特集 2020年1月7日

本邦初公開!  これがサウジアラビアの三角コーンだ

サウジアラビアに興味のある人は、どれくらいいるだろうか。2019年9月に観光ビザが解禁されたこともあって、渡航を検討されている向きもあるだろう。

三角コーンに興味のある人は、どれくらいいるだろうか。ややニッチな分野だが、名著「街角図鑑」の影響で、ファン層は厚みを増しているに違いない。

それでは、サウジアラビアと三角コーンの両方に心を傾ける人は、世の中にどれほどいるだろうか。

サウジ愛好家と三角コーン愛好家の「ベン図」は、孤独な銀河のように遠く離れて、ついには重なることがない。仮に重なっていたとしても、5人もいれば上々ではないか。

本稿は、その選ばれし5人をもてなすために、蒸溜され、抽出され、そうして惜しみなく注がれた情熱の結晶である。

辺境旅行ライターと路上観察ライターによる即席ユニット。「読者にウケそうか」よりも「自分たちが興奮するか」を優先します。



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リヤドに行ったSatoruが、三土さんに話を持ちかける

Satoru: 先日、サウジアラビアの首都・リヤドに仕事で行ったのですが、あちこちで三角コーンを見かけました。

三土: おお…! (上の写真を見ながら)日本では見かけないデザインで新鮮ですね。

Satoru: こんなにたくさんの三角コーンを見かけたのは、どこもかしこも工事中だったからかもしれません。

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Satoru: これまでリヤドには公共交通機関がほとんど無かったのですが、地下鉄の新設プロジェクトが進んでいて、2020年に完成予定との話でした。

三土: なるほど。地下鉄の駅を作る工事で地上にずらっと三角コーンが並ぶのは日本でも見かけますね。いまだと日比谷線の新駅がそうです。

Satoru: あ、いま日比谷線で工事してるんですね。

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地下鉄ができれば、空港から市内へのアクセスも容易になる

 

Satoru: そういうわけで、私が撮影した三角コーンの写真たちを、専門家のまなざしでご覧になってほしいのです。

三土: はい。ぜひ!

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捨てられた椅子も散見されたが、これは別の専門家の領域だ

 

三角コーンの写真群を前にして、三土さんの心拍数が上昇していく

Satoru: まずはこの動画をご覧ください。リヤド郊外の住宅地で撮影したものです。

 

Satoru: たまたま近くのモスクで礼拝の呼びかけがあって、その声が入ってます。

三土:  (動画を見ながら)あー、この白い反射体は、アメリカの3M社の製品かどうか…?

Satoru: そこからですか…!

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三土:  でも違うっぽいですね…。そして三角コーンの底面が「丸みを帯びた八角形」で、これは日本で見かけないタイプです。

Satoru:  目のつけどころが、完全にプロだ。

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三土:  いえいえ…。でも、こうやって紐で結びつけるタイプは、めずらしいですね。

Satoru: 使いかたにもその国の文化が現れるのかな。ちなみに日本ではどうですか?

三土:  プラスチックの棒のようなもので連結されている場合が多いですね。

Satoru: ああ、たしかに。

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画像引用:三土たつお編著「街角図鑑」(実業之日本社)

 

Satoru: サウジアラビアで見た三角コーンは、たいてい頭に丸い穴がついてました。これは最初から紐で結ばれることを想定したデザインなのかも。

三土: そうかもしれませんね。

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Satoru: 次に、工事現場の近くで見かけた三角コーンです。

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Satoru: このタイプの三角コーンはたくさんあって、中国製であることが現地調査でわかっています。

三土: いやー、これは「萌え」ますね。

Satoru: 萌えますか。

三土: あらゆるところが萌えますね。

Satoru: 「耳」みたいなところに、紐を結びつける輪っかがついている。

三土: あーもう、可愛い。

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三土: この黒さもいいですね。日本では赤や黄色が多いので、黒の三角コーンはあまり見かけません。

