3年ぶりの開催だ
鹿せんべい飛ばし大会は、奈良の若草山で行われているイベントだ。大会用の特大鹿せんべい(約20センチ!)を、山の上から投げてその飛距離を競う。年に2〜3度行われているらしい。
1月下旬に行われたのは、若草山の伝統行事・山焼きに合わせた「山焼き記念大会」。感染症対策のために開催できなかった期間を経て、実に3年ぶりの開催だ。
あいにく最強寒波がやってきたタイミングであるが、そんなことにビビってはいられない。今年は飛ばすのである。鹿せんべいを。
受付開始と同時に、シカもスタンバイOK
太陽の光が強くなり、雪も溶けてきたころに大会の受付がスタート。
受付開始の12時にはもうエントリー希望者の列ができている。のんきに近くのお店で親子丼を食べていたので出遅れたかと思ったが、わたしも無事に参加登録ができた。
そして不思議なことに、人間だけでなくシカたちも集まり始めている。
奈良公園の鹿せんべい売り場近くにタムロしている鹿は見慣れた光景だが、まさか3年ぶりに開催される大会のことまで察知しているのか。
それとも、人が集まっているところにいけばせんべいが食べられることを知っているのか。
いきなりチャンピオン経験者からスタート
人もシカも集まったところで「予定より早いけど、みんな待ってるしもうやりましょか」と、おもむろに大会がスタート。
シカの格好をした「シカオさん」による始投式でも、そこそこの飛距離が飛び出して歓声があがった。シカもせんべいめがけていっせいに走っていって威勢がいい。
ところで大会の開始を待っているあいだに気になったのだけど、先頭の数名はかなり高度な会話を繰り広げているようである。
内容はこういう感じ。
「◯◯さんの最高記録って70メートルくらいでしたっけ」「たしか74.55メートルですよ」
「✕✕さんって何回優勝してるんでしたっけ。3回?」
どうやら話を聞いている感じだと、先頭に並んでいる数人は歴代の優勝経験者ばかりらしい。もっとゆるい雰囲気の勝負を予想していたけど、ガチである。
そしてそんな会話をしていたトップ集団から、いきなり44.5メートルという好記録が生まれた。例年の優勝記録にも匹敵する飛距離だ。序盤から飛ばしてますね(鹿せんべいを)。
大会のルールは「食べてるシカの右前足まで計測」
チャンピオン集団の記録に圧倒されていたが、私より後ろには一般(?)の参加者も多いようだった。
みんな次々に投げられる鹿せんべいを見ては「シカが食べちゃってるけどどうすんの」とか、ルールについて疑問を口にしている。わたしも気になる。
付き合いで野球を見に来た人みたいになっちゃっているが、その点は大会側も織り込み済み。ルールについては逐一アナウンスがあった。
たとえば、私たちが気にしていた「シカがせんべいを食べちゃった場合」。これは、食べている鹿の右前足までが飛距離として判定されるらしい。
練習の成果を出すぞ
さて、ルールもつかめてきたところで、いよいよわたしの番である。
ところでなんですが、実はわたくし、この大会のためにフリスビーを使った特訓を行ってきた。何事にも準備が肝心。出場するからには、いい記録を残したいでしょう。
調べてみたところ、フリスビーを投げるには、テイクバックと手首のスナップが重要だという。野球のピッチャーと似た理屈なのかもしれない。元ヤクルトの五十嵐も、速い球を投げるにはテイクバックからの加速を意識しろって言っていた気がする。