まあまあか
東京駅はうまくいった。これで気をよくしたんだけど、残念ながら偶然だったようだ。
とはいえ、渋谷からも(まあまあ)人は消えた。収穫は、じわじわ消えていくアニメーションが妙ちくりんで面白いってことかな。これはいろんな場所でやったら変でいいと思う。
渋谷のスクランブル交差点にはいつも大勢の人がいる。人のいない純粋な交差点の写真を撮ろうと思ったら、すごく早朝に来るしかなくてたいへんだ(それでも誰かしらはいる)。
昼間の渋谷でも人のいない写真を撮る方法を考えてみたので、試してみた。
渋谷のスクランブル交差点みたいな場所で、人のいない写真を撮るための方法の1つは、長時間露光だ。
カメラのシャッターをあけっぱなしにして何秒間も撮影すると、なんとなく人がいなくなったような写真を撮ることができる。
こんな感じの写真、見たことありますよね。
長い時間やればやるほど人が消えるんだけど、それでも人の足元みたいにあまり動かない部分がぼやーっと残ってしまう。
これをなんとかする方法を考えてみた。
ふつうの長時間露光は、言ってみればピクセルごとに色を時間で平均したものだ。あるピクセルが2秒間は真っ白、つぎの3秒間は真っ赤だったとすると、露光の結果はその平均としてピンク色になる。
長時間露光で、ところどころ色がにじんだ感じになっちゃうのはそのためだ。
そこで、ピクセルごとに一番長い時間を占めていた色を選ぶことにしたらどうだろう。
具体的には、カメラを固定して動画を撮り、ピクセルごとに一番長い時間を占めていた色を、そのピクセルの色とする。すると、動かないものだけが残って、人とかは消えるんじゃないだろうか。
この方式(仮に「多数決露光」とする)で画像を処理するためのプログラムを書いてみた。
この方法で本当に人が消えるのか、実際に試してみよう。
まずは東京駅にやってきた。丸の内側は最近きれいになって、観光客もよく見かける。ふつうに写真を取れば、こんなふうに誰かしらは映り込むはずだ。
ではさっそく多数決露光をしてみよう。
なんと! 右端にいたご夫婦が、左に歩くにつれてじわじわと消えてしまった。最後のコマなんかほとんど消えかけてる。
人がだんだん消えていくのは、最初のコマからその時点までで多数決を取っているからだ。
こんなふうになるとは思わなかった。消えていくようすをアニメーションでも見てみよう。
これはおもしろい。
ここでも動画の0秒めからその時点までで多数決をとっているので、人がだんだん消えていく。
「画像から人を消す」系のやつで、こんなふうにじわじわ消えていくパターンってあんまりないと思う。Photoshop とかだともっとスパッと賢く消すだろう。
こうやってじわじわ人を消していき、最終的に得られた画像はこんなだ。
すばらしい。昼間なのに東京駅前に人が全然いない写真が撮れた。できすぎなくらいだ。(よく見ると右下にずっと動かなかったサラリーマンの跡がある)
つぎは新宿でやってみよう。
こんどのターゲットは車だ。同じ方法で、車もちゃんと消えるだろうか。やってみた。
これもまたおもしろい。右下から来るバスがじわじわと消えていくし、反対車線を向こうから来る車もじわじわと地面に埋まるかのように消えていく。いっぽう、バスの向こうで停車している白い車たちは動かないので消えない。
新宿での最終結果はこんなふうだ。
手前側の道路からは車が消えた。歩道橋や歩道からも人は消えた。ここまではいい感じだ。でも右奥のほうに車が微妙に残っている。
赤信号でずっと止まってる車などがあるときびしいっていうことだろう。現実が見えてきた。
さて、いよいよ渋谷の交差点でやってみよう。
これまでと同じように人がじわじわと消えていく。面白いことに、人々の下半身が消え、上半身だけで歩いているように見える。自転車も車輪が消えている。
渋谷交差点での結果はこうなった。
↓これが
こう。
まず、少なくとも横断歩道からはきれいに人が消えている。そこはOK。ただし歩道の地面に黒い草みたいなのがいくつも生えてる。これは人の靴だろう。右側には信号待ちをしているピンクの男性が見える。
新宿のときと同じで、きれいに背景だけが残ったとは残念ながら言えない。この方式は、赤信号と渋谷の人の多さには勝てないようだ。理屈から考えればそのとおりだけど、ちょっと残念。
とはいえ、動き続けるものであればまあまあうまくいくようだ。
人が消えた結果としての写真よりも、じわじわ消えていく過程を見るのが面白いという気もする。
東京駅はうまくいった。これで気をよくしたんだけど、残念ながら偶然だったようだ。
とはいえ、渋谷からも(まあまあ)人は消えた。収穫は、じわじわ消えていくアニメーションが妙ちくりんで面白いってことかな。これはいろんな場所でやったら変でいいと思う。
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