Satoru: はい。

三土: それから四角錐の形状というのもめずらしい。

Satoru: はい。

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三土: 日本ではふつう円錐なんですが、これは断面が四角です。

Satoru: はい。

三土: これは萌えますね。

Satoru: はい。

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Satoru: これは病院の前庭にあった三角コーンです。

三土: ひっそりと隠れているみたいですね。

Satoru: リヤドには病院が散見されました。人口比でちょっと多すぎじゃないかと思うくらい。オイル・マネーが福祉政策に還元されているのでしょう。

三土: すばらしいことですね。

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三角コーンの「世界の見かた」を、Satoruが少しずつ学んでゆく

Satoru: リヤドの三角コーンは、「中国製」「英国製」「無記名」の3種類が、おおむね同じ割合で存在していました。

三土: 英国製が多いのはなぜでしょうか。

Satoru: 英国とサウジアラビアは、歴史的につながりが深いからかもしれません。私が会った政府の高官たちも、英国の軍事メーカー出身だったり、英国の名門校出身だったりと、両国の縁の深さを感じさせました。

三土: ははあ。

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アブドゥル・アジズ国王とチャーチル首相の会談(Al Masmak Palace Museumにて撮影)

 

Satoru:  なので、街角で見かけた「無記名」の三角コーンも、おそらく英国製ではないかと思っているのですが…。

三土:  うーん、それはどうでしょう。というのは、イギリスの三角コーンの規格は、白い反射体が1つ、その長さも「4割」と決まっているんですよね。

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三土:  でも、この三角コーンの反射体の長さは…

Satoru:  せいぜい3割くらいだ。

三土:  ですよね。だから、見た目が偶然(英国製に)似ているだけですね。

Satoru:  はぁ…これはおもしろい! なんという、世界の、奥深さよ。

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三土:  これも底面が八角形っぽいですね。そして、この蓋みたいなものはなんだろう。

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Satoru:  あっ、これは現地取材の結果、「砂を入れる蓋」だとわかってます。

三土:  なるほどなるほど!

Satoru:  砂を入れて、重しにしているようです。

三土:  日本では水を入れたりもしますが…。

Satoru:  サウジアラビアでは水は貴重ですからね。でも砂ならどこにでもある。究極のコモディティ・アイテム。

三土:  そういうことですか。

Satoru:  ちなみに、私が砂に気づいたきっかけは…

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Satoru:  とある三角コーンをいじってたら、底面がひび割れていたために「中身」が出ちゃったからです。

三土:  あらら。

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Satoru:  このあと砂を詰めて「原状復帰」に努めました。

三土:  よかった。

Satoru:  つづいてこちらの三角コーン。ややレアな黄色です。

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Satoru:  断頭されたような形状で、ボディも薄汚れている。かなりくたびれています。

三土:  ああー、これはめずらしく、ポリエチレンみを感じますね。

Satoru:  ポリエチレンみを感じる?

三土:  これ、先端がパキッと割れてますよね。この割れかたは、ポリエチレンみを感じさせます。

Satoru:  ポリエチレンみを感じさせますか。

三土:  塩化ビニールはやわらかいから、こんなにパキッとは割れないですよね。これはポリエチレンみを感じます(※)。

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この三角コーンはパキっと割れておらず、塩化ビニールみを感じる(ちなみに中国製)

※三土注: 材料としては柔らかいポリエチレンも硬い塩ビもあるが、三角コーンではあまり使われない。

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参考:軟質塩化ビニール製の三角コーンを曲げたところ(三土私物)
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ふたりが三角コーンの深部に入ってゆく

Satoru:  この余命いくばくもない感じの三角コーンは、なぜか中央部が黒ずんでいます。

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Satoru:  そして英国製と記されているのに、反射体が「4割」の規格に準拠していない。

三土:  不思議ですね…。

Satoru:  どうしてなのか…。

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三土:  これはもしかしたら、白い反射体を誰かに剥がされちゃったのかもしれないですね。

Satoru:  あー、そういうことか!

