特集 2019年6月6日

ビルの仕組みが見えるビルに行ってきた

ビルにある謎の設備が分かるようになりたい。

天井でむき出しになっているダクトには何が通っているのか。ボイラー室の中では、お湯がぐつぐつ湧いてるのか。

そういう建物のいわば「内側」をスケルトンみたいにして見せてくれるビルがあるというので、行ってきた。

1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

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建物を管理するための研修センターだった

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その建物は、ビルを管理したりする東急コミュニティーという会社の技術研修センターとして建てたもので「NOTIA」というそうだ。できたばかりらしい。

研修センターなので、本来は建物を管理する立場の人がいろいろ学ぶ目的で作られている。だけど素人にとってもいろいろとぐっとくるポイントが多かったのだ。

1 ふだん見えない内側が見える

中に入ってみて興奮したのは、ふだん壁や箱に隠されて見えないものの内側がスケルトンのように見えるようになっていることだ。

たとえばビルの屋上に給水タンクがあるのを見たことがあると思う。

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でもその内側とか見たことないですよね。

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それをこんなふうに見ることができる。中にセンサーがあって、水位が下がってきたら自動で水を汲んでくるようになってるとのこと。ほー。

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エレベーターのシャフトの内側もふだんはあまり見られないけど、

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ここではとうぜんスケスケになっていた。それだけじゃなくて、よく見ると「昇降路竪穴区画」みたいに書いてあるのだ。

きっと「エレベーターシャフト」なんていうのは一般人で、プロは「昇降路竪穴区画」っていうんだろう。「きのう竪穴区画がさ〜」みたいにさりげなく会話に混ぜて使おうと思う。

それから、感動したのはシャッターだ。

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「シャッターあるある」として、シャッターにこんなふうに点々と汚れがついてるのを見たことないですか? これはシャッターを巻き上げる機械の歯車の汚れが転写されたものなのだ。それは知識としては知っていた。

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でも実物は見たことなかった! だって「シャッターを巻き上げる機械のスケルトン」なんてニッチなものふつう見たことないですよね。ないですよね?

おもわず2回確認してしまうくらい、めったに見られないものがことごとくスケルトンになっているのだ。ここはありがたい場所だ。

2 壁に謎の記号が書いてある

それから壁にいろいろと、見る人が見れば分かるような謎の記号が書いてあるのだ。これもいろいろとくすぐられるものがあった。

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たとえば上の階段には 「250 ≧ 240」のように書かれている。

ちょっと考えてみてほしい。もちろん 250 は 240 より大きいか等しい。でも、そんな当たり前のことが壁に書いてあるわけじゃないだろう。もしそうだったら逆に東急すごいなと思う。

おそらくこのタイプの建物の場合、階段の踏面(足を置く部分)の長さが建築基準法で24cm以上と決められていて、実際には 25cm ですよという意味なんだろう。しゃれてる。

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ここでは「ガルバリウム鋼板 t0.5」とか、ふつうなら表に出さない部材の情報が書いてあるし、ふつうなら見えない壁の向こう側の断熱材とかが見えてる。

「胴縁@600以内」とかの意味は分からないけど、その分からなさ加減もいい。なんかちゃんと考えて作られてるんだなー!(当たり前だ)という謎の安心感があるのだ。

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これもいい。プレストレストコンクリートというのは、中の鉄筋(など)に工夫がされているため縮もうとする力が働いているコンクリートだ。なので曲がりにくく、強い。

みたいなことは図では見たことあった。でも実物は初めてみた! 左側の丸くなってるところに鉄筋的なやつが埋まってるはずだ。なるほどー。

ここはたぶん、もっと勉強してから来ればそのぶんだけ面白い場所だと思う。

3 火災訓練ができる

部屋の天井に本気の火を近づけたことあるだろうか。ないですよね?

