、やはり「スマホカバー」であった。でも作りはじめてみると、
これはいつかリベンジしたい。
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