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Satoru:  上の写真はまた別の三角コーンですが、これも英国製で、たしかに反射体の白い破片らしきものが残ってます。あたかも三土さんの仮説を裏付けるように。

三土:  反射体は三角コーンのなかでも高価なパーツですから、酔っぱらいとかが盗んじゃったのかも。

Satoru:  サウジアラビアに酔っぱらいがいたら、それだけで重罪かもしれませんが。

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Satoru: 「突き刺し型」の三角コーンもありました。三土さんも過去の記事で「戦国時代に討ち取った武将の首を槍の先にかかげるやつじゃないのか」と同情を寄せられてましたが。

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Satoru: 足元のところが損壊して、もはや自立しなくなってます。

三土:  壊れちゃってますね。

Satoru: かと思うと、健康体のままで突き刺さっているのもありました。

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三土:  日本だと「棒の先端が尖っていて危険なので、三角コーンを上からかぶせる」というケースがありますが、これがどうして突き刺さっているかは謎ですね。

Satoru: ドライバーの視線に近づけて目立たせるためにやったのか、なんとなくおもしろ半分でやったのか。

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Satoru: 近づいて撮影してみました。なんだか盗撮っぽい背徳感がありますが…。

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Satoru: さらにポールから抜き出して、ひっくり返してみました。

三土:  あー、このなめらかな曲線はめずらしいですね。接地部の面積が小さいのも興味深い。

Satoru: でも、底面積が小さいとすぐ倒れちゃうから、製品として完成度が低いのではありませんか。あっ、だからポールにかぶせていたのかな。

三土:  そうかも。

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Satoru: これは、三角コーンの死ですね。

三土:  死んでますね。

Satoru: 死んでしまっています。

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Satoru: そしてこれは、現地で唯一見かけたトルコ製の三角コーンです。

三土:  おおー。

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Satoru: いまサウジアラビアとトルコは緊張関係にありますが、三角コーンの世界では良好なのだろうか。

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Satoru: この裏面は、マンガの集中線というか、旭日旗というか、すこぶる手間がかかっている。どこか異様な気迫すら感じる。

三土:  すごいですね…。

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Satoru: そして、私がリヤドでいちばん胸打たれたのがこちらです。

三土:  おお。

Satoru: 駅の工事がほぼ終わって、ぼろぼろの三角コーンが2本、ゆるく結び付けられている。

三土:  そうそう、三角コーンって、完全に壊れるまで使われますよね…。

Satoru:  私の注目ポイントは、「ふたつの三角コーンの種類が異なる」ことです。

三土:  はい。

Satoru: 三角コーンって、同じ種類を集めて使うのが一般的ですよね。でもこれはどういうわけか、背の高さも色合いも異なる者たちが、寄り添うように立っている。

三土:  はい。

Satoru: 喜びも悲しみも幾歳月の現役時代を終えて、あとは「お迎え」を待つばかり。そんな老夫婦が、残された時間を、いまはじめてお互いのために使うことを許された――ある種の詩性すら得て、静かに見守りたくなる三角コーンでした。

三土:  はい。

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三土:  あ、この三角コーン、土台がふたつありますね。親子みたいになっている。

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三土:  べつの土台をあとから載せちゃったんだ。

Satoru: ほんとうだ。以前には巨大なコーンがあったのかな。

三土:  でもこのパターンは日本でもありますね。もとの土台が軽いとき、ほかのを借りてきて積み重ねたりするんです。

Satoru: 運用で解決しようとしているんですね。

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Satoru: 積み重ねるといえば、三角コーン自体を重ねているのもありました。

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三土:  あっ、これ、いちばん奥にマイナスネジのようなくぼみがありますが、これはたぶん「積み重ねたときに下のコーンの頭(ひもを通す部分)が刺さるようにする」ための工夫ですね。

Satoru: あっ、あっ、あっ!

