出会いは偶然に
ファイアサラマンダーに出会ったのは、まったくの幸運によるものだった。半日ほど暇な時間ができたので、小雨が降っているにも関わらず散歩に出たときのことである。
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こうなるともう、頭の中はお祭り騒ぎである。
ついさっきまで雨の中を傘も持たずに出かけてきたことを後悔していたのに、そんなじめじめした気分は一瞬にして全部ふっとんでしまった。
ザルツブルクの街中にポツンと残されたこの小さな丘にいるファイアサラマンダーは100匹だろうか?1000匹だろうか?たいした数ではないはずだ。今日はじめてここを通る私が偶然見つけるなんて。神が、はるばる日本からヨーロッパまでやってきて雨の中をうろついている私を不憫に思って遣わしてくださったとしか思えない。神様ありがとう。ファイアサラマンダーもありがとう。
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まだまだ寒いというのに、ファイアサラマンダーは意外にも活発に動いていた。湿った場所を好むイモリの仲間だから、雨が降ったのがうれしくてつい出てきてしまったのかもしれない。であればこちらとしても雨の中わざわざ出かけてきた甲斐があったというものだ。
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はいつくばって夢中で撮影していると、散歩中の地元民が「なんだ、こいつ?」という感じで見てきたが、私の手元の覗き込んで
「オー、フォイアーザラマンダー!」
と言ってさっさと去って行った。ちなみに、彼女も傘をさしておらず私と同様ずぶぬれだった。
ヨーロッパでは少々の雨であれば傘をささずにすませてしまう人が多いのだが、想定よりも激しく降り始めたので焦っているさまが見て取れた。
「わかる、さっきまで僕もそう思ってたよ。でも、ずぶぬれで散歩してるといいこともあるよ」
私は内心でそう語りかけながら、ファイアサラマンダー、ドイツ語でフォイアーザラマンダー(Feuersalamandar)の観察に戻った。
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枯れ葉をかき分けて去って行くファイアサラマンダーを見送ってスマホの時計を見ると、なんと15分以上たっていた。ともあれ大満足で丘を下りたのだった。
ところで、私が参加した剥製コンテストの会場の横では野生動物保護の取り組みについてのポスターが展示されていた。そこに、なんとファイアサラマンダーも紹介されていたのである。
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わたしが今住んでいる京都のアパートは庭に小さな池があり、そこにはかつての住人が放流したと思われるアカハライモリたちがいる。
人畜無害そうなこいつらだが、一つ問題がある。雨に乗じてよく池から逃げ出すのだ。とくに梅雨の季節はひどい。そのままにしておくと車道に出て轢かれたり、新天地と思い込んで下水にダイブしたりするので、夏の間は頻繁に見回りをしてそういう血気盛んな冒険者たちを池に戻すようにしている。「イモリ戻し」と命名したこの行為が、うちの夏の風物詩なのである。
そんなわけだから、ファイアサラマンダーの保護に取り組む人たちのことも他人事とは思われなかった。こちらの気持ちなど知らずに隙あらば脱走しようとするイモリの天真爛漫なふるまいに腹が立つこともあろうが、ぐっとこらえて頑張ってほしいものだ。