ここでは火災訓練ができる。その一環としてたとえばスプリンクラーを作動させたりできるんだけど、そのために棒の先に本気のガスバーナーをつけて、その火を天井の火災感知器に近づけるのだ。

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天井を火であぶるなんてやったことない。

「大丈夫? 天井、焦げない?」と思いながらしばらく待っていると「バシュン!」という大きな音がして、天井からすごい勢いで水が降ってきた。

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霞むほどの水量だ。

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ちょっとした「水浴びするペンギン」みたいな感じになった。上野動物園ぽさがある。

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出てきたときは驚きのあまり髪が膨らんでいた。浦島太郎が白髪になったのに近いと思う。

4 ビルの外とのつながりが分かる

みなさんは、ビルの前にこういうのが立っているのを見たことないですか。

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送水口といって、主に高いビルの足元にある。ビルの高層階で火事が起きたとき、地上の消防士さんがここからビルの内部に高圧の水を送る。すると上にいるべつの人がそれを受け取って放水できるという仕組み。

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高層階で実際に水を受け取るのがこの放水口格納箱だ。見たことあるでしょう。

実際には右のみたいに蓋がしてある。でもここではいろんな設備がスケルトンになってるので、左のみたいに中身が見えちゃう。ホースがくるくるになって格納されてるんですね。

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『君は世界初の「送水口博物館」を見たか』より

送水口と放水口の仕組みは、知識としては知っていた。でもなるほど確かにつながってるんだ、というのがこうやってセットで分かるのは嬉しい。(なお、この放水口は概念としての展示で、実際には室内の水槽に繋がっています)

なお、放水も体験させてもらえるというので、さきほどに続いて体験しちゃいました。

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最初、水が届くとホースを持つ手に衝撃がくるのでびっくりした。それからバルブをゆっくり開けると、水が出る。へっぴり腰だけど、水はちゃんと文字どおり火に当たっている。概念としての火。

4 操作盤の中身が見られる

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建物のなかって、たまにこういう絶対に素人は触っちゃいけない系の設備がありますよね。「変電設備」とか書いてあるやつ。それを開けて見せてもらうことができる。(訓練用のやつは触ることもできる。そうじゃないのは見るだけ。)

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たとえばこれは「コンデンサ盤」と書かれたパネルの中身。下にある灰色のやつがコンデンサーだという。むちゃくちゃでかくないですか。

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ぼくが知ってるコンデンサーはせいぜいこんな大きさだ。さっきのでかいコンデンサーで、使った電気の交流の位相を元に戻してから返すんだそうだ。そうじゃないと電力がロスするから。なるほどー。分かんないけど分かった。

5 あえて詳しく書いてない

天井のダクトに鮮やかな色が塗ってある部屋があった。きっと、色ごとに冷房とか排気とかの役割が違うんだろう。

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でも、その意味はどこをみても書いてない。

さっきの 「250 ≧ 240」もそうなんだけど、この建物に書いてあることは、内容が最小限のことが多い。ここに来て研修を受ける人たちに自分で気づいて欲しいからだそうだ。

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編集部の石川さんとテクノ手芸部のよしださんも一緒でした

でもぼくに分かるのはダクトの太さの違いくらいなので

「あの太さだとブルースウィリスは通れないかなー」

ともっぱら映画ダイ・ハードのことを想像したりしていた。こんなふうに、あえて詳しく書かないというのもこの建物の特徴のようだ。

謎が残ることになったけど、それもまたいいのかもしれない。


まとめ

この建物のなかには、この建物自体の建築設備とは別に、訓練用の建築設備一式が入ってる。建物のなかに、もう一個建物が入っているようなイメージらしい。だからふだん建物でありがちなトラブルをここで再現させて、訓練させることができるという。

それは素晴らしいし必要なことだろうけど、ぼくにとっては中身を見られたのがふつうに嬉しかったし、ありがたい建物だった。他の場所でもこんなふうになってたら嬉しいんだけどなー。

取材協力:東急コミュニティー 技術研修センター「NOTIA」

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