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Satoru: あっ、あっ、本当だ、あっ、すっげ、すっごい、三土さんすごい…。探偵みたいな洞察力…!

三土:  ははは。

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サウジアラビアに旅行するなら (Satoru)

この国は、いま、歴史的な転換期にある。

女性の自動車運転が、許可されるようになった。

公共の場での音楽の演奏が、許可されるようになった。

外国人旅行者の到着ビザ(事前登録なしに現地空港で取得する査証)が、許可されるようになった。

許可、許可、許可。

私が11年前に訪れたサウジアラビアとは、まったく違う国のようである。そう言うとサウジ政府のエスタブリッシュメントたちは屈託なく笑った。「まったく違う国になったんだよ」と。

彼ら曰く、いまは「お得なキャンペーン期間」で、サウジ内務省が観光客向けの無料ツアーを提供しているという。真偽は未確認だが、本当だとすれば、ずいぶん気前のよい観光政策である。

こうした改革の動きは、現在のムハンマド皇太子の強力なリーダーシップによるものとされている。

こうした機運は、いつまで続くのか。

その質問を彼らの面前でぶつけるほど、私の礼節は摩耗していなかった。

「サウジアラビアに旅行するなら、早いほうが良いかもしれない」という無言の呟きが、私の胸中に浮かび、また沈んでいった。

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ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(写真中央)
 

 

世界で働く三角コーンたち、その奇妙な類似性をめぐる考察

Satoru: ここでちょっと視野を広げて、ほかの国々の三角コーンをご覧に入れたいと思います。

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Satoru: 北マケドニア・オフリドの三角コーンです。

 

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Satoru: ポーランド・ワルシャワの三角コーンです。

 

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Satoru: ポーランド・グダニスクの三角コーンです。

 

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Satoru: ジョージア・トビリシの三角コーンです。

 

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Satoru: アブハジア・スフミの三角コーンです。

 

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Satoru: こちらはスリランカ・コロンボ。2019年の連続爆破テロ事件の直後に訪れたので、三角コーンの出番も多かったです。

 

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Satoru: イラン・マシュハド空港の三角コーンです。

 

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Satoru: ノルウェー・トロムソ空港の三角コーンです。

 

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Satoru: オーストリア・ウィーンの国連ビルの三角コーンです。

 

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Satoru: コートジボワール・アビジャンの三角コーンです。

 

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Satoru: トーゴ・ロメの三角コーンです。

 

 

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Satoru: ナミビア・ウォルビスベイの三角コーンです。

三土: すごい…!

Satoru: こうして並べてみると、三角コーンの色や形って――たとえばマンホールや便器などに比べると――その国ごとの文化圏や宗教圏によらず、おおむね似ていることがわかりますね。

三土: たしかに。

Satoru: それはつまり、「三角コーンの工業意匠がすでに完成形にあるからではないか」と、素人ながらに思いました。

三土: ははあ。

Satoru: 具体的には、「①安いコストで大量生産できる(無駄に大きくない)、②人間の注意を喚起する色合い(赤や黄)、③収納性に優れる(重ねやすい)、④強風時などに倒れたりしない(重心が下部にある)といった諸条件を満たすデザインは、文化・宗教・人種を超越して、現在の三角コーンの形しかない」との結論に至ったのではないか、と。

三土: 壮大な話になってきました。

Satoru: 三角コーンからひもとく人類史。

三土:  そもそも三角コーンは、アメリカで発明されたものでして…

Satoru: えっ、そうなんですか?

三土: 1941年に、Charles D Scanlonさんという人が特許を申請されています。

Satoru: はあ。

三土: この申請書を読むと、当時の【課題】と【発明による解決】は次のとおりです。

【課題】
・小さい木の三脚を置いたりするけど、目立たないし壊れる
・かといって、でかい木を組むと車がぶつかったら危険

【発明による解決】
・ゴム製にすれば危険じゃないし壊れない
・赤く塗れば目立つ
・円錐にすれば安定する
・積み重ねやすい
・軽くて運びやすい

Satoru: はあー。

三土: さきほどSatoruさんが指摘された①~④が、ほぼそのとおり含まれてます!

