『人物叢書 最上義光』を読んでから山形に行ってみたら、今まで幾度となく来ていた山形がいつもと違った場所に見えた。来るたびに眺めていた駅前の風景も、最上義光の城下町だった時代が基礎にあるのだ。
県内にはまだまだ最上義光のゆかりの地がたくさんある。今回は短い滞在だったが、改めて山形に来る時は、時間をたっぷりとって歴史を追いかけてみたいと思う。
帰りがけ、山形駅のお土産ショップを物色していたら、「最上義光」という名のコーヒーが売られていた。
公園内には最上義光の銅像があって、1977年に作られたものだというからこれもきっと子どもの頃から何度か目にしてきたはずなのに、まったく記憶にない。それがどうだ。今の私にとっては記念撮影せずにはいられないスポットになっている。聖地巡礼だ。
「東大手門櫓」が無料公開中だというので行ってみると、内部に展示コーナーがあって、最上義光を描いたイラストが飾ってあった。それによると、義光の身長は180~190㎝だったそうだ。
「わしの好物は塩鮭なんだよ。」とも書かれていた。塩鮭が好物で、180㎝以上あった最上義光。だんだんイメージが上書きされていくのが面白い。
さらに公園からほど近い場所に「最上義光歴史館」という施設があって、もちろんそこへも行ってみる。
入ってすぐのところに最上義光の木彫りの像が設置されていて、これもまた自分のイメージを揺さぶってくれた。
展示物は撮影禁止だったが、最上義光の直筆の手紙があったり、ゆかりの日本刀があったりして、最上義光という人が本当にいたということがじわっと身近になった。
一つだけ残念だったのは、最上義光が愛用していた兜である「三十八間総覆輪筋兜」というものがいつもならここに展示されているそうなのだが、それが今はちょうど別の博物館に出品されていて見ることができなかったこと。
兜には長谷堂合戦で敵将であった直江兼続の鉄砲隊から撃たれた球の跡が残っているのだそうだ。今度山形に来る時は実物を見てみたいな。
最上義光にまつわる色々を目の当たりにできて、すっかり満足した。この日は親戚の家に行く予定があったので、山形市村木沢というエリアに移動した。
親戚に「いやー、最上義光について読んだら霞城公園を歩くのが楽しくなったよ」というように話したところ、その村木沢という土地にも最上義光関連の史跡があるというので驚く。
調べてみたところによると、村木沢に「阿弥陀堂」というお堂があって、そこは最上義光の妹である義姫が作らせたものなのだという。
ちなみに義姫は、伊達家に嫁ぎ(この時代は政略結婚が多く、伊達家との関係を穏当にする意味合いがあったらしい)、伊達政宗を産んだ人である。後に最上義光と伊達政宗の和睦に一役買ったとも言われている。
その義姫が一時期、宮城県から山形に身を寄せていた時があって、その頃、阿弥陀堂をお参りしながら村木沢に暮らしていたらしいのだ。その阿弥陀堂が今も残っているというので親戚に自転車を借りて行ってみることにした。
親戚の家から10分ほどで阿弥陀堂にたどり着いた。お堂の前には猫が日向ぼっこをしていて、のんびりしたムードである。こんな場所があったのか。
お堂の脇の立札には山形から戻った義姫の警備を加藤掃部左エ門という人物が行っていたと書いてあった。
「山形から戻られた義姫は南の館の草庵で阿弥陀如来を信仰し念仏三昧の生活をしていた。最上義光の公の命令により加藤掃部左エ門が妹の守護役を命じられ悪戸の地に住まいすることになる」と書いてあった。
この辺りには加藤姓の家が多く、私の親戚の名字も加藤なのだ。後で親戚に聞いてみると、今この阿弥陀堂の管理をしている方とも遠くない関係らしい。なんだろうか、この不思議な感じは。
霞城公園を歩いた時もそうだったけど、今まで当たり前に通り過ぎていた景色に別の層が加わるような。ちょっと鳥肌が立つような面白さがある。
子どもの頃からよく見てきた村木沢の景色の中に、まさか最上義光から繋がる歴史があったとは。ぼーっとした気分のまま親戚の家に自転車で帰り、「あの阿弥陀堂、貴重なんだよ!」とまくしたてたが、親戚は「そうなの?へー」という感じなのがまた面白かった。
『人物叢書 最上義光』を読んでから山形に行ってみたら、今まで幾度となく来ていた山形がいつもと違った場所に見えた。来るたびに眺めていた駅前の風景も、最上義光の城下町だった時代が基礎にあるのだ。
県内にはまだまだ最上義光のゆかりの地がたくさんある。今回は短い滞在だったが、改めて山形に来る時は、時間をたっぷりとって歴史を追いかけてみたいと思う。
帰りがけ、山形駅のお土産ショップを物色していたら、「最上義光」という名のコーヒーが売られていた。
しらべ旅
事前に本で調べてから行く旅。知識で喜びを増やす旅です。
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