東海道線 静岡県内の駅に全部降りて観光する
愛野駅:駅前がモニュメントの宝庫
旅も二日目の午後に差し掛かり、あと13駅残っている。あと半日で回り切れるのか心配だが、実はここから先は事前調査で「これ!」というものが見つからなかった駅も多い。タイムアップになってしまわぬようにどんどん回っていきたい。
さて、前回ラストの掛川駅を出発し次の駅は愛野駅だ。ここは2019年のラグビーワールドカップの開催地としても注目が集まったエコパスタジアムの最寄り駅である。
エコパスタジアムのために出来た駅なので見どころと言えばエコパスタジアムなのだが、そこまで行くにはちょっと時間がない。そんな人にも嬉しいモニュメントが駅前にある。
目の前にはロータリーしかないのだが、何かで盛り上がっている風の写真を撮れる。さらに後ろには間近に新幹線の線路があるので、新幹線が通るとブワッっと風圧を背中に感じて心なしか気持ちがあがる。とにかくロータリーを応援したいときは愛野駅に来よう。
LOVEモニュメントなら西新宿か愛野駅と覚えておいてください。
袋井駅:たまごふわふわ(を食べたかった)
お次は袋井駅だが、袋井といえば見逃せないグルメがある。
たまごふわふわはきめ細かく泡立てたたまごを出汁の上にのせた一品で、江戸時代に将軍をもてなす際にも振舞われていたという可愛い名前に反して歴史のあるご当地グルメである。原宿あたりで売られていたらそのネーミングに女子高生たちの間で人気が出そうだ。たまごの下は出汁だけど。
しかし、あいにく時間が悪く駅の近くでいま食べられるお店がなさそうだ。以前に袋井にきた際に一度だけ食べたことがあるので、今回は残念だがパスしよう。前に食べた時のツイートを貼っておきます。
当サイトでは鈴木さくらさんがたまごふわふわの記事を書いているのでこちらもよかったらどうぞ。
御厨駅:虫封じの鎌田神明宮
どんどんいこう。次の御厨駅は2020年3月に開業した東海道線で一番新しい駅だ。さきほどの愛野駅以来の19年ぶりの新駅である。東海道線の駅はみんな昔からある古参メンバーばかりだと思っていたが意外と新しい駅も出来てるんだな。
この駅前のモニュメントはヤマハ発動機のシンボルである音叉をモチーフにしたもので、近くにはヤマハ発動機の本社がある。
大きな見どころがあるわけではないのでこういう細かい情報にもいちいち関心を持ってへぇへぇ言いながらやっていく。こういう旅でもないと注目しないので意外と楽しい。駅前には情報が詰まっている。
さて、駅から少し歩いたところに鎌田神明宮という神社があるようなのでお参りしておこう。この鎌田神明宮は651年の歴史ある神社で、「虫封じ」という珍しい神事が伝えられているそうだ。
「虫封じ」というのは小さな子どもの夜泣きや疳の虫をおさめてくれる御利益のことで、全国から参拝客が訪れるという。そういう神社もあるのか。色々な御利益のある神社があるものだ。どこかに花粉症に効く神社があれば教えてください(いま一番つらい)。
磐田駅:あづま焼でほっと一息
つづいての磐田駅はジュビロ磐田の名前でも聞いたことがあるのでそれなりに大きい駅な気がしていたが、事前調査で見どころが見つからなかった。以前仕事でこのあたりに住んでいた友人にも聞いたのだが駅の周りには何もないという。果たして何か見つかるのか…
そういえばこの旅ではじめての「でかい木」である。勝手に「何もなければとりあえず良い木を名所にしておこう」みたいなことがそれなりにあるような気がしていたが意外とないのだ。そんな気がしていたせいもあり、でかい木じゃ見どころとしては弱いよなーという気持ちがあるので、もう少し見どころを探してみたい。
いや、樹齢700年って冷静に考えたらめちゃくちゃすごいんだけど。人は木のでかさに慣れすぎているところがある。ちなみに俺はこの記事を読んでから木のでかさを忘れちゃいけないとずっと思っている。
そんなことを思って駅周辺を歩き回っていると行列ができたお店をみつけた。「みどりや」さんというお店だ。
一般的に大判焼と言われるものをこのお店ではあづま焼という名前で売っているようだ。10個単位で買っていくお客さんも多く、家で家族みんなで食べるのだろう。地元で愛される人気店だ。
あんこが苦手なのでカスタードのあづま焼を一つ購入。電車の時間があるので急いで駅に戻りホームで食べた。お昼を食べていなかったこともあり、出来立ての温かさが心にしみわたって最高だ。今度からこの食べ物のことはあづま焼と呼ぶようにしようかな。
豊田町駅:香りの博物館と公園
少し食べて余計お腹が減ってしまったが先を急ぎたい。お次は豊田町駅。この辺りは自動車メーカーの本社も多いがトヨタとは関係ない。