Satoru: うおお、すごい! それじゃあ、もし、私が彼よりも先に生まれていたら、三角コーンを発明して大儲けできたかも……いやいや……なにを言っているのだ……うぬぼれてはならないぞ……私はいま、三角コーンをすでに知っている立場から、デザインの共通性に関する粗めの仮説を立てただけであって、三角コーンの存在しない世界に生まれた自分がこれを思いつけたかというと……うーむ、それはとても無理だな。

三土: 偉大な発明です。

Satoru: I can’t agree more.

三土:  幹線道路に設置する三角コーンの大きさや色などは、1970年ごろにアメリカで標準化されるようになりました。

Satoru: 原子力や航空機などの重工業の技術規格も、1960~70年代にアメリカが率先して決めていった歴史があります。三角コーンも同じ道をたどったのかもしれない。

三土:  そうかもしれませんね。

 

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Source: U.S. Department of Transportation, Federal Highway Administration. (2009) Manual on Uniform Traffic Control Devices for Street and Highways. 2009 edition. p.605

 

三土:  これがアメリカ版の標準規格です。用途ごとに、高さなどを細かく定めてますよね。

Satoru: ずいぶん細かいんだ。

 

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Source: UK Department of Transport (2016) The Traffic Signs Regulations and General Directions 2016. Schedule 13. Part 6. Item 4.

 

三土:  そしてこれがイギリス版です。

Satoru:  「白い反射体が4割」と先に言及されてましたね。

三土: はい。この高さは45cmから100cmまで。45cm(18インチ)が基準になっている点はアメリカと同じですね。でも白い反射帯については、アメリカは「2つ以上」ですが、イギリスは「1つ」です。

Satoru: たしかに、リヤドで見かけた英国製のコーンはどれも反射帯が1つでした。

三土:  そして日本の三角コーンは、高さ45cmのものと70cmのものが多いです。以前、保安用品の会社に問い合わせたところ、「国土交通省の各地方整備局で、道路工事保安施設設置基準が定められており、そのなかで三角コーンについて記載があります」との回答でした。

Satoru: へぇー。

 

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出所:国土交通省関東地方整備局「道路工事保安施設設置基準」番号19(国関整道管第8号、令和元年5月21日)

 

三土:  これが、関東地方整備局の設置基準です。

Satoru: ずいぶんシンプルですね。

 

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出所:国土交通省東北地方整備局「保安施設設置基準」p.160

 

三土:  これが東北地方整備局です。

Satoru: あれ、管区ごとにずいぶん異なるんですね。

 

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出所:国土交通省北海道開発局「令和元年度版 道路・河川工事仕様書 付表 保安施設標準様式図」 4-17

 

三土:  そして北海道。リアルなタッチです。

Satoru: 東北と北海道には類似性が認められますね。これはつまり、気候等の諸要因に係る路面環境の地域的特性を鑑みたものなのかな。

三土:  気になりますね。

 

 

数日後

Satoru:  気になったので、あのあと、国土交通省関東地方整備局道路部道路管理課さんに文面での回答を依頼しました。

三土:  えっ。

Satoru:  こちらが質疑応答の全文です。

 

(問1)
「道路工事保安施設設置基準」は、関東地方整備局長の「通達」によるものであり、(もちろん民間企業等が準拠することが望ましいものの)法律や省令のような法的効力は有さない、という理解で正しいでしょうか。

(答1)
「道路工事保安施設設置基準」は、道路上での作業の実施にあたっての、保安施設等の標準的な設置方法を示したものです。
関東地方整備局が発注する工事の他、関東地方整備局の許可を受けて行う占用工事においては、この基準に示した保安施設の設置を標準とし、現地の交通状況に応じ監督職員と協議を行った上で、保安施設の設置を行うこととしております。

(問2)
この設置基準の内容は、他管轄地域、たとえば東北地方整備局が発出するものとは少なからぬ差異が見受けられますが、その特段の背景・理由などがあればご教示ください。
(例:本設置基準は、各局が運営する審議会及びパブリックコメント等を経て策定されるものであり、その検討内容は各地方における道路状況・気象状況の違いなどにも拠るのだから、etc.)

