パッケージの違いでわかるベトナムと韓国の日本イメージ
今回は味まわりについてだけふれたが、パッケージも似ているようで違いはあった。たとえば色、元祖の日本がまっ黄色に対して、ベトナム⇒韓国の順にオレンジに寄っていく。また、日本語が、ベトナムの方には書かれていて、韓国の方には書かれていないというところも。
これは想像になるけど、「マックスコーヒーは日本発」という事実が、ベトナムでは強みになる一方で、韓国では逆に働く(かも)、ということなのかもしれません。どっちにしろ味はぜんぜん違うけど。
黄色に茶色いギザギザという独特模様のマックスコーヒー。正式名称は「ジョージア マックスコーヒー」という。千葉生まれという地域色濃い飲み物だが、なんと海外展開している。韓国とベトナム。飲み比べるとぜんぜん味が違った。日本コカ・コーラさんにも話を聞くと、ものすごーく納得の背景がそこにはあった。
千葉をはじめに、茨城と栃木の関東3県で限定販売されていた缶コーヒー、マックスコーヒー。今は全国展開されてるらしいが、大阪出身の自分にはてんで馴染みがないので、ピンともこない。試しに周りに「思い出あります?」と聞いてみたところ…めちゃくちゃ出てきた!
千葉県民とマックスコーヒーの思い出
・千葉県民には日常のものでした
・地元に帰るとマッ缶は必ず買いますね
・仕事が佳境に入るとよく買ってました
・近所のスポーツセンターの自販機にあって子どもの頃よく飲んでた
・車やバイクいじりを手伝ってくれた友達にはマッ缶をおごるのが昔からのしきたり
千葉の方にはいまさらで申し訳ないが、素直な感想が…え!そんなにだったの!?である。千葉・イズ・マックスコーヒーみたいな話はちらほらと聞いていたが。あ~でも、大阪人的にはこれを551の豚まんに置き換えるとものすごく分かるな。そしてマッ缶と呼ぶ…へぇ…。
答えてくれた人は全員千葉出身かゆかりが深かった。千葉と他2県でもマッ缶愛にギャップがあるのだろう。そんなことね~ぞ!とお怒りの茨城人と栃木人は、非関東人のたわごとだと大目に見てください。
とりわけおもしろかった話がこれ。
マッ缶を軸にいじられるのか!おもしろ!551の豚まんでいえば、からしをつけるかつけないかだろうか。いや…いちいち豚まんでたとえるのはやめよう無理がある。からしいじりなんてものもなかったし。
このエピソードを読んで昔を思い出した。高校の頃に友人を某ファストフード店に誘ったところ、「あんなん昼に食べる気せんわ」と断られ、そんなファストフードを毛嫌いする観点があったのか!と衝撃を受け、段々と自分も某店に行かなくなったということがあった。しかし考えてみれば「ファストフードはだいたい昼食べるのでは?」と、20年経った今になってモヤモヤしてきた。思い出すんじゃなかった。
閑話休題。今回はファストフードの話でもなければ、マッ缶エピソード集でもない。それはそれでおもしろそうだけどまた今度にしよう。
そんなマックスコーヒー!冒頭に書きました通り…
「千葉のローカルドリンク」という認識くらいはあったので、なんでここに!?と驚いた。輸入品と思いきや下部を見ればお分かりだがバッチリベトナム語のパッケージなので現地で製造されたものらしい。
そしてベトナムだけではない!
