特集 2020年5月8日

カレーの食材で作れる世界の料理

ジャガイモ、玉ねぎ、人参。この3つが揃えば「あら、今日はカレーですか?」と言ったもんである。私は言われたことないけれど、言われてそうなもんである。サザエさんあたりで。

でもちょっと待ってほしい、カレー以外の可能性もあるのではないか?むしろ言われたら変えてやりたくなる、そんなアマノジャクたちの支えになりたい。

1984年大阪生まれ。2011~2019年までベトナムでダチョウに乗ったりドリアンを装備してました。今は沖永良部島という島にひきこもってます。(動画インタビュー

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カレーの食材にルーではなくアレをぶち込む

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改めて並べてみると圧倒的カレー感、肉じゃがでもいいはずなのに。もはやあのまろやかでコクのある香りが漂ってきそうなもんだ、そんな表現ですら某カレーのルーの商品名に引っ張られてしまっている。

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ジャガイモと玉ねぎと人参を見たらカレーを連想。その心は、海パンとゴーグルとシュノーケリング姿の人を見たら抗いようなく「海」を連想するのに似ているのかもしれない。しかしそこをあえて曲げて通ってみたい、その姿で山頂を目指すくらいの裏切りを見せてほしい。

理由?「カレーをつくる」と見透かされたからだ!

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だから、
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ここでルーじゃなく、
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あ~え~て~の~!
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コーーーーーーーーーーラ!!!

はい。そのまんまコラ!と怒られそうだけど、ちょっとお待ちくだされ。これ、決してふざけたワケじゃないんです。実をいうとこれ…!

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煮詰めると、
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せいっ!うまそう!

ポジョ・ギサド・コン・コカコーラ」というグアテマラの料理。意味はまんま「鶏肉のコーラ煮込み」。そう、実在するものなのです!

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カレーの食材で作れる世界の料理

と言いつつ私もはじめて作りました。いや~、おもいのほか形になった!実はこのレシピ、もともとある人物から教わったものなんです。

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その人物がこちら、世界の料理のプロ、本山尚義さん。「世界の料理のプロ」って「全知全能」みたいな響きあるので補足をすると、世界を旅して料理修業してきた人です。なんだ結局すごい人じゃないか。

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料理人であると同時に本も書かれており、真ん中の「全196カ国おうちで作れる世界のレシピ」が今大反響重版しまくりらしい(当サイトでは以前こちらの記事でもお話をうかがいました)。そっか、みんな家にいるし、外国料理作れると楽しそう。196カ国も料理があれば一日一食つくるうちにいろいろ落ち着いているかもしれないし。

なおこんなご時世ってことで現在全ページ無料公開中。えらい人だ!

んで本題。カレーってつまりはシチューである。シチューはそもそも英語で(語源はフランス語らしい)、これもつまりは煮込み料理だ。だったらほかの国でも同じ食材を使った料理ってあるんじゃないか?

水嶋:ありますかね?

本山さん:そうですね、だったら…「グアテマラの鶏肉のコーラ煮込み」(中米)、「マリの鶏肉さわやかマスタード煮込み」(西アフリカ)、「ベルギーのワーテルゾーイ」(西欧)なんてどうでしょう?

おぉ…おぉ!ポンポン出てくる!

本山さんのレシピ検索能力はGoogleをはるかに凌ぐ。そんなワケで最初につくったものがグアテマラの鶏肉のコーラ煮込みなのでした。ちなみにパプリカやピーマンも入っているけど、カレーと同じ食材が主体のメニューって理解でおねげぇします。先に書いておくと、これとマリ~は前述のレシピに載ってあるのでリンク先で探してね。あとワーテルゾーイの正体は最後に。引っ張るような正体じゃないけど。

余談だけど、さっき書いた通り向こうの言葉(スペイン語)では「ポジョ・ギサド・コン・コカコーラ」。これだけで向こうじゃコカ・コーラはやっぱりメジャーなんだな~って分かっておもしろい。ちなみにコーラはメキシコ産が一番うまいって聞いたことあります。北米だけど。あと「ポジョ」って某洋ドラに出てくるチキン店の名前でよく見た。むかし得た雑な知識が、不意にシッカリと回収されていく…。

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食べてんだけど、目の前に両親がいるのでリアクションしづらい。自撮りが精いっぱい。

誤解されないように言っておくと、親の前では無表情という訳ではなく、さすがに食べてるときにいきなり「おいしい!(カシャー!)」と自撮りをするのは抵抗があるからだ。でも、無表情の顔をわざわざ載せることも抵抗があるし、無意味だ。だからリアクションはこれきりにします。しかも気づいたらこの日ヒゲ剃ってないわ。コロナめ。

