まっすぐなってない札幌の条丁目制
伊藤:取材で道東の標津によく行くんですけど、たしか標津も条丁目制だったなと思って。でも標津って南北はちゃんとX軸で町が二分されてるんですけど、東西の軸が海沿いで、東がめっさ狭いんですよ。東が1丁目で終わっちゃってるんですよ。
西村:歪んでるんですね。
おもしろ地理:標津ゆがんでますね。ちなみに札幌も実は歪んでるんですよ。地図をよく見ると「南◯条東◯丁目」のエリアは、豊平川のせいでほとんどないんですよ。
伊藤:で、標津の隣町に中標津ってあるんですけど、そこは、条と丁目が逆だったんですよ。言ってることわかります?
おもしろ地理:わかります。
伊藤:南北が丁目で、東西が条? になってる。
西村:これ、おもしろ地理さんまとめてましたよね。
おもしろ地理:まとめてます。これ、本当に細かい話をすると、24時間話せちゃうんですけど……。
石川:(笑)
おもしろ地理:この表をみてください。
おもしろ地理:札幌は南北に条がつく南北基準なんですが、中標津は東西に条がつく東西基準なんですね。札幌とか都会の町が南北基準なのでイメージ先行しがちですが、よくよく見ると東西基準(東西が条)のところが多いんですよ。
西村:条とするのを南北にするのか、東西にするのかでまず二つにわけられる訳ですね。
おもしろ地理:そうです。で、もう一つ町割りというのがあって、札幌は先程見てもらった通り、道路に境界を作って1ブロックごとにわけている。
おもしろ地理:いっぽう、北見の町割りは、例えば、北2条通という道路の両側が「北2条」という町になるんですよ。
西村:つまり、道路を挟んで向き合った町が一つの「◯条◯丁目」という一つの町になると。
おもしろ地理:そうです。背骨みたいに街区の中を境界が走る。北海道の町の条丁目制は、アメリカのタウンシップ制と、京都の条坊制を混ぜたものなんですよ。京都の地図を見てもらうとわかると思うんですが、京都の町も道路を挟んだ両側の町が同じ町になっている。
おもしろ地理:一方、アメリカの町割りは、開拓するときに1マイル、1.6キロぐらいを1区画として、それを道路で分けて順番に番号を振っていってそれを住所にしたわけですね。
おもしろ地理:タウンシップ制は道路によって住所が区切られている。北海道の条丁目制は、その両方がミックスされてできているわけですね。
伊藤:都市づくりするときに取り入れるノウハウが札幌と北見では違ったと?
おもしろ地理:成り立ちまではっきりわかる資料がなく、おそらくそうだと思うんですが。
伊藤:だから統一してない……というか、現場からは別に統一しなきゃいけないってわけでもなかったのか。
おもしろ地理:実は、同じ札幌市内でも京都タイプの町割りになっているところもあり、例外がとにかく多いですね。
西村:おそらく、その場その場で実情に合わせて決めていった……という感じなんでしょうね。本来、日本の昔からの町割りの考え方としては、道路の向かいが同じ町内という京都タイプの町割りが多かったんですが、今は道路に境界を引く町割りの方が多いですよね。
石川:住所の付け方がどっかのタイミングで変わったということですか?
西村:そうです。昭和30年代〜40年代ごろに住居表示法という法律ができて、昔の古い表記の住所を新しい住居表示(今使っている住所)に変えましょうということになったんです。
おもしろ地理:そのとおりで、近年は住所の境界が道路基準に変わってきているというのはあると思います。昔は、道路が地域を分けるという考え方はあんまりなかったんですよ。それが、近年モータリゼーションが進んで道路の幅がどんどん広くなってくると、道路が地域を分けるようになっちゃったんですね。

