怖くないどころか笑ってるぞ
まずは敵情視察、と街に繰り出すや、どこもかしこもハロウィンで浮かれている。中にはハロウィン商戦とは無関係そうな店もあるし、ハロウィングッズの横でもうクリスマス商戦の飾り付けをしている店もあるではないか。どうしてそんなに生き急ぐんだ、まあ落ち着こうじゃないか。
カボチャちょうちん(英語ではジャック・オー・ランタン)も、もちろんいたるところに置いてある。でもなんだか想像と違う。昔ハロウィンが日本に入ってきたころよりも、彼らの表情が柔和になってやがる。


ほっほうー、とうなずき街をあとにする。敵なんていなかったではないか。いたのは、戦うことを忘れた腑抜けたカボチャたちだ。これなら勝てると確信した。
さて、家に帰りこちら側の戦略を立てよう。私が本当に恐ろしいと思う表情、それは例えば「日本画に描かれた幽霊画」だ。おどろおどろしい様をわかりやすく描いたポップなものもいいけれど、音も立てずにしのび寄り骨髄まで凍らせるような陰惨なもの、その表情こそ欲しい。
記憶と茫漠なイメージだけで「円山応挙の幽霊画、あれなら絶対怖いと思います!」と、デイリーポータルの企画会議で宣言。しかし検索の結果、実際に選んだのは・・・。


応挙画と伝えられる幽霊画。足のない、この世のものとは思われないはかない立ち姿、そんな中にも恐ろしげな様子は伝わってくるが、表情は実に悲しげで穏やかだ。残念ながらカボチャには向いていない。


というわけで、なんとかイメージに近いモデルが決まった。ではいよいよカボチャの登場である。
おかずにはならないのか!
街でカボチャを買ってきた。重いカボチャを袋につめて、電車に乗る私はまるで「ハロウィン待ちきれない人」「ハロウィン楽しみな人」である。バカ言っちゃいけません。これはサンプルだ。実験用だ。


ベランダにて解体作業。このカボチャ、5kg弱と相当中身もつまっていそうだが、調べるとどうも中はスカスカで、のこぎりなどでなく普通のナイフやカッターでいけるらしい。
どういうことだろう。でもカボチャだぞ、多少のケガは覚悟して・・・とこわごわパン切りナイフを刺したところ!


中身はほぼ繊維と種。実の部分は厚さ5cm程度。しかもこの実は食用ではないそうだ。
ウィキペディアによると、もともとはカボチャではなく「カブ」をくりぬいたものを使うそうだが、アメリカでは細工しやすいカボチャになったという。
繊維の部分は取り除くのが面倒だが、実のほうはさくさく削れ、削りカスはほろほろとほどけて、まるでスチロール樹脂か何かみたいだ。匂いは・・・昔、登下校のときに道端になってたような、食べられるかどうかわからない実の匂い。ちょっとだけ青臭い。




次はお楽しみ、顔を彫っていきます。なんだ楽しいのか私は。