ベトナム版同様に、現地の言語…つまりハングルが記載されているので、こっちで製造されたものだろう。マックスコーヒーはいちおう今は日本全国で展開されているそうだが、少なくとも大阪で見かけたことがないのでやっぱりまだまだローカルドリンク。それがまさか、西日本を飛び越え海を飛び越え、ベトナムと韓国で展開していたとは。
ベトナムも韓国もミルクコーヒーが好んで飲まれる国、だから、ミルクコーヒーである千葉生まれのマックスコーヒーがあるというのは分からないでもない。しかしその味は同じなのか?飲み比べてみよう。
とは言ったものの、味覚にはさっぱり自信がない。
昔ベトナムの利きビールをしたことがあって、その場にいた6人中私がビリケツだったので、きっと味覚偏差値はいいとこ45くらいだろう。いつもおいしい料理をつくってくれた母になんか申し訳ない。
そこでプロにご協力いただいた。西峯さんと彼の友人の小倉さんだ。
西峯さんは創業半世紀近くの喫茶店を営む、コーヒーのプロフェッショナル。以前当サイトでも世界のコーヒー話をしてくれた(コーヒーと世界史)。小倉さんはふだんイタリアで料理人として働いているそう。イタリアといえばコーヒーの国。エスプレッソが都心でも120円くらいで飲めるらしい、いいな。と言いつつエスプレッソそんなに飲まないけど、安い=いいなは消費社会に生きる人間の性である。
私「ちなみにお二人、日本製を飲んだことは?」
西峯さん「ないですね」
小倉さん「ないです」
私「私もないんです」
一同「どっ(笑)」
「どっ」は嘘だが、マックスコーヒーに関してはこの通り全員がど素人。なにひとつ思い出もないので、マッ缶愛する千葉人には身もふたもない感想になるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
■日本のマックスコーヒー
まず本家本元マックスコーヒーから。
飛び出した発言やキーワードをそのまま箇条書きで挙げてみます。
コーヒー>コーヒー飲料>コーヒー入り清涼飲料と、コーヒーの分量によって呼称が変わるらしい。専門書がすぐ出てくるのさすがプロ。
一言でまとめると、「キャラメルドリンク」。
千葉県民のみなさんのマッ缶エピソードを踏まえて、「子どもも飲める飲み物」という見方をすれば、なるほど、的を射た表現だ。
■韓国のマックスコーヒー
つづいて韓国のマックスコーヒー。
日本と比べると、顆粒が残る。ほんとにクリープ使ってるかも。
一言でまとめると、「クリープ感の強いミルクコーヒー」。
ちなみにクリープクリープと言ってるが、これは商品名らしい。要するに粉ミルク感が強かった。韓国は3in1の粉末状インスタントコーヒーが国民的ドリンクといってもよく、辛いものが多い韓国料理とよく合うとか。その特徴がマックスコーヒーにも顕れているのだと思う。
■ベトナムのマックスコーヒー
さて、いよいよきっかけとなったベトナムのマックスコーヒー。
一言でまとめると、「青っぽいコーヒー風飲料」。
確かにベトナムはハーブをよく使う食文化だが、コーヒーに入れるとは聞いたことがない。ただ、もしこれだけロブスタ種の豆を使っているのなら、もともと苦味の強い品種なので(だからベトナムで練乳を入れるようになった説もある)、それが青っぽさに感じる可能性も。
改めて3つを並べると、
日本⇒キャラメルドリンク
韓国⇒クリープ多めのインスタントコーヒー
ベトナム⇒青っぽいフルーツ感の強いコーヒー風飲料
こんな感じ。
結局同じ名前でも、味も香りも飲み心地もすべてが違う別物だった。
ローカライズとはいえ、ここまで変えるならいっそのこと別名でもいいんじゃ?と思っていたが、そのあたりの疑問を日本コカ・コーラさんにぶつけてみると、驚きの事実が判明した。なんと、「日本コカ・コーラ社は関わっていない」という。もう少し詳しく書くと…。
「ジョージア マックスコーヒーは日本生まれだが、製品の権利は本社アメリカのコカ・コーラ社に帰属し、本社の下、各国でそれぞれの市場においてビジネスを展開している。そのため、日本コカ・コーラは日本以外の国の製品については関与していない。」
ということになるそうだ。
アメリカ本国ではマックスコーヒーが販売されていないので、製造もされていないと見ていいだろう。ここからは想像も入るが、販売契約を結んだところで、中身は当然ゼロからつくる。でも日本側との契約じゃないので、本家の製法が分かる訳もない。なら、そりゃあ、ミルクコーヒーであっても、それ以上は似ても似つかぬ味になるはずだ。
海外のマックスコーヒーはもはや「日本からやってきたマックスコーヒー」というよりも、「コカ・コーラ社のミルクコーヒーというカテゴリーにマックスコーヒーというブランドを使ってる」という印象を受けた。なんというか、サランラップとか、ホッチキスとか、そのカテゴリー商品がパイオニア的商品名で呼ばれてるような感じ。まぁ、当のコカ・コーラ社が出してるんだから、マックスコーヒーには違いないけど。しかし日本生まれのマックスコーヒーと同じではないと。
そこで韓国はクリープ感が強いとか、ベトナムはどことなくハーブ感(ロブスタ種感?)があるとか、そうした現地の食文化があらわれるのはなるほど納得。でもこれはこれで、それぞれの土地で「マッ缶」のイメージが形成されるのかもと思うと、胸に熱くくるものはある。
今回は味まわりについてだけふれたが、パッケージも似ているようで違いはあった。たとえば色、元祖の日本がまっ黄色に対して、ベトナム⇒韓国の順にオレンジに寄っていく。また、日本語が、ベトナムの方には書かれていて、韓国の方には書かれていないというところも。
これは想像になるけど、「マックスコーヒーは日本発」という事実が、ベトナムでは強みになる一方で、韓国では逆に働く(かも)、ということなのかもしれません。どっちにしろ味はぜんぜん違うけど。
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