この駅から約6kmほどのところに「熊野の長藤」という藤の名所があり、その藤の香りにあやかってか、この町は「香り」推しである。
この香りの博物館では香りにまつわる美術品の展示や、自分だけの香りを調合する体験などが出来るのだがお察しの通り年末年始休業でこの日は営業していない。せめて香りだけでも…と門のそばで匂ってみたがさすがに香りが漏れ出してはいなかった。
うなぎ屋の匂いだけでご飯を食べて怒られる落語があったな…とひとり門の前でニヤニヤしてしまった。これで香りの博物館を堪能したというのはさすがに「始末の極意」である。
ハーブ園を備えた公園などごまんとあるので一体何を基準に100選に選ばれているのか分からないが、とりあえず名乗ったもの勝ちだなという思いはぬぐい切れない。次回は香りの博物館がやっている時にリベンジしたい。
天竜川駅:浜松餃子と遠州焼き
さて、お次の天竜川駅ではご飯を食べたい。ここで行きたい店があったのでがっつりお昼を食べるのを控えていたのだ。さすがにかなりお腹が空いてしまった。先ほどのあづま焼がなかったら腹が減って息絶えていたかもしれない、ありがとうみどりや。
こちらのお店は浜松餃子がリーズナブルに楽しめると人気のお店だ。すっかり浜松の名物として全国的にも有名になった浜松餃子だが、浜松市内のお店で食べようと思うとどうしても観光地価格になってしまう。しかしこのお店では「町の餃子屋さん」価格で浜松餃子を楽しむことができるのだ。
浜松餃子の特徴である真ん中に盛られたもやしはないが、それがなくともパクパクと食べられてしまう。実は8個入りで(小)サイズという位置付けなのだが、どんどん箸が進むので8個でもあっという間に食べられてしまい、(小)サイズというのも納得だ。
そして餃子と一緒に頼んだのがお好み焼き。お好み焼きという名前で提供されているがあえて観光客的な呼び方をさせてもらうと、これは浜松のご当地グルメ「遠州焼き」である。薄い生地を重ねたような焼き方と、生地の中に隠れるたくあんが特徴の一品だ。
浜松餃子と遠州焼きの浜松グルメコンボで大満足である。目まぐるしすぎる旅程でかなり疲れていたが、一気に元気が出た。あと7駅一気に駆け抜けていきたい。もうすこしで静岡県横断だ!
舞阪駅:うなぎ直売所の鯉
天竜川駅の次は浜松駅なのだが、この先にどうしても決まった時間に行きたい駅があるので、ちょっと飛ばして先を急ぎたい。浜松駅、高塚駅を飛び越えてやってきたのは舞阪駅。
ここ舞阪駅は浜名湖の近くということもありうなぎの名前がいたるところに見られる。さっき餃子と遠州焼きを食べていてよかった、じゃなきゃうなぎ食べたすぎてのたうち回っていた。食べればいいじゃんと思った皆さん、どこにも売ってないんです。
まぁ仕方ないな、うなぎはまた別の機会に、と思ったところで視界に動くものが。うなぎが食べれないうなぎの町を歩く人は他に誰もいないのになんだ?
鯉と書いたが大きい金魚かもしれない。近づくとガラス越しに口をパクパクしてこちらを見つめてくる。うなぎ屋の店頭でいけすに入ったうなぎを見ることはあるが、まさかうなぎの直売所の入り口で鯉を見ることになるとは思わなかった。
旅の疲れと細かいことを拾い上げるこの旅の姿勢とが相まって、なんだかすごく鯉たちに情が湧いてしまった。うなぎ屋が閉まっていれば閑散としてしまう直売所で人知れずいつも泳いでいる彼らこそ、この旅で見つけてあげるべき存在だったのではないだろうか。ちゃんと出会えてよかった。誰かが餌をあげていればいいけど、元気でやっていけよ、と鯉たちにエールを送って舞阪駅をあとにした。
弁天島駅:鳥居越しの夕日
鯉との別れを惜しみつつ、この日のメインイベントといってもよい風景をみるためにやってきたのは弁天島駅。何が何でもこの時間にこの駅に来たかったのだ。だからさっき駅を二つ飛ばしてきた。
弁天島は湖の中に立つ赤鳥居が有名だが、11月中旬~1月中旬の冬至の前後1ヶ月だけ鳥居越しに沈む夕日が見られるのだ。というわけでもったいぶっても仕方ないので一番いいシーンをどうぞ。
年末年始の洗礼でやっていないものも多くてこんな時期にくるんじゃなかったと何度も思ったが、この光景が見られるのはこの時期だけなのでやっぱりこの時期にきてよかった。
これまでさんざん観光地とは言えない小さな見どころにフォーカスしまくってきてなんだが、やっぱり絶景とみんなが言っているものは良い。良い景色をみて普通に感動してしまった。さっきまで鯉をみていいな~とか言っていたのに振り幅がでかい。
でも映画だってハリウッド大作が見たい時もあれば単館マイナー作品を見たい時だってある。旅だってどっちもあるからいいのだ。詰め込みすぎて情緒がちょっとおかしくなっているけれど。