(答2)
「道路工事保安施設設置基準」は、各道路管理者が管理を行う道路における、保安施設の標準的な設置方法を示したものであるため、管理を行う道路の状況等により差異がある場合があるものと考えます。

Satoru:  明示的な回答ではありませんでしたが、いずれの質問に対しても「概ねそのとおり」と解釈しうる内容と理解しました。

三土:  たしかに。

Satoru:  こうした方針を採るに至った経緯にも興味があります。そこには三角コーン製造業等との確執もあったのか。我が国の産業史をひもとく形で、調査研究の必要性を感じます。

三土:  はい。

Satoru:  検討を重ねてまいりたい。

 


世界と日本の三角コーン (三土たつお)

これまで国外の三角コーンについてはストリートビューで見るくらいだったので、接写を含む貴重な実写をこんなにも見せていただけるのは本当にありがたかった(メーカー名からカタログに辿りつけるのが大きい)。サウジを含む各国の三角コーンについて分かったことを、日本との比較という点で簡単にまとめてみたい。

日本の三角コーンと同じところ

1.高さは約70cm

2.オレンジ色で反射帯がついている

3.素材はポリエチレンが多い

4.ボロボロになっても使われている

1〜2については、アメリカの基準を皆おおまかに祖先としているため結果として似ているということなのだろう(しかしこのあたりの経緯を原子力や航空機と絡めて語れる Satoruさんはいったい何者なのか)。4の「使われ方」に関しては同じ人類としての連帯を感じてしまう。

日本の三角コーンと違うところ

1.重りに水ではなく砂を使う

2.棒でなく紐で連結する

1については、その場で調達しやすい材料を使うのは言われてみれば当たり前の話だ。2でコーンを連結するのだって、紐を使ったほうが長いスパンを飛ばせて合理的だ。なのに、これまでその可能性に気づくことすらできなかった。本当に目から鱗が落ちる思いだ。

ところで今回、世界に目を向けることで逆に日本の三角コーンの特殊性が浮かび上がるようにも思った。最後にそのことに触れてみたい。

日本の三角コーンが世界と違うところ

1. カラフルすぎる

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Satoruさんに見せてもらった三角コーンたちは、基本オレンジ、たまに黒、黄色という具合だった。ストリートビューで各国の路上を見ても同様だ。警告のための色使いという基本に忠実なのだろう。

ところが日本では、とくに商業施設のような私有地の場合、オレンジに限らず白や青といったものもよく見かける。少しでもおしゃれに見せたいという気持ちがあるのだろう。また、危険を伝えるという役割よりは施設名や駐車禁止といったメッセージを伝えるという目的のほうが大きいからだと思われる。

2. 三角コーンを使いすぎる

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以前、パリの三角コーンをストリートビューで探したところ、ほとんど見つからなくて苦労したのを覚えている。

それに対して日本の路上には三角コーンが大量にある。工事現場は当然として、駅前での駐輪避けから喫煙禁止のメッセージまで、あまりにも広範に多様に使われているのだ。「路上で一時的に何かを伝える」ための第一の選択肢が三角コーンになっているかのようだ。

とはいえ、世界で日本だけがこれらの特徴を持つと言ってしまうのも早計かもしれない。たとえば隣国である韓国は日本と似ているといったことがあるかもしれないし、他の地域についても見てみる必要があるだろう。

三角コーンといった路上のなんでもないものを比較することによって街の個性を浮かび上がらせるこの手法、これをきっかけとしてぜひ突き詰めていければと思う。

 

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パリッコさんの記事で紹介された立ち飲み屋「みさわ」で記念撮影
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