つくってかわいい・みてかわいい
この世には、サンリオキャラクターのフェルトマスコットの作り方が掲載された手芸本が存在する(うれしすぎ)。
とりあえず、表紙を見てほしい。
表紙だけでも心が躍る。手芸(好き)×サンリオ(好き)=最高。(※マスコット本に限らず、サンリオ公式は手芸本を大量に発行しています)
サンリオマスコット本の魅力は、『手芸本史 』と『サンリオキャラ史』の2軸で構成されている。
まずは、手芸本として見たときの良さから話したい。
レトロ手芸本の変遷を辿る
サンリオマスコット本は70年代頃~現在に至るまで定期的に発行されており、その歴史は長い。
サンリオマスコット本を読むと、この約50年で、世の中の手芸本が遂げた変化の一端を見ることができる。
特に大きな変化があったのは、この3つだろう。
①掲載作品数
②作成手順の説明
③手描き感
順に見ていこう。
①掲載作品数
端的に言うと、減った。2024年に発行された本の掲載作品数が約40点であるのに対して、1996年発行のものは140点もあった。89年発行に至っては、脅威の約250点である。(※89年発行の本は既刊の総集編なのだが、それを差し引いても多い。『フェルトマスコット本の総集編』ってのも、すごい。)
では、なぜこれほどまでに掲載作品数が減ったのだろうか。
理由は様々あるだろうが、作成手順の説明が大きく関係しているのは確かなはずだ。
②作成手順の説明
めっっっっっっちゃ親切になった。超優しい。
『まずはここを縦まつりして、ここは刺繍して、ここは接着剤で貼ってそのあと綿を入れて、巻きかがりして…』
こんな調子で、説明は年々丁寧さを増している。
そしてそのように説明にページ数を割いた結果、掲載作品数が減ったのではないか。多分。
一方、80年代のサンリオマスコット本に関しては、完成写真と図案のみが掲載されていて、手順はおろか、使用糸・使用布の指示さえもないケースがある。
たとえば、目は縫い付けてるのか貼ってるのか。胴体の部分は頭に挟み込むのか、後ろに縫い付けるのか…。もちろんそういうのは一切書いていない。
じゃあどうするかと言うと、完成写真を見て推理するのだ。テメーの頭で考えな、というわけである。
一応、作り方は図解がない代わりに、簡易的な文章の説明はあるのだが…(※図案はあります)
簡易的な文章というのは、
こういうのとか、
こういうのだ。
ちなみに、こちらのマロンクリーム、
作成手順の説明文は、こんな文言で締められている。
『考えてから作業にはいるようにしましょう』
もはや説明というか、心得。
しかし、この『考えてから作業にはいるようにしましょう』こそが、サンリオマスコット本をはじめとしたレトロ手芸本に通底する思想であるようにも思える。
③手書き感
見てください、これを。
手書きすぎる。最高。最高。これが昔の手芸本の最も激アツな部分だ。
指示の文字の手書き率が高いのはもちろん、図案もあからさまに手描きだったりする。線と線が重なった部分が太くなったり、インクが少し滲んでいたりすることも。
ミリペンとかで描いたんだろうか。なんたる、なんたる味わい深さ。愛さずにはいられない。
現在発行されているサンリオフェルトマスコット本の手順説明や図案に、このような手描き感はない。
そりゃそうだ。どう考えたって、そっちの方が正確で見やすい。手間数的にも、手描きにする理由なんてないのだろう。
そう思いながらも、一つ一つ形の違う『はりつける』の文字を眺めては、うっとりしてしまう。
増えるキャラ・減る掲載枠
サンリオマスコット本を見ると、サンリオキャラ史…と言うと大げさかもしれないが、年代別の推されキャラがなんとなくわかる。
例えば、2024年に発行されたサンリオマスコット本。一番最初に掲載されているのは、ピンクのロリータ風キティちゃんだ。
そして、80年に発行された本。巻頭に抜擢された作品は、
『ザ・ビルボードデュオ』である。かわいい。
しかし2024年の本には、ザ・ビルボードデュオの姿はない。
今も尚、サンリオキャラクターは増える一方だ。しかし、先述した通り掲載作品の枠はどんどん減っている。
現在、マイメロディのライバル『クロミちゃん』や、白い子犬の『シナモロール』が人気を博す裏で、子ブタの三兄弟『ブーギーウー』や、スポーツ少年集団『ギミーファイブ』は、マスコット本の紙面から静かに姿を消した。
かわいいだけではのうのうと居座れない。だって、みんなかわいいから。
この席取り合戦、かなりシビアである。