最高の風景をみて旅も終わり、みたいな雰囲気がでたがまだ先がある。この通り日が沈んでしまったので本格的に暗くなる前になるべく回りたいので次に向かおう。余韻取り置きサービスがあったら使いたい瞬間第1位である。
新居町駅:日本で唯一のリアル関所
お隣の新居町駅にある新居関所は日本で唯一の実際の当時の建物が現存する関所だ。全国に53か所あった関所のうち建物が残っているのはここだけなのでけっこう貴重である。
例のごとく年末年始で入館ができない(年末年始じゃなくても16:30までなので入れないが)ので柵の前から関所の様子をうかがおう。
この関所は全国の関所の中でも最高峰の警備体制がとられていたらしい。外から見ただけなのでこの建物をどのように使っていたかはよくわからないが、ここを多くの人々が行き交い、中には先へ進めない人もいただろう。先に進めないことが人生を変えてしまった人もいるかもしれない。
そう考えると過去の様々な感情が染みついたいわくつき物件のようにも思えてきた。貴重な建物であることは間違いないが、ずっと残り続けていることにちょっとした執念のようなものも感じてしまう。薄暗い中で見たこともあってそんなことを考えてしまった。
鷲津駅:浜名湖に一番近い駅
さて、あと二つで静岡県が終わる。いよいよ…!という気持ちを落ち着けてやってきたのは鷲津駅だ。
鷲津駅もこれといって見どころを見つけられていなかった。とりあえず地図をみると浜名湖本体に一番近いのはこの鷲津駅のようだ。弁天島駅も近いんだけど駅前に広がっているのは海に面した浜名湖の子どもみたいな部分なので、浜名湖の「本体」に一番近いのはこの鷲津駅ということで、どうぞよろしく。
旅も終盤となりちょっとしたことでも感動する身体にすっかり仕上がってしまっているので、暗闇の岸で波の音を聞くだけでめちゃくちゃエモい気分になってしまった。ここまで来たなぁと真っ暗で全然先が見えないのに遠い目をしてしまう。
5分ほどぼーっと浜名湖を眺めていると走馬灯のようにこの旅で見たものが思い出され、なんだか妙にしんみりとした気持ちになってしまった。最後の駅を前に感情は整い切った。さぁいざ最後の駅へ。
新所原駅:静岡県と愛知県の県境
最後の新所原駅といえば最近木村さんが見に行っていた岩が思い出されるが、今回は旅の締めくくりとして駅から少し先にある静岡県と愛知県の県境を見ておきたい。長かった静岡県がついに終わる。
駅から3分ほど歩くと、もうそこは静岡県のはじっこだ。
別に周りには何もないただの道路で一人興奮して写真を撮りまくってしまった。何の変哲もないこの県境にここまで興奮しているのは俺くらいだろう。この喜び、伝わっているだろうか。
愛知県側から振り返ればそこには2日間かけて横断してきた静岡県がある。やっと静岡県を外から見ることが出来た。これまでみてきた大小関わらず全てのみどころにありがとうと言いたくなる。飽きさせずにここまで連れてきてくれてありがとう、と。
さて、ここまで長かった~それでは~とここで締めくくれればよかったのだが、弁天島の鳥居をみるために飛ばしてきてしまった駅が2つある。全ての駅で降りて駅とツーショットを取るノルマをここまできて曖昧にして終われないのでちゃんと戻って締めくくろう。
高塚駅:さわやかリベンジ
飛ばしてきた駅のひとつめは高塚駅だ。この駅を飛ばしたのにはちゃんと理由がある。
ここ高塚駅から歩いて行ける範囲にさわやかがあるのだ。 昨日の夜受付終了で食べられなかったさわやかに最後にリベンジしたい。
待ち合わせスペースの発券機には「110分待ち」と表示されていた。ここで2時間弱待って食べて帰るとこの日中に東京に帰れなくなってしまう。。残念ながら今回は諦めるしかないようだ。次こそは食べてやるからなさわやか!待ってろよ!!
浜松駅:お土産を買って帰ろう
というわけでさわやかリベンジに失敗してしまい、県境もみて気持ちが終わりになってしまった俺には浜松駅を観光する余裕は残されていなかった。浜松駅は見どころだってたくさんあるし、だれも文句は言わないだろう。お土産を買って新幹線で帰らせてください。
というわけで2日間で東海道線 静岡県内の駅全降り旅 全41駅をやりきった。 怒涛のような旅で息をつく間もないとはまさにこのことだったが静岡県の魅力は鬼のように吸収できたと思う。
大急ぎで駆け抜けた旅を振り返ると色々な見どころがあったが、目まぐるしすぎて結局一番記憶に残ったのは結局「静岡ってやっぱり長いな」ということだ。でも長いということは同じ県とは思えないくらいいろんな顔をもっているということもよく分かった。一括りにできない、というのが一番の静岡県の魅力だ。ありがとう静岡県!
この記事で紹介した見どころはこちらの地図からどうぞ。
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