特集 2025年6月27日

札幌の住所がすごい

全体的に斜めになってない?

石川:(北見の地図を見ると)北とか西とか言っていますけど、斜め45度ですよね。 

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大きく傾いている北見の中心地 open-hinata3

おもしろ地理:そうなんですよ。

西村:これは僕も気になってて、札幌の条丁目は全体的に右に13度ぐらい傾いていますよね。それと、札幌市の中心地から離れると、急にガクッとと斜めになっているんです。そしてさらに発寒中央とかになると札幌の傾きに近い感じでガクッと傾きが直っている。

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街路の傾きごとに色を塗り分けて見ると、札幌中心街と琴似と発寒で街路の傾きが大きく違うことがわかる/『道路を方角ごとに塗り分けると、その街のでき方がわかる』より

西村:街路の傾きが町ごとに違うというのは、町ができた時期が違うからなのかな? と、ぼんやりとですが思うんですけども。

おもしろ地理:おっしゃる通りで……札幌ってでっかいひとつの町のイメージがありますけど、実は小さな町の集合体なんですよ。

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1916年ごろの札幌区 今昔マップ

おもしろ地理:1916年の札幌は、札幌区と呼ばれていまして、範囲がとても狭かった。今の札幌市の中心街のエリアです。で、すでに札幌区は街路が傾いていますよね。

西村:傾いています。

おもしろ地理:で、左下みてください。実はここもう違う町でして山鼻村っていう地域だったんです。

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南北に伸びる2本の街路村が、東西の山鼻村 今昔マップ

おもしろ地理:山鼻村っていうのは、昔は南側に延びている本願寺道路という道路を基準に作られた街路村だったんですよ。道路の両側に建物建ってるのわかります?

石川:わかります。

おもしろ地理:東山鼻と西山鼻という村で、ここらへんは条丁目じゃなかったんです。しかし、札幌の町がどんどん拡大していくにつれて山鼻のような村は取り込まれていって、山鼻という地名はなくなって「南◯条西◯丁目」という条丁目表示に変わっていったわけです。

西村:なるほど。

おもしろ地理:で、実際この街路の歪みがおかしなことを生み出してるところがあって、例えば、こちら、南8の西15、16、17、18……19なくないですか?

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よく見ると19丁目がない open-hinata3

一同:あ、ないですね。

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怪奇「西19丁目」が消えた交差点

おもしろ地理:これは20丁目を境に、西側が円山村っていう地域、東側が山鼻村だったんです。なので、ここで街路の向きが微妙に傾いていて、その歪みを解消しきれずに無理くり条丁目に当てはめてしまったから、西19が飛んじゃったわけです。ただ北の方に行くと西19現れるんですよ。

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赤が20丁目、緑の部分が19丁目で、青が18丁目 open-hinata3

おもしろ地理:「南2西19」の下が「南4西18」になっている。「南3条」もものすごく細くなってかろうじてあるんですが、一部「南2」と「南4」が隣接してしまっていますね。で、これの最たるやばい例がもう一つあって……。

西村:はいはい、そういうのききたい。

おもしろ地理:これは豊平川のせいもあるんですが……この南9条通りを境に、北側が札幌区(古くからの札幌の町)で、南側が山鼻村なんですが、この交差点の緑地帯だけ、南10西2なんです。

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緑地帯だけの「南10西2」 open-hinata3

伊藤:南10の西1と西3が隣り合っていて、小さい縮尺で見ると「西2」が飛んでるように見える。

おもしろ地理:この南10西2は、人口ゼロの町なんですけど、郵便番号も「南10西」の郵便番号としてですけど、あるんです。

石川:あるんだ(笑)

おもしろ地理:この緑地帯に木下彌八郎という、北海道開拓に尽力した人の石碑があるだけですけど、立派な町ですね。

伊藤:じゃあ、木下彌八郎にファンレター出す際は、この住所と郵便番号書けば届くんだ。

西村:届きますね。郵便局はけっこう気を利かせてくれますから。

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真ん中の三角形の緑地帯だけの町「南10条西2丁目」
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そもそも斜めなのは創成川のせい?

西村:そもそもなんですけど、札幌の街路が全体的にちょっと傾いている。そもそもの理由ってのはなんですか。

おもしろ地理:それは、諸説あるんですけど、基本的に大友堀(創成川)を軸にしてるんですよ。この川が元々傾いていて、それを軸に町を作っていったんで、傾いたのではないかと。

西村:これ、こないだAIに聞いたら「札幌の街路は、磁北を基準にしたからズレたんだ」とか言ってましたけど。

おもしろ地理:でも、そういう説もあるんですよ。

西村:あるんですね。北海道は開拓するときに方位磁針を使って区画したからズレて、京都は北極星を基準に区画したから南北がきっちりしてる……とまあ、もっともらしいこと言ってましたけど。それも諸説のひとつってことですよね。

おもしろ地理:そうなんですよね。札幌の街路の基準が創成川になったのは間違いないんですが、ではなんでそもそも大友亀太郎が、大友堀(創成川)を斜めに作ったのか? というのは、ちょっとはっきりわからないんですね。ただ、一つ言えるのは、創成川は最終的に石狩川につながっているんですけど、掘る距離が一番短くてすむところにつながっているんですね。おそらくそれが理由かなと。あくまで推測ですが。

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赤線が創成川。この傾きが札幌の街路の傾きの元になった

西村:たしかに、土地の傾斜とか石狩川までの距離とかを考えると、このラインで掘るのがいちばん自然という気はしますね。


おそろしいことに、札幌の住所の面白い話がこの倍はあった

というわけで、札幌の住所がすごい。面白い! という話ですが……おそろしいことに、おもしろ地理さんの「条丁目制おもしろトーク」は、この記事にした分量の倍ありました……が、すでに文字数が1万字というとんでもない分量に迫ろうとしているので、ひとまずここで一区切りとしておきます。

完全版をいずれどこかで公開したい……。

おもしろ地理さんも条丁目制の動画を公開しています。面白かった方はこちらもぜひ。

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
西村さんの、住所について語れる喜びがあふれ出てしまった長編記事です。おもしろ地理さんという有識者を呼んでいるので、普通は有識者に教わる形で進めるじゃないですか。西村さんのテンションが上がりすぎて西村さんからのプレゼンになってるんですよね。形式からすでにハイテンション。(石川)

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