では感想です。今実家なので両親にも食べてもらいました。 

「グアテマラの鶏肉のコーラ煮込み」の感想
 
母「ハヤシライスっぽいね、香辛料入ってる?」
私「タイムが入ってるからそれかも」
母「コーラでしょ?スパイス入ってるからそれもあるかもね」
父「塩がほしい」
母「俺の調整が足りなかっただけやわ」
 
コーラで煮込むことが最大の特徴のこの料理。炭酸で鶏肉がほろほろになるらしい。そして、ほのかに香りとコクが残る。レシピ本に添えられた「初めての味」という言葉はそのまま真実で、三品の中で未知感が一番強い。ニンニクと生姜を入れているものの、日本人はそもそも塩分はよくとっていて、汁物で、ましてやごはんといっしょに食べると無意識に塩気を期待するのかも。そこでコーラだけだと心もとないので、もうちょっと塩は多めでよかったかもしれない。とはいえ、母はおいしいと言っておかわりしていたのでおおむね好評だった。

水嶋:コーラって料理によく使うんですか?

本山さん:使いますね。中南米はコーラをよく飲む地域で、ペルーはインカコーラ、そしてグアテマラはスーパーコーラが有名です。

水嶋:へ~~、コーラ大国、というかエリアなのか…。

本山さん:コーラで煮込むことで、炭酸により肉が柔らかくなります。あと独特の風味やコクも生まれる、調味料としても機能します。

マリの鶏肉さわやかマスタード煮込み

マスタード、コーラ煮から一転して味も想像しやすい。ただ日本で食べるマスタードはホットドッグとかナゲットとか、ファストフードが多いのでは。それこそ煮込みは…聞いたことない。どんなもんかな。

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最大の特徴はマスタードとレモン、左上の粉はコンソメです。それ以外はザ・カレー。
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粒マスタードをほぼ使い切ったあたり、日本でこんな使い方はマニアックと分かる。
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鶏モモ肉を焼き目がつくまで炒めたら、
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一度取り出してその脂で玉ねぎを透明になるまで炒める。
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そうしたら人参とジャガイモの薄切りを軽く炒めて、
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水をくわえて弱火で30分。
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マスタードとコンソメをくわえて、
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さらに30分温めたら出来上がり!

…あの。調理中の写真を貼れば貼るほど、自分なんかがすみません的な申し訳ない感がすごい。高校の頃にやってたヒーローショーのバイトで、先輩が怪我して急遽ラスボス役で出ることになったけど、極度の緊張で演技をすべて飛んでしまったことがある。それとちょっと似た緊張感を勝手に覚えているのだけど、レシピはプロだ、信じたい。

「マリの鶏肉さわやかマスタード煮込み」の感想
 
私「!うまい、こりゃうまい」
母「うん、日本人に合うと思うわ」
私「マスタードって使えるね、チューブほぼ一本空けちゃったけど」
母「レモン汁を多めにしたらもっと味が締まりそうね」
 
大当たり!マスタードって温かい料理でもうまいのか…。シチュー化で酸味はぼやっとするが、それをレモン汁がバシッと引き締める。好み次第ではもっと入れてもよさそう。チューブほぼ一本使い果たしてしまったのでキューピーさんにはこれを機にマスタード開拓を検討してみてほしい。なお、お察しかもしれないが、父が無言だったのでたぶん合わなかった。そういえば、ファストフードって、母はむかし子どもに付き合って食べたことはあっても、父はほとんどないのかも。

水嶋:アフリカにマスタードの印象ってなかったので驚きです。

本山さん:マリはフランスの影響を受けているので、それが食文化にも及んでいます。

水嶋:あぁ!そうか、アフリカってフランスかイギリスが統治していた国が多いですもんね。だからか。

本山さん:ほかにもサラダのドレッシングにも使われていたりとマスタード料理は多くて、フランスと同じくディジョン(有名メーカー)をよく使います。

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ベルギーのワーテルゾーイ

これだけ名前だけじゃ想像つかないが、つまりはクリームシチューのこと。日本で食べられるものと違う点は、小麦粉を使わないのでもっとサラッとしたスープ、ただ牛乳ではなく生クリームなのでコクはあるだろう。そして現地ベルギーではこれも、レモンを絞るという。

これに関しては「世界のレシピ」には載っていないので、こちらの記事で分量(4人分想定)も書いておきます。詳しくは本山さんの書かれた一冊目(「世界のごちそう 旅×レシピ」)をお求めください。

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日本人には想像つきやすいラインナップ。白ネギで代用してるけど本来は西洋ネギ。
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バターを敷いたらひとくち大の鶏モモ肉(400g分)を炒める。
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鶏肉が白くなったら、乱切りにしたジャガイモ(3個)と人参(1本)をサッと炒めて、
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串切りにした玉ねぎ(1個)と、2cmに切った白ネギ(1本)も投入。
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チキンブイヨン(チキンコンソメでOK)を200ml投入して弱火で30分煮る。
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柔らかくなったら生クリーム(200ml)を入れ、塩と胡椒で味を整えて出来上がり。

 文句なしにうまそう。なお現地ベルギーでは、マスタード煮と同じくレモンをかけることが多いらしい。

「ベルギーのワーテルゾーイ」の感想
 

私「あぁ~、ふつうにいけるね」
母「食べ慣れてる感じがするね」
私「あと、レモン!これ入れた方がいいわ、すごく味が締まる」
父「うまいな」

サラリとしてコクのあるクリームスープ。父が一番食べていた。そういえば、郷里の新潟では昔、ごはんに牛乳をかけておやつにして食べていたらしい。私がファストフードで慣れていたマスタード煮込みがヒットしたように、当たり前だけどやっぱり小さい頃から食べ慣れている味かどうかは大きい。そしてここでも光るレモンの有能ぶり。もはやコーラ煮にすら合っていたのではないか?と思わせる頼もしさ。

本山さん:フランスのプーレ・ア・ラ・クレームとよく似てます。

水嶋:それも初耳です…!

本山さん:鶏肉のクリーム煮込みで、ただ発祥はベルギーのゲントという場所です。

水嶋:とするとこっちが本場な訳ですか。

本山さん:もとは川魚で作られていたんです、コッテリとしたコクを出したい場合は卵黄を入れます。

水嶋:あぁー、さしづめカルボナーラ煮って感じですね。

カレーはちょっとしたことで世界の料理に化ける

どれもつくってる最中は、「ルーを入れたらカレーだな」「洋風の肉じゃがだな」なんて思っていて、そこによいしょー!と、コーラやマスタードや生クリームを入れる思いきりが必要だった。逆にいえば、ルーを別のものに置き換えればそれだけで世界の料理に化けたのだ

なお以前同じ質問(カレーの食材で作れる料理)を世界各地に住む知人に聞いたことがあり、イタリアだとミネストラやカポナータドイツはグーラッシュ韓国はチムタク、あたりになるとのことです。世界的にジャガイモと玉ねぎと人参は鉄板トリオってことなのですね。ま、必ずしもその組み合わせがすべてってワケじゃないんだけども。

そして、マリの鶏肉さわやかマスタード煮込み!ほんとうまかった。まいった。宣言してもいい、今後ずっと個人的に作り続けると思う。いやいや、というかこれ日本の食卓のスタンダードになってもおかしくない?というくらい感動した。おとつい食べたけどもう食べたい。

いつか本場の味を確かめてみたい。アフリカになんとなくの興味はあったが、まさかマリにピンポイントで興味を持つ日が来るとは。今調べてみたらこの国名、現地の言葉で「カバ」の意味らしい。カバ!?

広がるマリへの興味…!


そういえばぜんぶ鶏肉だったな

途中で「あっ」と思ったのが、三品どれも鶏肉だったということ。そういえば、イスラム教は豚がダメ、ヒンドゥー教は牛がダメで、「鶏肉は宗教上の食の安全地帯」なんて話を聞いたことがある。宗教全方位に詳しいワケじゃないので、間違ってたらすみません。でも調べてみるとマリは人口の9割がイスラム教徒らしいのでそれあると思う。

そういえば母が「外国の料理って家でようつくらないからおもしろいわ~」と言っていて、それを本山さんに伝えたら「仕込みみたいなコメントですね(笑)」と言っていた。そう言わしめる魅力があった。

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レモンかけたら意外となんでも世界の料理化するのかも…。
取材協力:
本山尚義さん
「全196ヵ国おうちで作れる世界のレシピ」全文公開中 
世界のごちそう博物館(世界の料理をレトルト販売中):https://www.palermo.jp/TwitterFacebook
 
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本山さんは、そんな世界の料理のレトルト製品もつくってます。
上のリンク(世界のごちそう博物館)から購入できますぞ。

 

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